第34話 我、見届ける
我はいつも通り定期配信を行っている。
ベロラントのランクはシルバーで停滞中だ。
我が元居た世界で活躍してる姿が配信されていることを知ってから、我は自分の異世界配信の切り抜き動画を見ることにした。
切り抜き動画とは、配信のいいところを切り取った動画である。
残念なことに配信サイトの録画に突発配信の動画は残っていないので、冒頭が見えれなかったり、全部は追えていないが、概ね問題なく過ごしているようだ。
ただ、少し目立ちすぎてはないか?
我はあくまで日影の存在。
表に出ていいものではないと思っていた。
しかしどうやら
そちらがその気なら我にも考えがある。
こちらも好きにやらせて貰おう。
まずはこのなよなよした性格、うじうじとして湿ったいことよ。
配信中はあんなに元気だというのに、下界ではまるで借りてきた猫のようになっておる。
空を飛ぶことも出来ないし、夜な夜な悪を狩るようなことは出来ないが、何か以前なら出来なかったことをしてやりたい。
反抗心か?
やられたらやり返す、それは当然のことだ。
そんな我にできること、それは配信だけだった。
他に出来ることってなんだ!
こやつの肉体で出来ることなどたかが知れている。
ぐぬぬ、不公平ではないか?
あちらは我の肉体を与えられその力を存分に振るっているというのに、我は女性一人すら守ることしか出来なかった。
仕方あるまい、我はこの仮初の姿でベロラントで上を目指してやる。
そしてゆくゆくは大人気Vtuberとなって世界を虜にして見せる!!
そんな簡単にはいかなかった。
我の配信の人数はそこまで増えていない。
いや正確には最初に来る人数は増えている。
それが千人から数千人、五千人と。
そこから減って最終的に残る人数は増えてはいるが、その下落率は日に日に増えている。
仕方なかろう。我は強い。
かっこいいからな。
しかしベロラントで活躍する我もまたかっこいいと思ってほしい。
初回に人が集まっているというぜいたくな悩みを抱えながら配信は続いていった。
よくあるのだが、我が知らない間に配信されていて、その内容について言及されることがある。
それに答えることが出来ずに、その質問や声を無視してしまう。
何をやっているのだ、
そう思って、切り抜き動画を毎回探しておる。
今回はなんだ……少年との決闘……?
なにをやっておるのだ。
我の手にかかればそんなこと造作もなかろう。
しかし弱いものいじめとは。
それでは反感も買うのも仕方がない。
世界は我より弱いもので溢れている。
それが悪なら問題ないが、無害なものを圧倒する姿など見せてもよくならんだろう。
それが分かっていないのだろう。
無理もない。
やつに我の代わりは出来ん。
我がやつの代わりを果たせていないのと同じようにな。
後日の配信でコメントが溢れかえったときがあった。
[ヴァンピ生きてる!]
[最後の演出死んだかと思った]
[第一部完! 次回のヴァンピにご期待ください]
[草]
[今日もベロラントだね]
今度は何をしたのだ……
はあ、こちらだけこの状況を知っているのは疲れる。
あやつは気付いていないのか?
気付いていたとして何もできないのだがな。
せめてこうなった原因を調べるくらいしていて欲しいものだ。
もしかしたら配信をしていないところでしているかもしれん。
写っていることがすべてではない。
我だって鍛えているしな。
その日は配信を終え、切り抜き動画を探すことにした。
なんだこいつは。
悪魔……?
こんなもの我が世界にはいなかったはずだ。
どこからか召喚されたか?
王都に攻撃を仕掛けているあたり、魔王の手下が召喚したのであろう。
あ、我が押されている。
太陽の光を浴びすぎだ、それでは弱体化も免れまい。
ここは真の姿―――になったな。
なってしまったか。
いや致し方あるまい。
そうでもしないと勝てない相手であったのだろう。
最後は光に包まれて終わってしまったが、無事であろうな。
まあ代償を払って顕現したのだ。
生きているなら人間として、しばらく大人しくしているといい。
いずれもとに戻る。
いずれ、な。
我は王都を救ったことに安堵し、そしてこれからの
生きるのだ、
我が使命を果たすときまで。
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