第13話
僕の言葉を受け、ラミアに対して何かが起こるのではなく、この場の次元がゆっくりと歪み始める。
「……ッ!?」
「……っ」
僕とラミアが共に驚愕する中、自分たちの前に一つのホログラムが出現する。
白い髪に白い肌。
着ている衣服さえ白く、その何もかもが白い中で蒼く輝く美しい瞳。
どこか神秘的で、どこか人間離れした雰囲気を漂わせる彼女こそが僕の姉であり、今回の一件におけるすべての首謀者だ。
「……よく、気づいたね」
お姉ちゃんは僕を前にして一切表情を崩さず、少しばかりの驚きを声色に込めて口を開く。
「まぁ、ここまで来たら流石の僕でもわかるよ。お姉ちゃんが監視を怠るわけがないしね」
久しぶりに聞くお姉ちゃんの言葉に対して僕は肩をすくめながら言葉を返す。
「んで?何が目的だったの?」
「蓮夜もわかっていると思うけど、新エネルギーの確保のためだよ。一つの世界をまるっと壊して支配。決して消えることのなき魂からエネルギーを抽出する……エコでしょう?」
「……まぁ、エコだね」
僕はお姉ちゃんの言葉に頷く。
「まぁ、目的はもう良いよ……なんで、僕だったの?」
「え?蓮夜であれば一切動揺することなく世界まるごと一つ破滅に持っていけるくらい心無いでしょう?」
「……酷くね?」
自分の姉からの素直な評価に不満の声を漏らす……が、よく考えてみれば前世の僕って割りとそんなんだわ。
「それは良いとして……人は成長する生き物。かつてはなんとも思わなかったけど今は違う。その計画を凍結してほしい、って言う意思表示を僕はしてみるけどどうだかな?」
「ん。わかった。凍結する」
無理を承知での僕の言葉。
それに対してお姉ちゃんはいともあっさり頷き、計画を凍結させることを告げる。
「……え?良いの?」
僕はそんなお姉ちゃんの言葉に呆然と言葉を返す。
「うん。自分の弟である蓮夜のほうが大事。嫌ならやめる。別の方法考える」
「……えぇ?」
「……人類の敵は、去ったの?……わ、私たちの世界の命運は、こ、こんなにも……」
僕に持ち上げられているラミアなんかはあまりにも軽いお姉ちゃんのノリを前にこれ以上ないほど驚愕しているよ……というか、いつまで僕はラミアを持っているんだ。
サクッとラミアの傷を黒炎で治してから彼女を開放する。
「……あ、ありがとう」
「別に礼を言われることじゃないよ。元より僕側の問題だしね」
これで諸々の問題は終わったと言って良い。
イレギュラー的に湧いてきた世界を侵略しようとしてくる遥か高度な技術力を持つ世界からの侵略者の対応は終わった。これでラミアの疑問も尽きてくれたことだろう。
残る問題はもうあと一つだろう。
「はぁー、それじゃあ、次の質問。僕はこのままこの世界で生きていける?」
「……」
次なる僕の質問に対してお姉ちゃんはそっと視線をそらす。
「……そう、無理なんだね」
沈黙は何よりもの肯定。
たとえ、計画は凍結されようとも元々としてただの毒でしかない僕の魂の存在が変わるわけではない───結局のところ、僕にこの世界を生きる資格はどこまで行ってもないのである。
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