第23話 ワイバーン殲滅(配信あり)

 前回のあらずじ

 ワイバーン討伐に出かけた俺、余裕だったけど油断して崖下に落とされちゃった。

 しかも配信も開始だって。

 これはもう吸血鬼ヴァンピとして活躍するしかないじゃん!?

 いくぜ!


[ワイバーン!?]

[ファンタジー生物じゃん]

[モンハンか?]

[モンスター討伐系は見ててすっきりするからいいね]

[無双ゲーム多いね]


「今回は人間達との共闘になるはずだ、民の平和を乱す不逞之輩ふていのやからをこの世から消し去って見せよう」


[ヴァンピさんまじかっけー]

[不逞之輩ふていのやからで草]

[恐竜に人権はありますか?]


 かっこいだろおう!?

 恐竜に人権?

 あるわけねーだろ。

 人権ってのは人にしかない権利だから人権なんだよ

 恐権ってか?

 ワイバーンはそもそも恐竜じゃねえ魔物だ。

 魔物は基本倒すんだよ!


 俺は崖下をすい~と迂回して移動し、オークを殴殺したときの様にワイバーン達の後ろを取る。

 相手も浮いているので見下ろす形にはならなかったがその存在は誰も気づいていない。

 俺は冒険者を含めたすべてに聞こえるように大きめの声で叫ぶ。


「なにやら我の睡眠を邪魔する輩がここらにたむろしていると聞いてな、害虫駆除に我がわざわざ赴いたぞ」


 ワイバーンに人語は理解出来ない。

 なのでいきなり宙に現れた俺に驚き、攻撃を仕掛けてくる。

 話を聞け話を。

 聞いてもその後殺すんだけど。

 もうちょっと語らせてよ。


「いいだろう、かかってくるがよい、獣よ」


 尖がった口から覗く鋭い歯で思いっきり噛みつこうとしてくるやつや、前足のよく切れそうな爪でひっかっこうとしてくるやつを地面へと叩きつける。

 宙に浮いているやつらは全員地に伏せろ!!


 それ!

 バシンバシン!!


[ワイバーン虫で草]

[ちょっと強すぎないっすか]

[これに勝てる生物おる?]


 害虫駆除っていっただろ!

 強いだろう?

 なんたって最強の吸血鬼だからね。

 俺は十数体いたワイバーンを一匹残らず叩き落とした。

 ハエ叩きのようにね。


 突然の俺の登場に若干混乱していた人間達だったが、俺の手によってワイバーンが落とされると、それどころではないとワイバーンへの攻撃を再開する。

 うんうん、ここで俺と敵対しても意味ないからね。

 それよりも目の前に弱った獲物がいればそちらを優先するよね。


 俺が叩きつけたワイバーンの大半が瀕死の重傷を負っており、討伐はスムーズに進んだ。

 あ、エルフエッフェルフィン、状況が有利になったから剣もって参戦してやがる!

 あいつ~、絶対報告してやるからな。

 少年カイルス試験官ビヨーンも攻撃に参加し、二十体近くいたワイバーンはすべて倒されてしまった。


[これ人間達必要だった?]

[共闘の意味理解してないだろ]

[草]


 必要なの!

 人間と調和を取るのが目的の一つなんだから。

 共同作業を取るって言うのはその証なんだぞ。


 どう?今回は俺の好感度あがったんじゃない?

 だって君達と一緒にワイバーンを倒したんだよ?

 これはもう味方と言っても過言ではないよね。

 俺は楽観的な気分で地面へと降り立った。


「……なんのつもりだ、吸血鬼よ」


 リーダーの男が剣を構えながら、俺に問いかける。

 周りの人間達も警戒を緩めていない。

 まあまあ、そりゃね、いきなり吸血鬼が来て人間の味方をするなんてあり得ないもんな。

 どんな気紛れで来たのか気になるよな。


「だから言ったであろう?我が眠りを妨げる虫を潰しに来たと。よもやお前らはその虫足りえるのか?」

「事の次第によってはそうなるかもな」


 ふむ、俺を前にしても怯まない。

 なかなかの胆力を持っているな。

 でも今回はそういった態度は辞めて欲しい。

 俺がどうしたものかと悩んでいると、相手の後ろから何かが飛んできた。


「っ!!」


 うわ、急に魔法が飛んでくる。

 あれ聖魔法じゃん!!

 使えるやついるのかよ!

 弱点攻撃は禁止だぞ!


 あぶねー、どんだけダメージ食らうか分からないけど、直撃したら無傷とはいかないだろ。


[ヴァンピ焦ってて草]

[草]

[草]

[草]


 笑ってんじゃねえよ!

 目の前に草草流れるんじゃねえ!

 画面が地味に邪魔なんだよ!


 あ、またなんか力貯めてる。

 あれは……太陽か?

 聖魔法によって作られた太陽の光が俺を襲う。


 うーん熱い。

 そもそも昼間なのに普通に登場している俺にそんなの効くわけないじゃん。


 あれ、でも体が少し重い。

 日光に弱い(ただし体が少しだるくなる程度)の重いバージョンか?


 まずいな、相手もやる気満々だし。

 ここは逃げよう。

 戦略的撤退だ。

 決して敗走ではない。


「どうやら日の巡りが悪いようだ、今日こんにちはこの程度にしておいてやろう。さらばだ」


[逃げてて草]

[チキンやんけ]

[魔法にビビってて草]

[敵前逃亡]


 なんとでも言うがいい。

 生きてるものが勝者なのだ。

 死んだら敗者、この世の真理だ。


「配信を1分後に終了します」


 デビアイちゃんが宣言する。


[人間相手だと弱気だね]

[少年はボコってたのに]

[何気にさっきあの少年いたよな]

[敗走してて草]


「我は負けてなどおらぬ。ただ少し、気が乗らなかっただけのこと。そもそもあの人間達と敵対などしてないのだからな」


「配信を停止しました」


 そうだよ。

 別に戦うのが目的じゃないならいいじゃん。

 逃げてもいいじゃん。

 でもやっぱり話し合うの難しいなあ。

 もっと正義の吸血鬼ってこと理解して欲しい。


 しかし視聴者の伸びえぐいな。


 今日は八千人か……

 俺の一年半ってなんだったんだろうか。


 二ヶ月くらいで爆伸びだよ。

 おかげでお金には困らないけど。

 金も入ったしな……

 ダンショウさんところでお金使うか。


 あとシルバー達をテイムしたことを報告しよう。

 俺はそのまま崖下まで戻り、人間に変装してから皆と合流した。


 実際に合流できたのは戦いを終えて山地を降りたところぐらい。

 なんか木がいい感じでクッションになってなんとか無傷で助かりましたよ!ってかんじでボロボロになった衣服に見えるように偽装するのも忘れない。

 傷もさっき聖魔法がかすったところを意地で再生しないように堪えている。


「無事でよかった、貴方が飛ばされたときはもうだめかと思いましたよ」


 試験官ビヨーン

 やはり貴方は優しい。

 そこでツンデレ発動している少年カイルスはいいとして。

 おい。

 エルフエッフェルフィン、お前何勝手に前線から逃げてるんだよ。

 きちんと報告させてもらうからな。

 覚悟しとけよ!


 こうして俺達は無事ワイバーンの討伐を完了した。

 これどうやって報告するんだろう。

 ワイバーンの群れは倒したけど、謎の吸血鬼が乱入してきたワイバーンを瀕死にさせましたよって報告するのかな?


 そこは吸血鬼様が見事我らの味方となり、共闘しました!

 そうやって報告してくれないかなあ。

 まあ無理か。

 聖魔法ぶっぱなしてきたし、敵対勢力が増えましたよって感じだろ。

 しゃーない。

 また夜な夜な悪を狩る日々に戻りますかね。



 俺もっと目立ちたい!

 でも難しい!

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