第44話 勇者パーティ結成
俺は一ヶ月ほど時間をかけて王都へと戻った。
俺が不在の間に何かあったとかそういうこともなかった。
まずは休憩ということで拠点である家に向かう。
なんじゃこりゃ。
あの鬱蒼とした屋敷が周りの家から浮くぐらい綺麗になっている。
むしろこれ目立つよ。
「あ、おかえりなさいませ、ご主人様」
メイちゃんが声を掛けてくる。
まるで人間のように存在する彼女を精霊だと思うものはいないだろう。
「ただいま、随分綺麗になってるね、ありがとう」
「もったいないお言葉です」
いや本心で思うよ。
伸びすぎた草とかどうしたんだろうかね、あの不思議な力でどうにかしたんだろうな。
家の中に入ると、埃ひとつないようなピカピカに磨かれた床やテーブル、装飾品が並んでいた。
こんないいところに住んじゃっていいのだろうか。
貧乏性な俺は少し居心地の悪さを感じてしまった。
とりあえず家の確認は出来たので、その場を後にして冒険者ギルド本部へと向かった。
受付の女の人に話しかける。
「すまない、魔族を討伐した」
「ま、魔族ですか!? てヴァンピさん! 何所行ってたんですか! 急にいなくなるんで皆さん心配していましたよ」
「なに、少しな、悪の気配を感じたまで」
そういってバックから三本角の魔族の首を取り出す。
「―――これは、大物ですね。少しお待ちください」
そういうと彼女は裏手の部屋に入っていった。
俺が少し待っていると、部屋から白髪のでかいおっさんが出てきた。
この世界のおっさん共皆強そうなんだよな。
男はギルドマスターを名乗り、俺にSランクへの昇格を打診してきた。
俺は受けない理由はないのでそれを承諾し、しち面倒くさい契約書をが流し見して、晴れてSランクとなった。
なんかこうすごーいみたいな感じじゃないの?
若干空気が重苦しいんですけど、なんか違う感じ?
「Sランクになったのなら、魔王討伐へと赴くのだな。しばらく王都で英気を養うといい」
ん?
初耳なんだけど。
どうやらSランクになると強制じゃないけど、実質強制みたいな感じで魔王討伐、引いては世界平和のために戦う必要になるらしい。
あ、これ契約書ちゃんと読まなかったのが悪いパターンだ。
俺は貰った契約書を確認し、その旨が書かれてていることを確認する。
まままま、単身で行けなんていきなりいうわけないし、しばらく王都で様子を見よう。
そうしようそうしよう。
俺は周りへのあいさつもそこそこに家へと帰った。
「シルバー、ハクーどうしよう、魔王討伐しなくちゃいけなくなった」
「主ならできますよ」
「私も戦う」
シュッシュとファイティングポーズを取るハク、シルバーお前は他人事見たく……お前も戦うんだぞ!
はあどうしよう。
なんかこうもっと酒池肉林を楽しめるかと思ったのに、思った以上の重責を負う羽目になってしまった。
俺はどうしようもないので、しばらく体を癒すという名目で王都で休息を取っていた。
そんなある日、冒険者ギルドから連絡があった。
詳細はついてからという嫌な予感がする連絡だったので無視したかったが。
渋々冒険者ギルド本部へいくと、奥の応接室へと案内させられる。
そしてそこに座る面子に俺は驚いた。
げえ、勇者じゃん。
聖女もいるし。
「おおヴァンピ来たか、まあとりあえず座れ」
俺は奥の偉そうな席に座るギルドマスターに言われ、テーブルを挟んで対面にいる勇者と聖者の反対側に座った。
「知ってるかもしれないが、こちら勇者のユウト、聖女のセイリンだ。今回は旅に出ていた仲間が負傷し、今後の旅に同行出来なくなったということで新たな仲間を募集しているそうだ」
「それで……?」
「まあ、お前さんにその旅に同行してもらおうと思ってな、ちょうどSランクになったばかりだろう?」
こんな都合のいい展開があるか!
ていうか勇者達俺のこと気付いてないっぽい?
あんだけ近くで話しただろう!!
いやバレてても困るんだけど。
「こんにちはヴァンピさん、勇者をやっていますユウトです。こちらは聖女のセイリンです。どうでしょうか、僕達としても三本角の魔族を倒したヴァンピさんの力を借りたいと思うのですが」
いやこれ実質強制だろ。
ここで断ってどうするんだよ。
ていうか魔王倒すのにちょうどいいだろむしろ。
そうだよ、これは俺に魔王を倒せという運命だ。
ヴァンピが成しえなかった偉業を俺が達成するんだ。
「その話、謹んでお受けしよう。微力ながら手伝おうではないか」
「ありがとうございます!」
「感謝いたします」
ユウトとセイリンが俺に頭を下げる。
いや逆だから、俺が下げる立場だからね。
なんかふんぞり返ってるけど、いいのかなこれ。
ちらりとギルドマスターの方を見るけど特に問題なさそうだった。
勇者って実はそんなに強くない?
「我にはテイムした魔物と、仲間である獣人がいるが、そちらも参加していいかな?」
「そうですね、ヴァンピさんの仲間でしたら問題ないと思います。後はこちらの技量を見てもらいたいので、手合わせをお願いしてもいいですか?」
「構わん」
勇者と手合わせねえ。
いい機会だな、聖女がどれだけ戦えるかは分からないけど、勇者よりは弱いだろうし。
聖魔法さえなければどうということもないだろう。
そう思っていました。
手合わせをしようという前に、まず私からと、勇者と聖女の模擬戦が何故か始まった。
ロッドを片手にした聖女と剣を持った勇者、護身術くらいなのかな?と思ったが、逆だった。
勇者押されてますが、ていうか聖女強すぎるんだけど。
相変わらず相手の強さはわからないけど、勇者が弱いんじゃない、聖女が強いんだこれ。
二人の模擬戦が終わって、とりあえずハクと勇者を戦わせてみた。
二人の試合は白熱し、引き分けといった感じで終わった。
ということは聖女はハクより強い……?
俺は聖女との模擬戦に挑むことにした。
模造剣を取り、ロッドを構えた聖女と相対す。
っ! 強い。
ポンコツな俺でも分かる。
これ勇者が主役じゃなくて聖女がヒーローだ。
まあそれでも俺も一応最強の吸血鬼、そこそこ危なげなく聖女との模擬戦は終わった。
「セイリンは強すぎるよ、僕が守らないといけないのに、逆になっちゃうよ」
「いえ、聖魔法を打つには時間が必要です、その間隙が出来てしまいますし、ユウトさんは必要ですよ」
「僕は壁かよ」
「まあ、そうとも言うかもしれませんね」
「そ、それにしてもハクちゃんも強いね、これなら安心して俺も戦えるよ」
「そう……」
あれ?ハク人見知りかな?
奴隷だったしむしろ俺に懐いているだけだったのかな。
シルバー達は魔物ということで、戦いには参加しなかった。
最悪、伝令係として使えるし、戦闘力はハクに引けを取らないと言っておいた。
ハクはそもそも強すぎる。
よくこれで奴隷やってたな、勇者やれるよお前。
こうして四人と一匹のパーティが結成された。
ホワイトウルフ達はお留守番となった。
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