第10話
アルスが呆然としている間にもヘラが静かにラミアの方へと近づいていく。
「……一体どこから来たの?」
「良い女は手札の一つや二つ、隠しておくものよ」
常時アルスの位置を取得する魔法と何かアルスに命の危機が迫ったときに彼の元に転移出来る魔法をアルスへと仕込んでいる筆頭彼女候補であるヘラはラミアの言葉に対して余裕のある笑みで答える。
「……わかっているの?私と戦うという意味が」
「知ったことじゃないわ。私はアルスといれば十分……ふふっ、あんな悪ぶっているのにどこまでも根が優しいアルスと違って私は欲深くて醜悪なの。しっかりと私を殺しておくべきだったわね」
「はぁー。まぁ、良い。どうせここで殺せば良いだけの話ではあるしね」
堂々たるヘラの態度にため息をつくラミアは次の瞬間。
ヘラの背後に立って心臓に向かって手刀を放つ。
「そんなに甘くはないわよ?」
そんな手刀を容易く回避したヘラはいつの間にか握られていた氷の剣をラミアへと振るう。
「……ッ!?」
ヘラの攻撃をギリギリのところで回避したラミアへと彼女は容赦のない追撃を浴びせていく。
「ふんっ!」
そんなヘラに対してラミアは氷剣に向かって裏拳を一つ。
たった一発で武器を破壊した後、再びヘラが氷剣を展開するまでの短い時間を活用して後退する。
「……」
アルスのおまけとしか見ていなかったヘラの反撃に対して少しばかり冷や汗を垂らすラミアは無言のまま拳を構える。
「言っておくけど、私はそんなに弱くないよ?でも、貴方は思っていたよりも弱いみたいね。敵の強さを見誤っちゃって」
そんなラミアに対してヘラは厭味ったらしい笑みを浮かべながら元の形へと戻した氷剣を構える。
「……ちっ」
ヘラは私の作ったゲームでメインヒロインの一角として登場した存在。
決して惰弱な存在などではない。
氷魔法への強い適正を持ち、優れた自己回復機能に肉体強化を主とする異能『完全体』を駆使するヘラは最強キャランキングでも上位に食い込む存在だ。
「私を舐めていたこと、後悔させてあげる」
氷の剣を構えるヘラは誰よりも男らしく宣言するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます