第11話
敵アジトに侵入した僕たちを迎え入れたのは数多の魔導具に魔導の天廻特有の衣装を身にまとった戦闘員たちなのだが、今更これらが僕の敵となれるわけがない。
そこら辺の有象無象はすべて黒炎で焼き尽くし、広大なアジトの中を一切迷わずにお目当ての人がいる最深部に向かって進んでいく。
「……よく、来たわね」
その果てにたどり着いたの先にいたのはしかめっ面を浮かべたラミリスであった。
「……何、これ」
「……ッ……うぇぷ」
ラミリスのいるここ、魔導の天廻の最深部には培養液の入ったカプセルが大量に並んでいた。
人が入るには十分など程の大きさのあるカプセルの中には小さな子供たちが。
おそらくは攫ってきたのであろう子どもたちが多くの魔物や動物と強引に体を組み合わされ、醜悪で悍ましい生命を冒涜しているとしか思えない姿で培養液へと浸されていた。
「ハッ。未来視の天瞳を惑わす術ならばいくらでもある。それに頼り過ぎたな」
何とも惨たらしい姿で培養液に浸からされている子どもたちの姿を見て顔面蒼白となっているヘラとローズ嬢。
ローズ嬢に至っては吐きそうになっている中で僕は余裕の態度を崩さずにラミリスへと口を開く。
「……ッ。な、なんだ貴方がそれを……」
未来視の天瞳。
そこまではっきりと見えるわけではないが、それでも未来を視ることのできる破格の強さを持った魔導具であるが、抜け道はいくらである。
ゲームの知識を持っているということで慢心し足を掬われることとなった僕が今度は未来視が出来るということで慢心した魔導の天廻の足を掬ったのだ。
「余裕の態度は崩さないほうが良いぞ?ラミリスよ。格が劣って見えるぞ?」
「……生意気ね。本当に」
ラミリスがしかめっ面のままではあるが、それでも瞳に強い殺意を宿して僕の方へと視線を向けてくる。
「このタイミングは予想外。でも、その準備は殆ど終わっている。この場で殺してあげるわ」
ラミリスが手を上げると培養液の入ったカプセルの影に隠れていた魔導の天廻の戦闘員たちが姿を表す。
「アハハ」
そして、僕たちが来たばかりの道から姿を表した仮面もつけず、身にまとう服装も着崩してその白い肌を見せる少女からは別角の強さを感じ取れた。
「なるほど。お主がラミリスの妹というわけか」
背後から一転。
すぐ目の前へと一瞬で移動し、自分へと向けられたラミリスの妹による踵落としを己の腕で受け止めた僕はまっすぐに少女の瞳を見つめながら口を開く。
「そーだよぉ!お兄さんたちが探していたラミリスの妹、ラミアちゃんだよぉー。私に会えて嬉しい?」
「あぁ。もちろんだとも。君のような美しき者に会えて喜ばぬものなどいないとも」
僕はラミアの言葉に頷いた後に踵落としを受け止める己の腕にまとわせるようにして黒炎を発動させ、彼女を後ろへと後退させる。
「「……は?」」
「アハハ!ありがとぉ!じゃあ、死んで?」
僕から少し距離をとったところで拳を構える少女は無邪気な笑みを浮かべながら僕へと濃密な殺気をぶつけてくる。
「それはこちらのセリフである」
それに対して僕も殺意を返し、拳を構える。
「「……ッ」」
互いに武器を持たない僕たちは互いに地面を蹴り、激しく拳を交えるのだった。
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