第13話
自身の目論見通り僕は無事にサードクラスとして学園へと入学することが出来た。
入学式の日は仮病でサボって登校一日目。
「今日の授業はなんであったか?」
クラスに入ってきてから経った五分足らずで僕はクラスの頂点に立っていた。
まぁ、このクラスにいるのは位の低い貴族だったり
「今日はテキストなどの配布や自己紹介を行った後に午後、武道の授業を行ってから
自分の隣に立ち、メイドの代わりに雑用係を務めてくれているクラスメートの少女が僕の疑問に答えてくれる。
「うむ。そうか、ありがとう。あぁ、それと余に対して敬語を使う必要はない。楽にすると良い」
「い、いえ……そのようにするわけにはいきません」
「いや、断るべきでないぞ?女。余の名を呼び、ため口で話せるというその肩書きは得たるぞ?」
僕の言葉を断ろうとした少女に対してそうアドバイスする。
「余は諸君らにとって扱いにくかろう。だが、その分君たちには最大限の利益を授ける。親の派閥的に余へと近づきにくい者は敬語を使い、余に近づいてもよい者はため口を使うと良い。それと、ここの違いで誰かを虐めることはないようにな。クラスの仲は良い方が良い」
「……アルスってば、実は案外人が良い?」
僕の言葉に対して少女が恐る恐るといった感じでため口で言葉を振ってくる。
「ふっ。よくわかっているではないか。それでは余は喉が渇いた。水を取ってくると良い」
それに対して僕は冗談交じりの言葉を返す。
「……その次の言葉で色々と台無しよ。パシリにされているじゃない。私ってば」
「余に使われるのだ。光栄であろう?」
「どこまでも傲慢なんだね……はーい、お水取ってくるねー」
「うむ。任せたぞ……あぁ、そういえば名を聞いておらぬかったな。汝、名を何と言う?」
「ん?私はライトニア騎士爵の長女であるリリよ。将来は騎士になるつもりだから……その時はよろしくね?」
「良かろう。その名、覚えたぞ。将来、就職先がなければ余の元に来ると良い。登用してやろう」
「言ったからね!!!私、その言葉絶対に忘れないからァッ!それじゃあ水を持ってくるね!あなたのために!あなたのために動く私をお忘れなく!」
「余は今の今で忘れるほどの鳥頭ではない。はよう取りに行け」
「はーい」
僕の言葉を聞いて目を輝かせる少女、リリは意気揚々と教室の扉を開け、ぴたりと固まる。
「どうし……ッ」
それに対して疑問の声を上げながらリリの方へと視線を向けた僕も彼女と同じように表情を引き攣らせて固まる。
それは何故か。
理由は簡単である……扉のすぐ目の前に無表情のまま立ち尽くす二人が、ヘラとローズ嬢がいたからである。
「……ッ!!!アルスッ!!!」
どういう感情が浮かんでいたのかまるで見えなかったヘラは僕のことをその視界に映した瞬間、表情を一気に怒りへと変えて僕の方へと迫ってくる。
「どういうつもりなのッ!?こんなところに来るなんてッ!!!」
リリを押しのけて僕のところにまで迷いなく進んできたヘラは僕の席へと勢いよくい手を置き、声を荒げる。
「こんなところとはここにいるクラスメートたちに失礼ではないか?」
「あえて言うわ!こんなところ、よッ!別にここにいる優秀な人たちを非難するわけじゃないけど、人には生きる場所があるの!ここは貴方の生きる場所じゃないわ!」
「今更であるな。余は既に政界よりも経済界での方が顔が利く」
「そのイレギュラーを更に広げてどうするのよッ!」
「余は凡夫として生きるつもりなどない」
「侯爵家に生まれた身で凡夫になることなんてないわ!」
「だからこそ歴史に名を残したいであろう?ヘラとて百年前の侯爵家の当の名や行いなどパッと出てはこないであろう?侯爵家としての立場など長い歴史から見ればさしたる立場ではない」
僕は烈火のごとく迫ってくるヘラに対してのらりくらりと言葉を回して追及の手を跳ねのける。
「……ッ!わ、わ、わ、私は……ッ、貴方と……、がく、えんせいかつをぉ」
そんな僕に対するヘラの言葉は徐々に尻すぼみしていき、何を言っているのかわからなくなっていく。
「許せ」
そんなヘラに対して僕は一言。
「必要なことであるのだ。経済界で旋風を巻き起こしている余が今、貴族との繋がりを増やすわけにはいかないのだ。本格的に打たねばならない杭となってしまうのでな、余が。落ち着くまでにはまだ時間がかかる……あと一年はここのクラスで過ごす。それまでは寂しい思いするかもしれんが許せ」
「……ッ!か、勘違いしないでよね!?私は寂しいなんて思ってないんだから!」
「うむ、そんなことはわかっておる」
「……ぁ、いや。ち、違って……もう!貴方は私の婚約者であった侯爵家なの!それを忘れないで頂戴!」
「うむ」
僕はヘラの言葉に対して横柄に頷く。
これでヘラに関しては大丈夫かな?
「……っと」
僕はこの教室へとやってきたもう一人の少女、ローズ嬢へと対処するべく扉の方へと視線を向ける。
「……あれ?」
だがしかし、そこにローズ嬢の姿はなかった……一体、どこに?
「……どうして?」
そんな僕の疑問は背後から答えがやってきた。
「………ッ!?」
いつの間にか自分の背後へと回っていたローズ嬢に肩を掴まれ、その耳元でどこかねっとりとした呟きを受け、僕は驚愕に体を震わせるのだった。
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