第6話
ラミリスからの依頼を受けた翌日。
僕たちは互いに集めた情報を持ち寄って再び生徒会室に集まっていた。
「まず私の方から行きましょうか……と、言ってもあまり大したことはわからなかったんだけど……私は汎用魔法を使ってラミリスちゃんと似ている魔力の流れを探したりしてみたんだけど、成果はあんまり。すべての痕跡が巧妙に隠されているみたいで、私の魔法が機能しなかったの。相手は想像以上に大きな相手かもしれないわ」
ローズ嬢もエリートの集まるここ、アリーシア学園において首席の成績を取る才女。
彼女の魔法であっても一切の探知が出来ないとなると、相手はかなりの存在となることが予想される。
それを告げるローズ嬢の顔にはしかめっ面が浮かんでいる。
「そう。残念ね。私の方でもラミリスと一緒に目撃証言を集めようとしたのだけど、一切の情報が集まらなくて断念したわ。こっちも成果なしね」
「……妹は、社交性溢れ、貧民街であっても太陽のように輝いていた子なのに……どうして、誰も目撃を……ッ」
続くヘラたちからの報告も芳しくはなかった。
「次は余であるが、それはまずこれが騎士団の方からもらった調査書なのだが、想像以上に根深い問題であった」
僕は机の上に騎士団からもらった多くの書類を広げる。
「一年単位の行方不明者の調査内容だ。多いときには一週間に一度、少ないときには一ヶ月に一度、子どもが行方不明になっている。これだけならまだ良いのだが、そのほとんどが調査した騎士団であっても一切の手がかりを掴めていないということだ」
僕が要求したのは一ヶ月分の調査内容だったのだが、調べたところ年単位にまたがる重要問題であることが判明し、騎士団長であるオルス自ら詳しい調査内容をまとめて僕の方に提出してくれていた。
「基本的に行方不明者は多かれ少なかれ何があったのかをほとんど把握出来る場合が多いのだが、これらの事件は一切の情報無し。ここまでの徹底具合となると、全て同一犯とみなして良いだろう」
「……むむっ、これは、本当にヤバくないかしら?」
調査内容について目を通すローズ嬢が冷や汗を垂らしながら率直な感想を漏らす。
「うむ。正直に言って余の想定以上の問題である。というより想定出来ない、のほうが強い。そもそもとして、裏に何がいるのかもわからん」
こんな誘拐事件などゲームにはなかったし、自分の調査でも何か手がかりになるようなものもない。
物資の流れすらも見えてこないのだ。
僕の調査網を抜けられる存在などあまり多くはないから、かなり敵組織の数も絞れてくると思うけど……帝国の間者、魔導の天廻、魔族あたりか?
『多分うちの魔族たちは動いて無いと思うわよ?魔族は強き魂に、私の魂に惹かれるの。既に私が君と共にある今、うちの子たちは動かないと思うわ』
『……むっ。そうなのか』
『えぇ、そうよ』
『情報提供感謝する』
『これくらいは当然よ……と、ということで私とアルスのべっどし』
となると、最も可能性があるのは二つ。
その他もちらほら可能性があるのもいる、が。
結局ほとんどわからず仕舞いだな。
「……難しいところね」
「いや、難しくはないだろう」
僕はヘラの言葉に対して首を振って否定する。
「状況はわからず、既にこちらは後手。解決するのであればおそらく力押しが一番確実だろう」
この世界は戦略ごとひっくり返すようなやつが平然と存在する世界なのだ。
幾重にも作られた罠を見破るよりも力押しで何とかするほうが良いことのほうが多いのだ。
こちら側に何の情報もない後手後手の状態だと、特に。
相手に更に多くの罠を作る時間を与えるのなら、途中の段階で真っ向勝負を仕掛けてまだ相手の罠が完成していないことを祈った方が遥かにいい。
「余たちが出来るのは最早力押しのみ。やることは明白……ただし、危険も多い。どうかね?君たちに覚悟はあるかね?」
「えぇ、ここで臆するような女ではないわ」
「どうせアルスは行くのでしょう?なら私も行くわ」
「わ、私が頼んだことですし、妹のことですから!」
「ふっ。良かろう……それでは頑張ろうとするか」
僕は三人の言葉に対して横柄に頷き、口を開くのだった。
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