第121話 続・管理者

 思わぬ登録で未知の施設の管理者となったコウであったが、使い方はわからない。


 ダークエルフのララノア、村長の娘カイナ、髭なしドワーフグループのダンカン、剣歯虎サーベルタイガーのベルは当然わからないから、コウ任せである。


「とりあえず、稼働してみたいところだけど……」


 コウがそうL字型の箱の前でそう告げると、音声を認識したのか、


「施設の稼働を開始しますか?」


 と返事が来た。


「はい、で……」


 コウは控えめにそう応じる。


 すると先程、緊急稼働した時のように、工場内が稼働する音に包まれた。


 待機していたゴーレム達が動き始めたのだ。


「現在、汎用労働型ゴーレムの生産のみが可能となっております。過剰な生産は混乱を生みますので、需要にあった生産をお勧めします」


 機械音声はゴーレムの生産について、忠告してくれる。


「……汎用労働型……? 他に生産可能なゴーレムって?」


 コウは念の為確認してみた。


「前任者が汎用労働型ゴーレムのみに選択肢を固定しましたので、他の生産を可能にするには解除とそれに伴う設定変更が必要になります」


「解除?」


「解除には現在の責任者ともう一人、&%$#の認証が必要となります」


 一部の音声が聞き取れないが、カイナでは反応しなかったことを考えると、ドワーフであっても必ず反応するわけではないらしい。


「ちなみに、解除した場合、どんなゴーレムが生産できるの?」


「汎用労働型の他には、特殊労働型一式、特殊労働型二式、掘削型一式、掘削型二式、重掘削型一式、重掘削型二式、運搬型軽式、運搬型中式、運搬型重式──」


 機械音声は数多くの生産可能なゴーレムの型番を順番に語っていく。


 そして、最後に、


「前責任者によって、生産の凍結をされた&%$#型各種については説明が許されておりません」


 と答えて沈黙した。


 コウはそれを聞いてなんとなくどういうものなのか想像がついたのか深く聞かないことにした。


「それじゃあ、汎用労働型を二十体ほど生産できる?」


 試しにコウはこの工場の性能がどのくらいなのか想像できないので、結構な数をお願いしてみた。


「二十体ですね? 現在魔核が二つ足りていませんので、至急魔核も生産します。よろしいですか?」


「魔核? もしかして、ゴーレムの胸に入れていた魔石かな? ──じゃあ、はい、で」


 コウは機械音声に応じた。


「責任者の許可を確認……。──生産に入ります。全ての生産過程を終了するまで一時間、かかります。しばらくお待ちください」


 機械音声はそう言うと応答を終了する。


「なんか想像よりもかなり早い?」


 コウは振り返ると黙って見守っていたララノア達にそう告げた。


「どういうこと? 音声がところどころ私には聞き取れなかったのだけど……。ゴーレムの生産がなんとかって言ってなかった?」


 ララノアはコウと機械音声のやり取りをあまり聞き取れなかったのか首を傾げる。


「うん、今、ゴーレムを二十体作ってもらうことにしたんだ。この施設の性能確認の為だけど……」


 コウはそう言うと、みんなを連れてコウん場施設のある部屋に移動した。


 すると、そこにはすでに、十八体の汎用労働型ゴーレムが並んでいるではないか。


「早っ! ──あっ! ……ということは、魔核の生産に時間がかかるってことなのか……」


 コウは段々この施設の仕組みや容量を理解してきた。


「このゴーレムってどうするの?」


 ララノア好奇心いっぱいの瞳でコウに確認する。


「ちょっと待ってね。ちょっと試したいことがあるから」


 コウはそう言うと、完成した自分より小さい大きさのゴーレムに歩み寄ると、魔法収納鞄に入るか試してみた。


 一体のゴーレムはコウの鞄に吸い込まれて消える。


「よし、収納可能だ! ──それじゃあ、次は──」


 コウはそう言うと、魔法収納からゴーレムを出してそのゴーレムに、


「僕の声がわかるかな? 動いてくれる?」


 と声をかける。


 ゴーレムは見た目が岩製の古くからあって現在でも珍しくない型のものだが、その目に光が宿った。


「僕の周囲を歩ける?」


 コウがそう言うと、ゴーレムはそれに従ってコウの周囲をグルグルと歩き出した。


「おお! ──それじゃあ、止まって。それからまた、確認を……」


 コウは命令で動くゴーレムに感動すると、すぐに別の実験をする。


 それが、起動したゴーレムが魔法収納鞄に入れられるかであった。


 だが、魔法収納鞄には入らない。


「……なるほど。起動前は物として扱われ魔法収納鞄には入るけど、一度起動すると魔法生物扱いになって入らなくなるのか!」


 コウはどうやら、それを確認したかったらしい。


「なんだ、持って帰るつもりでいたのか?」


 ダンカンがようやくコウのやりたいことを知って呆れたように指摘した。


「はい、エルダーロックの村は常に労働力不足なので、裏方としてゴーレムが働いてくれたら、かなりそれも解消してくれるんじゃないかなって」


「そうね……。見た目は現在も存在するゴーレムとほとんど一緒だし、大きな問題にはならなそう……」


 カイナはコウの案に納得とばかりに頷く。


「それはいいわ。『鉱山の精霊ノッカー亭』も薪割りとか皮むき、材料運びとか肉体労働で大変だからゴーレムが一体いると助かるかも」


 ララノアも普段大変な仕事を思い出して賛成のようであった。


「やれやれ……、この場所が誰にも発覚しないように帰りは出入り口は絶対に塞ぐぞ?」


 ダンカンが再度呆れた様子であったが、労働力の確保は反対ではないらしくそう告げる。


「それじゃあ、残り二体の完成を待つとして、その為の魔核の生産も今後の為に増産するように指示しておくね!」


 コウはみんなの賛同を得て、施設の管理室に駆けていくのであった。

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