第3話

「……原因不明の乱れは安定した。未だにヘラの体がは何かに蝕まれているけど……まだ、大丈夫。この程度なら後遺症も残らない。現在の進行速度なら猶予は後一か月程度。最低でも半年以内……」

 

 ヘラが倒れてから一週間。

 僕はなんとか医者ですら些事を投げたヘラの体調の変化に対するその場しのぎの延命治療を行える魔道具の開発を成功させていた。


「ローズの方は……っと。うん」


 僕は次にヘラの方からローズ嬢の方へと視線を移し、彼女の様態を確認する。

 ヘラが倒れてからおよそ三日後、ローズ嬢までもがヘラと同じ症状で倒れてしまっていた。


「大丈夫、まだ問題ないな」

 

 ヘラよりも早くに自分が開発した延命治療を受けさせたローズ嬢はヘラよりもその容態はまだ安定していた。


「……」

 

 二人の容態を確認し終えた僕は二人が寝ているベッドの間に置いているソファへと腰を掛ける。


「ふぅー」

 

 深々とため息を吐く僕は全身から力を抜く。


「……随分と寂しくなったものだね」

 

 基本的に僕が仲良かったのはヘラとローズ嬢の二人だけである。

 この二人が眠ってしまった以上、僕が今更学園の方に行っても特にやることがないため基本的に僕はこの病室で何も言わぬ二人と共に時間を過ごしていた。


『……アルス。私は常に君と共にあるよ』


「……うん。わかっているよ。サクラには感謝しているよ」 

 

 僕は自分の脳内で遠慮がちに声を上げる魔王の言葉に笑みと共に言葉を返す。


「今の僕にへこたれている暇なんてないしね。常に大忙しだ」

 

 原因不明の病によって倒れたヘラとローズ嬢の二人。

 そんな二人に残された猶予は決して多くなく、急ピッチで物事を進める必要があるだろう。

 今回の件についての情報を持っていそうな未来視の魔道具を持っている魔導の天廻の調査に世界各国の文献探しに少しでも可能がありそうな秘薬の捜索。

 僕は自分の使えるものは何でも使ってありとあらゆる一手を打ち続けていた。


「……疫病神にもほどがあるよね、ほんと」

 

 今思えば、僕の周りにいる人間は常に何らかしらの不幸にあって己の前を去っている。

 どうしようもないほどに疫病神体質な己に苦笑しながらも僕は二人を何とか回復させるため、頭を回し続けるのだった。

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