第12話
ただの握力だけで右腕を潰されたラミアは表情を歪ませながら後方へと一旦下がる。
「貴様ァ!自分が何をしているのかわかっているのか!?お前の存在はこの世界のシステムそのものにバグを発生させ、世界そのものを破壊することになる!それを、それをわかっているのかァッ!!!」
ラミアはヘラを守って彼女への交戦意思を見せる僕に対して鬼気迫った声をあげる。
「知るか」
そんなラミアの言葉に対して僕は乱雑な言葉を吐き捨てる。
「何が正しくて、僕がどうすればいいかなんてもうわかるかよ。いや、嘘だ。もうわかっているし、どう考えても僕が死ねば解決す話だ……だが、このまま自分の婚約者を見殺しにしていいわけねぇだろうがァッ!」
再び僕は黒炎を展開して自分たちを囲んでラミアの退路を防ぐ。
「来いよ、三下。格の違いを見せてやる」
戦う覚悟を決めた僕はラミアに対して傲慢不遜に言い放ち、闘志を漲らせる。
「……ッ、く、そがァァァァァアアアアアアアアアアア!!!」
ラミアはこれ以上ないほどに表情を歪ませて罵りの声を上げながらも僕へと立ち向かうべく地面を蹴る。
「……ッ!?」
ヘラを離して立ち上がった僕は自分の頭に向かって放たれるラミアの上段回し蹴りを何もせずにただ受け、そのすべての衝撃を一切動じることなく受け切ってみせる。
「燃えろ」
予め発動のための前準備を済ませていた僕はラミアの蹴りが当たると同時に黒炎を発動。
確実に当たるタイミングでラミアの足を燃やしにかかる。
「……ちぃ!!!」
既に利き腕である右腕は使えない。
そのあげくに全力の蹴りを防御もなしにそのまま受け切られてあげくに自分の利き足も黒炎に焼かれて今まさに溶けている。
絶体絶命。
勝ち筋などとうに消え去った状態の中でもラミアは諦めずに僕の心臓目掛けて左の手刀を繰り出してくる。
「無駄だよ、もう」
僕とラミアの実力は天と地ほどの差がある。
自分に向けられた左腕をはじき返してラミアの首を掴んだ僕はそのまま彼女を持ち上げる。
「……ぐっ、あっ……」
僕は自分の手の平の中で苦悶の声を上げるラミアの瞳をじっと見つめて彼女の奥の奥まで見通そうとする。
「……あぁ、見えたぞ」
僕というイレギュラーを潰すべく動く者の筆頭として挙げられるのは間違いなくラミアであり、一つの実験を監視する中で便利な子機は彼女を除いて他にいないだろう。
「ねぇ、見ているんでしょう?お姉ちゃん」
僕はラミアの瞳の奥の奥。
世界の壁すらも超越してこちらを見ている前世のお姉ちゃんに対して声をかけるのだった。
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