第25話

「……呆れてものも言えない。なんで酒に飲まれているのよ」


「……ぐぅの音も出ないな」

 

 二日酔いでダウンしていることを知ったヘラが告げた呆れ切ったような声を僕は甘んじて受け入れる。


「何かいるものはあるかしら?」


「今のところないな」


「そう。じゃあ、とりあえず一応バケツを置いておくから。吐くときはそこにだしなさい」


「……こんなところで吐かぬわ。余を何だと思っているのだ」


「女と夜通し酒を飲んでそのまま二日酔いになっちゃう子」


「……」

 

 僕はヘラの言葉にそっと視線を外す。


「……うぅ、痛い。お腹かがぁ」


「自業自得でしかないわね。人の婚約者に手を出さないでもらえるかしら?大人しく仕事してなさい」


「……我慢できなかった私がどう考えても悪いから大人しく仕事するわ」

 

 ヘラの言葉にローズ嬢は素直に頷き、生徒会長として課せられた自分の仕事をこなしていく。


「それじゃあ私は学生らしく勉強でもしているわ。ちょっと頼まれていたことがあるしね」

 

 僕が自分の二日酔いを治すための魔道具を作り、ローズ嬢が自身の仕事を行い、ヘラがクラスメートから頼まれたテスト対策用のプリント制作。

 三者三様に自分の作業に没頭していく中で自然と生徒会室内に静寂が訪れる。


「よし、出来た」

 

 そんな状態になってから約十五分。

 ようやく僕の二日酔いを治すための魔道具が完成する。


「ようやく出来たの?アルスにしては時間かかったわね」


「いや、一時間足らずで新しい魔道具を一つ作るとか正気の沙汰じゃないわよ?化け物よ?」


「余を凡夫と同じにするでないわ」

 

 二日酔いを治す魔道具を起動し、僕の中を支配していた気だるさと気持ち悪さ、頭痛を取り除く。

 

「……うむ。快調である」

 

 横たわらせていた自身の体を起こして立ち上がった僕は軽く体を動かして自身の体の調子に頷く。


「それなら良かったわ……うん。しっかりと顔色が良くなっているわ」


 僕の隣に立ち、表情を確認したヘラが安堵したように頷き、続く言葉を口にする。


「アルスも快調したことだし、私でもごっぷッ」


 そんな、ヘラの言葉が途中で詰まる。

 逆流してくる真っ赤な液体によって。


「……って、あれぇぇぇ……がふっ」


 目の前で血が破裂し、僕の頬を熱いものが流れる。


「……えっ?」

 

 その瞳から、鼻から、口から。

 その穴という穴から血を噴き出し始めたヘラはそのまま足をふらつかせ、ゆっくりと僕の前で地面へと倒れる。


「……がっふ」


 その生命力を著しく低下させながら。

 




 あとがき

 ほのぼの日常パート終わり、物語を進めていくよ



 

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