第37話 新たなる眷属
ハクを連れて人里には出れないので、しばらく山籠りをしていた。
その間に、近くにいる盗賊や山賊を狩ったりして治安の向上にも努めた。
殺してないよ、ボコボコにして縄で縛って街道に放り出して置いただけ。
さすが帝国と言ったところか、あまり野盗の類は多くなかった。
俺いらなくね?
まあ少しでも良くなるならいたほうがいいだろ。
人間相手に、まして野盗程度に負けるヴァンピじゃないぜ!
俺は自分の力を確かめながら蔓延る悪を切り刻んでいった。
その中で気づいたことがある。
力少しだけど戻って来てない?
いや殺してないから存在力的な力は溜まってないと思うけど、魔物も一応狩ってるからなあ、そのせいか?
魔物の対処は大体シルバー達に任せている。
俺はハクのお守り。
危ないじゃん?
俺も未知の敵と戦いたくないじゃん?
シルバー達も強くなっていいじゃん?
ならオッケーだよ。
それにちゃんと守ってるからね、漏れた魔物はちゃんと倒している。
野盗は少ないけど、魔物は多いよね、特にゴブリン。
ほんとどこにでも湧くよこいつら。
一番エンカウントしてると言っても過言ではない。
ゴキブリでももうちょっと隠れるぞ。
そうやって周りの安全を確保しながらハクの様子を見守っていた。
そしてちょうど多分一ヶ月たったのかな?
正確には数えてないから分からないけど、夜にハクが苦しみだした。
前回と何が同じだ?
俺は空を見上げた。
月か!
満月になるとハクは変身する。
でも
変身するってことは混血か何かかな?
突然変異かもしれない。
とにかくハクが暴れだす前に首を絞め気絶させる。
うーん条件は分かったけど、これどうしようか。
俺はうんうんと考えたが、結局一つの結論にしか辿り着かなかった。
翌朝、目を覚ましたハクに俺は告げる。
「我は吸血鬼、ヴァンピール・ド・ヴェルジーである。訳あって人間の姿をしているが、本物の吸血鬼だ」
「……それで?」
あれ? 驚かない。
基礎的な教養もないのかな?
吸血鬼って言ったら人間の敵で恐ろしい存在ってことになってるはずだけど。
まあ嫌じゃないならいいや。
話を続けよう。
「お主のその変化、恐らく
略して眷属にしちゃって、パワーアップしてコントロールしよう作戦だ。
全然略してない。
彼女は強大過ぎる力に振り回され、その姿を制御できずにいる。
眷属となることで、その力を自由に操れるように出来る。
と、思う。
もし失敗しても最悪満月の夜だけ拘束しておけばいい。
眷属なら言うことも聞くだろうし、聞くよね?
それにヴァンピという支配の力の方が、強いと思う。
全部推測の域を出ないけど、このまま放置しておくよりはいいと思った。
でも彼女はこれでいいのかな?
俺は何が正解か自信を持てずにいた。
「……眷属になれば、一緒にいれる?」
「ああ、我が死ぬまで傍にいようではないか」
「なら、なる。眷属に」
いいのかな?
俺間違ってない?
流れに身を任せてるけど不安になってきた。
ええい、俺は正義の吸血鬼!
そして行き当たりばったりに生きてきたヴァンピでもある。
己の心を信じて眷属の儀式を行う。
手に付けた傷から滴り落ちる血をハクが舐めとる。
ハクの体が少し発光すると、白い髪にメッシュのように赤いラインが入る。
オッドアイとお揃いになった髪は、朝日を受けて輝いていた。
「これが、私」
「そうだね、これで君も俺の眷属だ。これからよろしくねハク」
「はい、ご主人様」
うーん、結局ご主人様をつける格好になってしまった。
奴隷から眷属って地位あがってるのかな?
ヴァンピの眷属だしいいだろ、多分。
俺はそれまでしていた山籠りを中止し、大きな街を探して帝都に向かうことにした。
街道から少しそれた道をシルバ―の背に乗って走る。
いきなり街道に魔物がいたらびっくりされちゃうからね。
一応テイムした証つけてるけど、帝国でどれだけ安全かは分からないしね。
なんにでも安全に、あれ?過去の発言と矛盾してる?
そういうこともあるかもね、なんたって俺はいきあたりばったり、流れに身を任せているから。
数日ほど走っていくと、そこそこ高い壁、うーん十階建てのビルくらいの高さの城壁に囲まれた街が見えてきた。
ここまでいくと都市か?
前にオークを殴殺した時の街に比べれば大きいし、王都に比べれば全然小さい。
でもここなら一通り色々揃っていそうなので、門番の前を冒険者カードを示して都市へと入っていく。
門番には一瞬嫌な顔をされたが、一応冒険者カードの威力があったのか、それともAランクだからかな? どちらにしてもあまり冒険者として活動するのには期待しないほうがよさそうだ。
俺は適当な衣服屋に入り、ハクの服を何着か購入する。
お金には困っていない、配信のおかげか、定期的にお金が入ってくる。サブスクかな?投げ銭だと俺が配信していないときに増えるのが謎だ。
不定期に増えるからサブスクも月末にまとめてとかじゃないかもしれない。
まああっちの俺がどうなっているかは分からないけど、配信は続いてるってことはサイトの登録は外れていないんだろう。
死んだのかな……。
思えば親不孝な息子だったよ。
大学にもいかず引きこもって、Vtuberで食っていくなんて宣言して実家に寄生しないと生きていけないんだもんな。
まあもう終わったものはいいんだよ。
俺は自分の服も何着か買って店を出た。
外に出るとシルバー達が子供に纏わりつかれ困っている。
追い払うにも傷がつきそうで、動けなくなっているようだ。
俺は子供たちをしっしとはらうと、シルバー達も泊まれる大きな宿舎のある宿を探した。
……足元みてんんじゃねえかっていうくらい高い宿しかなかった。
帝国民はお金持ちなんですねー!
んなわけあるか!
クソっ、余計な出費はいくらお金が合っても足りん。
これも定期収入があるからどうにかなっているが、このままこういう生活を続けていくのは難しい。
どうするかな、冒険者として働く?
論外だ、何のために王都を離れて帝国にまで来たと思っている。
却下だ却下。
何か役に立ちそうな記憶はないのか?
俺はヴァンピの記憶からお金に関する情報を探す。
出ろ出ろ出ろ!!
……出なかった。
しょうがない、明日情報通でも探して話を聞いてみよう。
俺は減り始めた所持金を不安に思いながら眠りについた。
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