第53話 初めての魔法
カイナの協力でコウとララノアは魔法適性がある事がわかった。
これには二人とも当然ながら素直に喜んだ。
コウは事故以前はこれと言って才能があるドワーフではなかったし、ララノアもダークエルフと人族の混血として、能力があるのかも確認してくれる親切な人が周囲におらず、自分の可能性を感じられずにいたから、嬉しさもひとしおであった。
「それじゃあ、二人とも、簡単な魔法から使用できるように、練習してみましょうか?」
カイナがそう言うと、自分が得意な水魔法をやって見せた。
「水魔法、『水』」
カイナが魔法を唱えるとその指先から水がちょろちょろと出てきた。
「「おお!」」
コウとララノアは簡単な生活魔法だけでも素直に驚く。
「さっき、私が二人に魔力を流して、魔力の流れを感じる事ができたでしょ? その流れを意識し、魔法の詠唱と具体的な想像を頭の中で描いてそれを具現化するの。当然、魔法は魔力を消費するものだから、いきなり上位魔法に挑戦するような危険な真似はしないでね? 魔力が枯渇すると動けなくなるし、下手をしたら最悪死ぬ事もあるから」
カイナは使用するにあたっての注意事項を告げる。
「「はい!」」
二人はカイナを先生として素直に返事をする。
「それでは、コウは一番適性を見せた土魔法で『
「「はい!」」
二人はまた返事をすると、言われた通り、体内の魔力を感じようと集中する。
カイナのお陰で、魔力が体内を流れる感じは掴めていたので、想像はしやすい。
「土魔法『石礫』!」
コウが唱えると空間に大きな石が突然現れて、飛んでいく事無くその場の地面に落ちた。
「わっ!」
コウは驚いて、足の甲に落ちそうになった大きな石をとっさに躱す。
「コウ、魔力を込めすぎ。そして、想像が的確でないから、大きくなるのよ」
カイナがコウの失敗の原因をすぐに察して注意する。
「光魔法『照明』!」
ララノアが唱えると、その場に光の粒が生まれ、その場に浮遊する。
「や、やった!」
ララノアが成功に喜ぶのもつかの間、数秒すると消えてしまった。
「あ……」
ララノアは先程までの喜びもすぐに
「想像は良かったけど、魔力があまり込められていなかったわね。多分、魔力の流れをしっかり感じられていなかったのかも」
カイナはそう言うと、また、ララノアの手を取って、軽く魔力を流し込む。
ララノアそれをしっかり目をつむって感じ取ろうする。
「……今度こそわかった気がする!」
ララノアは目を開くと自信を取り戻したように告げる。
「それでは二人とも、もう一回試してみて」
カイナはそう言うと、再度魔法を促す。
この後、コウとララノアがすぐに成功するという事はなかった。
唱える度にコウの『石礫』は大きさが毎回違ったし、その場に落ちてしまう。
ララノアの『照明』も光が強かったり、弱すぎたり、そして、すぐに消えたりとコウ同様安定しなかったのだ。
しかし、カイナが根気よく指導して、何度も試させると、ついにその時は現れた。
「土魔法『石礫』!」
「光魔法『照明』!」
コウとララノアが同時に唱えると、まるでタイミングを合わせたように、コウの『石礫』は子供のこぶし大の石となって標的の薪まで飛んで行って倒し、ララノアの『照明』は、その場に浮遊してその明かりを維持した。
「「や、やったー!」」」
コウとララノア、そして、カイナは手を取り合うと成功を喜ぶのであった。
「二人とも呑み込みが早いわ! 私なんて生活魔法の『水』を覚えるのに一週間以上かかったんだから。──やっぱり、私独自の教え方が間違えていなかったのね」
カイナは二人を称賛すると同時に自分の教え方が間違えていなかった事に安堵した。
「カイナの教え方って独自なの? 凄くわかりやすかったけど? 本当にありがとう」
ララノアがカイナの手を取って感謝を述べる。
「ふふふっ。私が教えてもらった時って、魔力をどうやったら感じられるのか、から習ったのよ。だからそれだけで一週間近くかかったわ。──魔力を相手に流し込む手法って普通は出来ないらしくて、私だけの特技みたいなものなの」
カイナは独自の能力を使用しての指導法が、正しかった事が証明されて嬉しそうだ。
「そうなんだ? でも、その特技のお陰で僕達はすぐに魔力の流れを感じる事ができたから、想像もしやすかったよ」
コウもカイナの教え方のうまさに感謝する。
「これで二人とも、魔法使いとしてのコツを掴めたと思うから、あとは練習あるのみよ!」
カイナがまた、先生らしく二人に発破をかける。
「「はい!」」
コウとララノアは頼もしい先生カイナに笑顔で返事を返すのであった。
そこからは、カイナの指導もあってコウは土魔法を自在に操るようになりだした。
特に、形状を変化させる生活魔法に抜群の力を発揮する。
それは壁であったり、道を舗装する石畳を再現したりだ。
それに反してララノアはコウに比べて魔力量が少ないから、練習が継続できないので、新たな魔法の習得には至っていない。
だが、ララノアは魔法を使える喜びに目覚め、魔力の枯渇する寸前まで毎日練習する姿が、自宅の庭で夕方よく見かけられるようになるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます