第24話

「……ッ」

 

 頭が痛い。

 昨日、明らかに酒を飲み過ぎた。

 

「……」

 

 今世では生まれながらに阿保ほど酒が強く、前世ではそもそも酒なんて一切飲んでいなかった僕は自身にとって初めてとなる二日酔いを前に、僕は生徒会室でぐったりと倒れていた。


「あぁ……」

 

 魔道具を使ってお水を手繰り寄せる僕は何とも情けない声を上げる。


「……何をしているのよ」


 そんな僕に対して同じく生徒会室にいたローズ嬢が呆れながら声を上げる。


「……黙れ。声を、あげるな」


 ローズ嬢の言葉に対して僕はどこまでも素っ気ない言葉で返す。


「もう……で?相手は誰なのかな?」

 

 だが、そんな対応にもめげないローズ嬢はハイライトの浮かばぬ視線を僕の方へと向ける。


「酒の匂いの奥にただ少し隣に座っていた程度には収まらない濃密な女の匂いが……ねぇ、どこまでしたの?」


「……それは単純にあれが臭いからだろ」

 

 暗部統領は誰も見ていない狭い世界で過ごしている関係で基本的に見た目は実にだらしない。

 お腹も引きこもりにしてはマシだが、ちゃんと段々になるくらいにはふっくらしているし、腋毛とかのムダ毛処理も甘い。

 そして、何よりお風呂だ。

 一週間に一回、ひどいときにはそれよりも入らない期間の続くこともある暗部統領はしっかりと匂いを放っている……まぁ、僕は彼女の匂い嫌いじゃないけど。


「く、臭い……?」


「風呂入っていないからあいつ。そのようなことどうでも良いのだ。とりあえず余は数分そっとしておけ。今、二日酔いを消す魔道具を作っている最中なのだ」


「……」

 

 ベットに座ったまま、他の魔道具を操作して新しい魔道具を作っている僕に対してじりじりと無言のままローズ嬢がにじり寄ってくる。


「……い、今なら、今なら、アルスくんを私だけのものに……ッ!」

 

 そして。

 何をとち狂ったのか。

 二日酔いでダウンしている僕に対して襲い掛かろうと動いたローズ嬢へと素早く蹴りを入れ、そのまま大きく吹き飛ばす。

 

「別に余が弱くなったわけではないぞ?」

 

 魔王の血肉を喰らい、その異能に身体能力も持っている僕が負けることなどそうない。

 たとえ、二日酔いというディスアドバンテージがあったとしても。


「ふぎゅ!?」 

 

 僕に蹴られたことで大きく空を舞い、そのまま生徒会室と廊下を隔てる扉へと当たって外へと押し出されていく。


「……貴方たちは何をしているの?」

 

 扉を押しのけて廊下を転がったローズ嬢に対し、今まさに生徒会室の扉を開けようと廊下に立っていたヘラが呆れたような声を上げるのだった。

 

 

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