第23話
「……」
「……」
既に僕の持ってきた酒瓶は半数と消え、多くのつまみが僕と暗部統領のお腹に収まってきた頃。
無駄にお酒の強い僕と暗部統領が揃った結果、話題が最初の十分ほどで尽き、あとはただひたすらに互いが無言で酒を飲むだけの時間が流れていた。
「……おい」
「ん?」
三十分ほどの無言を過ごした後、暗部統領が口を開く。
「……互いの素で話そうじゃないか。貴様、別にその口調が素ではなかろう?」
「大して余の事も知らずし」
「わかるぞ、私は」
僕の言葉を暗部統領はだいぶ食い気味で否定してくる。
「……何さ」
それを受けて僕は普段の恰好を崩す。
「急にどうしたの?普段のキャラじゃ言わないようなこと言って。僕に何が言いたいの?」
「……お、おぉう。なんか急に雰囲気が……」
「素を出せって言ったのそっちじゃない?」
「い、いや……ここまで変わるとは……生意気で傲慢なショタが普通に可愛いショタに……こ、こんな違ったんだ」
「全然わかってないじゃん」
素を見せた僕に対して困惑の表情を浮かべる暗部統領に半ばあきらめながら口を開く。
「い、いや……それはそのだな。そんなに変わっているお前が悪い。まぁ、そんなことは良いのだ。私がお前に聞きたいのはただ一つ。何かあったか?」
「……何が?」
僕は本気で心配している様子の暗部統領の言葉に眉を顰める。
「……何。私も貴様も今や立場が大きく違う。昔のようにこの広い世界で大掛かりなお遊びはしなくなったし、貴様が不用意に王族へと喧嘩を売ったせいで私たちの距離も離れたしな。貴様は侯爵家を継ぐものとして飛躍し……私も自分の子を作る必要もある年齢だ。既に大人になったと言える。そんな中で、どこか最近のお前は違う気がする」
「……えぇ?」
僕は暗部統領の言葉に対して本気で困惑の声を漏らす。
「どこか死に近い」
「全然遠いけど?」
この世界で僕よりも死に遠い人間もいない気がするけど。
権力も金も力もある僕を殺せる人間なんてめったにいないぞ?周りの死があっても僕の死だけはないと思う。
『……』
「そうか?私は生来持っている異能もあって勘は良い方なのだがな」
「普通に錆びついているでしょ。僕が死ぬようなことなんてめったにないよ?」
「……そうか、であれば良い。あぁ、でも覚えていてくれ」
「何を?」
「お前が死ぬことを望まぬ者もいる。少なくとも私はその一人だ」
「……何それ。ちょっと本気で酒を飲みすぎじゃない」
すっごい真面目腐った表情でクソ恥ずかしいことを宣う暗部統領に僕は思わず子呆れながら声を上げる……マジで急に何なの?一体僕から何の変化を感じ取ったの?本気で意味がわからないのだが。
実は信じられないほどに酔っているのか?こいつは
「う、うっさいッ!!!茶化すな!死ね!お前ももっと飲め!飲んで飲みまくって嵌めを外そう!ガキのようにはしゃぐことがあっても良いだろう!ほら、飲め!」
「ちょっ!?瓶ごと活かせようとするな!」
僕は飲め飲めと促し、口に酒瓶を突っ込もうとしてくる暗部統領を交わしながら僕たちは酒の席を楽しむのだった。
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