第10話

 元よりラミリスが怪しいとはずっと睨んでいたのだ。

 王都の戸籍に関する情報も、幼少期の情報も一切なかった四名のうち、二人がラミリスとその妹であったのだ。

 これで疑わぬなと言う方が無理であろう。

 黒も黒、真っ黒だ。


「ほい、ここだね」


 女性をボコボコに叩きのめした後、いつの間にかいなくなっていた一番怪しいラミリスを追いかけるべく行動していた僕は裏路地の一角にあった小さな小屋の前に立ち止まる。


「な、なんでこんなところに……?」


「ここにラミリスが逃げてきたからだよ」

 

 ラミリスにはGPSもつけていたし、魔道具での監視も行っていた。

 彼女を僕が捕らえそこなうはずがない。しっかりとここにラミリスが逃げ込んだことを確認していた。


「えっ……?」


「よっと」

 

 僕は異能で小さな小屋を消し炭へと変え、何もなくなかったところに一つだけポツンと取り残された石づくりのテーブルへとここまで僕が引きずってきた女性の顔を近づける。


「ほら、生体認証だよ?」


『個体名:マルサ、本人と確認。アンロックします』


 石づくりのテーブルもとい、魔道具であるそれはまるでAIかのような声を上げた後、その隣の地面がゆっくりと動き出して一つの階段が姿を現す。


「な、何これ……」


「い、今の声は……?」


「ただの魔道具だとも」


 僕は驚愕するヘラとローズ嬢に対して簡潔に説明を述べる。


「これくらいであれば余でも作れる。気になるのであればあとで見せてやるとも。そんなことよりも今はこの先である」


「確かにそうよね。ごめんね?関係ないことに口を出して」


「そ、そうね……ねぇ、やっぱり、さ。ラミリスが敵なのかしら?」


「であるな……帰るか?」

 

 僕は恐る恐ると言った様子で尋ねてきたヘラの言葉に頷き、帰るかどうかの意思を問う。

 自分の友だちであったラミリスと戦うのは辛いであろうという僕の言葉だったのだが……。


「いや、帰らないわ。アルスに任せるわけにはいかないもの」

 

 それをヘラは力強い言葉で否定し、戦闘への強い意欲を見せる。


「ならばよい……ふんっ」

 

 ここまで覚悟をある態度を見せられては戦わないで良いよなどと言えるわけがない。

 僕はヘラの言葉に頷いた後、自分の手の中にあった気絶していた女性の頭を握りつぶして完全に息の根をたった後にそこら辺へと打ち捨てる。


「よし、それでは行こうとしようではないか。ラミリスから始まった一連の騒動もこれで終わりたるぞ。ささっと終わらせようではないか」

 

 身軽になった僕は意気揚々と階段を下り、そのあとをヘラとローズ嬢もついてくるのだった。

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