第2章—オネガイ—
置き配(編集中)
俺は、小ぶりなダンボール箱を2つ、抱えることにして。
「行って来まーす」
二人連なって、玄関ポーチに出る。
駅近くにあるアパートまでは、徒歩30分ほどの
姉は今日、大学で前期試験を受けているとのことで、留守にしており。合鍵を母から預かってきた。
閑静な住宅街を歩いていると。たまにすれ違う人が、こちらに珍しそうな視線を向ける。
車社会が発達した現代で。わざわざ大荷物を持ち運んでいるのは・・・きっと、俺らだけだろう。
軽い運動なら、体育の授業以外でも、生活の合間に取り入れているからか。こうした
(少しは、誰かの"力"になれるかな・・・)
いまは、午後の2時を過ぎた頃か。太陽が、容赦なく肌を照り付ける。
俺は、家を出るときに
これから夏休みだというのに、いつから夏の本番を迎えていたのだろう。
何を話すともなく、隣を歩き。そろそろ折り返しという所で、
「チカっ。休憩、しよっ」
知らぬ間に、息を切らしているではないか。
「そうだな・・・あ。そこまで、頑張れるか?」
両手を
道を
◆◆◆
「ふはーっ、生き返るぅ」
俺は立ったまま、ショルダーバッグに忍ばせていたスポーツタオルも手渡す。
「サンキュ」
続いて、自分の喉も潤す。
「用意周到だなんて、さすがチカ。涼しい顔してんのは、腹立つけど」
「いや十分暑いが?それに。暑さに慣れるには、適度に汗を流す必要があるらしいからな」
ひと息ついたのか、
その佇まいに、どこか大人びたような気がして—。
すると、何?というような表情で俺を見上げた。
「疲れてそうなわりには、そこまでバテてないよな。何かやってたりするのか」
「あー。ヨガをちょっと・・・でも、心を整えるとかだし」
「まじで?俺さ、筋トレ始めた時。とにかく回数を
感心して言ったのだが、
「あ、悪い」
「全然。そんなだから、チカって」
ザァっと一面に、生温い風が吹き抜け─紙袋が倒れた。ベンチの脚に立て掛けていたのだ。
「やば」
雑草の上に転がったぬいぐるみたちを拾い集める。どれもゲームセンターやカプセルトイの戦利品だ。
「見てこれ。ぶさかわ」
「何の生き物だよ」
「あ~。ニカちゃんってカートゥーン好きだったね」
「・・・英語のアニメのことか?」
「そんな感じ。なぁ、そっちも気になるんですけど」
一稀が指差すのは、両開きになっているダンボール箱だ。
しゃがみ込んで中を覗くと。こまごまとしたフィギュアやミニチュア雑貨が敷き詰められている。
姉の趣味については、一稀のが詳しいだろうと思っていると。唯一、親近感のあるアイテムを捉えた。
「これ・・・」
握り締めたのは、おもちゃの変身ステッキである。
先端には、王冠栓を模った装飾が施され。その中心に、アクリルストーンが嵌め込まれている。翠色から紫色へと混ざり合う模様は、独特な存在感を纏っており─。
手の平サイズとはいえ、よく再現されている。
「あー!昔、チカん家で観てたやつじゃん。えっと」
「マジカル☆ラビリンス」
すかさず、特撮ドラマのタイトルを挙げる。
「それ。なぜか幼稚園でウチらしか知らなくてさ」
「あぁ。周りは、何とかヒーローの持ち物使ってるから。用品店で探しても、見当たらなくて」
世代を超えた作品なのか。あるのは、録画していたビデオくらいだろう。
「へぇ。チカにも子どもらしいとこあったんだ」
「まぁな。幼心に影響を受けたからな・・・ってお前も一緒にいたろ」
「まぁね」
あの頃の面影が残る、いたずらな笑顔を見せた。
釣られて、当時真似ていた、懐かしい呪文を唱える。
「こう、Shoot the moon!つって」
瞬間、一段と強い陽射しに、視界を遮った。
瞼の裏にも眩さが伝わり。そのまま白い光に飲まれ─
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