第52話 適性の確認
コウは鉱山での採掘作業の仕事を始める中、鍛冶屋の手伝いも行っている。
鍛冶屋の作業は基本的にイッテツが注文の品の形を整え、コウが魔力を込めて鍛錬して魔鉱鉄化し、それをイッテツが仕上げて完成させるというのが常であった。
だから、コウは比較的に楽? であったから、時間に余裕がある。
その空き時間でコウとイッテツのブランドである『コウテツ』の製品も作る事にしているのだが、それを独自の流通網で売り捌いてくれる大鼠族のヨースに作りすぎないように止められていた。
作りすぎると価値が下がるという話だからだ。
それに在庫を抱え込むのは、商人としては非常に良くない。
手入れなどの維持費もかかるから、売る分だけ作るように言われていた。
まあ、コウの場合、魔法鞄があるから、在庫があっても、その維持にも手間がかからないから問題ないのだが、ヨースの言う通りに従っている。
「鍛冶屋の仕事中、ぽっかり空く時間が増えたなぁ……」
コウは急に空いた時間で何かできないかと考えた。
「あ、コウ。どうしたの、今日は休み?」
通りを歩いていたコウに気づいて、村長ヨーゼフの娘、橙色の長い髪と目をしたカイナが声をかけてきた。
「あ、カイナ。さっきまで鍛冶屋で仕事していたんだけど、それも今日の分は終わっちゃってね。何かやることないかと考えていたんだけど……。確か、カイナって魔法が得意だったよね?」
コウはカイナを見て、やりたい事がピンと頭に思い浮かんで聞く。
「ええ。私には魔法適性があったから、土、水、風が使えるけど?」
カイナはコウの質問の意図がわからず、丁寧に答えた。
「僕に魔法の使い方を教えてくれないかな? 魔力はあるんだけど、使い方があんまりわかっていないというか、属性魔法の知識が全くないんだ」
コウは素直にそう言って、教えを乞うた。
「え? コウって魔力適正あったの? 子供の頃全く無いって言っていた気がするのだけど……」
「えっと、事故以来、魔力に目覚めた感じなんだ。でも、魔法って子供の頃から使用して、慣らしていくものだって事くらいしか知らなかったからさ。それに、適正がないとわかって興味もなかったし……」
「そうなの? ──いいわよ。あ、でも、ララさんも魔法は使えるんじゃないのかしら?」
カイナはコウと同居しているララノアがダークエルフなので、そっちに聞くのが早いのではないかと思って聞く。
「ララは子供の頃から差別されて生きてきたから、教えてくれる人が誰もいなかったらしく、魔力適正もあるかどうか、わからないって言ってた……」
コウはララノアに聞いた事をそのままカイナに伝える。
「それなら、三人で一緒にやってみましょうか? 今からおうちに行っていい?」
カイナはコウとララノアと共通の話題を持ちたかったのか、そう提案した。
「いいの!? ララも喜ぶと思う。本人も何かできる事が増えればこの村に貢献できるのに、って言ってたからね。ありがとう!」
コウはカイナの申し出に手を取って、感謝を伝える。
「それじゃあ、行きましょうか」
カイナはコウに手を握られたのでちょっと照れながら、一緒にコウの自宅まで帰るのであった。
「本当にいいの!? もちろん、試してみたい!」
ララノアは自宅の庭で薪割りしていたところ、コウとカイナから誘われて嬉しさに声を上げた。
「それじゃあ、この庭で魔法適性の確認からしてみましょうか」
カイナはそう言うと、木の根元で作った腰掛に座って、説明に入った。
「「よろしくお願いします!」」
コウとララノアは神妙な面持ちで、カイナの説明を聞く。
「はい、それじゃあ、魔力適正から試してみましょう」
カイナはそう言うとララノアの両手を取る。
「それでは、魔力を流し込むので感じたら、返事してね」
カイナはそう言うと、深呼吸をして、ララノアに魔力を注ぎ込む。
「あん……! ──えっと、感じました!」
ララノアは魔力が流れ込んでくる感触にゾクゾクして思わず声が漏れ、どっちの意味か分からない答えをする。
と言っても、そう思ったのは男のコウだけであったが。
「ならば、ララさんにも魔力適正があるという事です」
ララノアはその言葉にパッと表情が明るくなった。
自分に腕力以外に他の可能性があるとわかったのだ、喜ばない方がおかしいだろう。
「それじゃあ、次はコウも混ざって魔法適性の確認をするわね」
カイナはそう言うと二人の手を取る。
「私が使える土、風、水の魔法に変換した魔力を順番で手から流し込むので感じたら手を挙げてくれる?」
そう言うとカイナは土魔法に変換した魔力を二人の手を取って流し込む。
これにはすぐにコウが手を挙げた。
「コウは土魔法適性があるみたいね。──じゃあ、次」
カイナはそう言うと次は風に変換した魔力を流し込む。
これにもコウが手を挙げた。
続いて水もコウが手を挙げるが、ララノア感じないのか、目を瞑ったまま唸っている。
「驚いた……。コウは私と同じ属性持ちなのかな? じゃあ、他も試してみましょう」
カイナはそう言うと、庭の片隅に集めてあった小枝と葉っぱなどのゴミを中央に一部持ってきて生活魔法で火を点ける。
そして、燃える火にカイナは右手をかざし、左手はコウの手を握って、魔力を注ぎ込む。
これにもコウは反応して挙手し、続いて魔力を流し込んだララノアは無反応であった。
「コウはもしかしたら全属性の可能性も出てきたわ……。ララさん、落ち込まなくていいわよ。あなたはきっと、光か闇の属性持ちなのかもしれないわ。もしくは特殊属性か」
カイナはララノアの手を取った時点で、確信めいたものを感じそう答えた。
「コウは後回しにして、ララさんの属性を確認しましょう」
カイナはそう言うと、火を消し、今度は右手を太陽にかざして、左手はララノアの手を握る。
すると、
「あ、感じる! 感じるわ!」
とララノアが安堵と取れる声で応じて、挙手した。
「やっぱり! ついでだから、可能性は低いけど闇も確認しておきましょうか」
カイナは光と真逆の属性であるから闇はないかなと思いつつ、確認する。
その方法はコウに毛布を何枚も取りに行ってもらって、それをカイナとララノアが被り、暗闇を作り出し、あとは同じように魔力を注ぐ。
「これも、感じる!」
ララノアは自分に二種類も魔法属性がある事がよほど嬉しかったのかカイナの手を握り締めて喜ぶ。
「……驚いたわ。ララさんは稀なタイプよ。おめでとう!」
カイナはそう言うとララノアを祝福する。
「そうなの!? ありがとう、カイナさん!」
ララノアは同い年であるカイナの手を改めて握ると、感謝した。
「よかったね、ララ。──えっと……、じゃあ、僕も確認いい?」
コウは二人が盛り上がっているので、水を差すのは控えたかったが自分も魔法が使用できるかもと内心ドキドキしているから改めて確認するのであった。
ちなみにその後、細かく確認した結果。
ララノア→光属性、闇属性あり。とても貴重なタイプ。
との事。
コウ→雷も含めた全属性あり。ただし、雷は普通以下っぽいとの事。土魔法は異常なほど高いレベル。他は優れているレベル。驚いた事に光と闇も属性あり。
カイナ曰く、
「コウは異常だから、あまりこの事は周りに言わない方がいい」
との事であった。
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