第13話

「貴方の異能である黒炎は圧倒的な力を持っている。でも、何の弱点がないわけじゃない」

 

 僕の前に立つラミリスは意気揚々と僕の前で自信満々に言葉を話し始める。


「何百、何千という魔法に囲まれて、その黒炎だけで対抗し続けられるかしら?」


「……」

 

 それに対して僕は無言を返す。

 ラミリスの言っていることは本当である。

 僕の黒炎は圧倒的な力を持っているが、長時間の使用と連続使用が出来ないという問題がある。

 囲まれた四方八方から常時魔法を喰らい続けたりすると黒炎で対処しきれずにそのままフルボッコにされるなんてことがざらにある。


「君は本当に脅威だ。それほどまでの異能を持ちながら決して慢心することなく己の体を鍛え、魔道具の数々を展開し続けているのだから。生半可なもので力押しを行っても何も出来ないだろう。本当に凄まじい……だからこそ、私としてもこのような手段に出るほかなかった」

 

「……ッ!」

 

 僕はラミリスの言葉の途中で地面を蹴り、一瞬にして背後を取って足を回してラミリスの頭を狙って蹴りを放つ。

 だがしかし、僕の蹴りが捉えたのはラミリスではなく培養液の中に浮かんでいたはずのキメラとなった少年だった。


「ふぅむ……」


 僕の蹴りを受けてただの血だまりとなった少年に対して眉一つ動かすことなく足を止め、首をかしげる。


「命のストック……いや、違う。何だろう、これは」


 僕はラミリスの使った魔法に首をかしげる。


「はっはっは!君のためだけの特別な魔法だよ!」

 

 ラミリスは杖を振るう。

 その瞬間、ここらにあったすべての培養液が音を立てて崩壊し、中にいたキメラとなった子供たちが大量に地面へと落ちる。


「……ッ」

 

 それを前に僕は何か嫌な予感を感じ、いの一番に自分から少し離れたところで魔導の天廻の戦闘員と激しい戦闘を繰り返していたヘラとローズ嬢に向かって結界魔法が込められた魔道具を投げる。


「ほぉら。その優しさが命取り」


「……ッ!?」

 

 僕の身がキメラとなった子供たちより伸びてくる何やら触手のような肉の塊が僕の体を拘束し、そのまま念力の締めあげてくる。


「……」

 

 すかさず僕は黒炎を展開し、再生出来るという事実ごと燃やし尽くしていくのだが、キメラとなった子供たちが伸ばしてくる肉の塊が多すぎてすべてを燃やしきれない。


「……ッ!めん、どうなァッ!!!」

 

『だ、大丈夫なの……?』


 心配そうな魔王様の言葉すらも無視して僕は体をよじらせ、黒炎を全力で噴出し、すべてを燃やし切ってしまう。


「チェック」


「……ぁ?」

 

 僕の黒炎は無限ではない。

 肉の塊を燃やし切るのに一度に使える最大量は使い切ってしまい、また、再度展開するには幾ばくかのラグが存在する。


「……ッ!!!」

 

 キメラとなった子供たちの体が光り輝き始め、数多の魔法が発動する。

 

「あぁ……そうか」

 

 ここに来てようやくキメラとなった子供たちの正体を悟る……これ、魔法を自動で発動させるための魔道具。

 それも高威力の魔法を、だ。

 

「……がっふ!?」

 

 黒炎で防ぐことの出来なかった僕はそのまま何も出来ずに魔法を喰らう。

 決して尽きることなき魔法の数々を前に今更黒炎を展開したところでさほど意味はない。

 一瞬だけ弾幕を消せるが、黒炎が消えたタイミングで再び魔法の弾幕が襲ってくるため、黒炎の処理速度を超えていた……にげ、るのも……結界が三つに、退路を断つための弾幕も、……こ、れはッ!!!


「……」

 

 足掻きの為に発動していた黒炎の操作を僕は手放し、今度こそ本当にただただ無抵抗で魔法を喰らい続ける。


「チェックメイト」

 

 無抵抗に数多の魔法に当てられ、体をゆっくりと倒す僕へとラミアが迫り来ていた。

 

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