第43話 『七傑』決戦、決着

 「【絶対反射アブソリュート・カウンター】……!」


 シャロンが視て、アウラが返す。

 その全てを返す究極のカウンターにより、二人はアリアの【原初の氷炎】を跳ね返した。


 さすがのアリアも対抗策はなく、ドゴオオオオオという轟音ごうおんひびき渡った。

 その衝撃により、闘技場の視界がなくなるほどの砂ぼこりが舞う。


「「「……っ」」」


 しーんと静まりながら、観客席中が固唾かたずを飲む。

 そんな中、アウラは砂ぼこりの中へ剣を向けた。


「当ててはいない。だが──」


 そして、剣をブウォンと大きく振るい、砂ぼこりを晴らす。

 中からは膝を付いたアリアが姿を現した。


「続けるのなら、ワタシ達は何度でも返すぞ」

「……」


 少し口を閉じていたアリアだったが、やがて首を横に振った。


「私の……負けよ」


 それを聞き、審判がバッと手を上げる。


『勝者、アウラ・フェイティア、シャロン!』

「「「うおおおおおおおっ!!」」」


 その瞬間、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。

 全員が『七傑』という、まさに学院の頂上決戦に、表で人気をはくする二人が勝利を収めたからだ。


 そうして、剣をさやに納めたアウラが、アリアへ話しかける。


「ようやく君に勝てたよ」

「……」

「ありがとう」


 そのまま貸すように手を差しだす。

 だがアリアは、その手をパッと払った。

 代わりに側近のセリンセが肩を貸す。


「失礼します。アウラ・フェイティア様」

「あ、ああ……」


 降参宣言以降、一言も話すことはなく、アリアはセリンセと共に裏へ姿を消した。

 その姿には、アウラも複雑な目を向ける。


「アリア……」


 敵だとしても、アウラ自身、誰よりも彼女を認めていたことだろう。

 だが、【全身全霊】を解いたシャロンが隣で声をかけた。


「でも、生徒会長は生徒を放っておかないでしょ?」

「フッ。そうだな」


 アウラは生徒会長だ。

 たとえ相手がアリアだろうと、生徒である限りは正しく導こうとするだろう。

 

 そうして──


「「「さすがです!!」」


 陣営から三人が一斉に飛び出してくる。

 ニイナ・シンシア・グランの一年生トリオだ。


「アウラ会長、かっこよすぎです!」

「すごかった……!」

「シャロン寮長も!」


 後輩の猛烈もうれつなエールに、アウラ・シャロンも反応を見せる。


「フッ、意外と照れるものだな」

「ははっ、だね」


 それから、アウラはニイナへと視線を向けた。


「ニイナ君。アリアのことだが、ワタシがなんとかしてみせ──」

「いえ、わたしも協力します」

「……!」


 だが、言葉の途中で、ニイナも協力を申し出る。


「わたしも姉の本心が知りたいです」

「そうか。ならばこれから解決していこう」

「はい!」


 あの様子から、アリアもすぐに次の行動を起こすことは考えにくい。

 生徒会長と妹という存在ならば、彼女の意図も掴めるかもしれない。


 そうして、副将戦は一旦終幕。

 とにもかくにも、これで次へつながった。


 あとは──


「あなた」

「グラン」

「グラン君」

「任せたよ」


 大将グランへ託された。


「任せてください!」





 崩壊した闘技場を直すため少し時間を置き、ようやく団体序列戦が再開される。


 中央に並ぶのは、大将の二人。

 グランと、仮面を被った男だ。


「よう」


 軽い挨拶の後、仮面の男はようやくベールを脱ぐ。


「久しぶりだな」

「君は……!」


 出てきたのは──エルガ・ミリウム。

 一年序列第二位にして、入学当初の練習試合でグランに敗れた男だ。

 あの乱暴な言葉遣いと、傲慢ごうまんな態度は懐かしく思える。


 最近、どこでも見かけなかったエルガに、待機所のニイナとシンシアが口を開く。


「どこ行ってたのかしら、あいつ……」

「最近見なかったよね」


 それと同時に、二人は何かエルガの雰囲気が変わったと感じ取っていた。

 また、それはグランも同じく。


分からなかった・・・・・・・よ、エルガ君」

「そうか」


 グランは一度戦った者の魔力は忘れない。

 それにもかかわらず、仮面の下がエルガだと気づかなかった。

 その事実が彼の不穏さを増長させる。


「よろしくね」

「ああ」


 団体序列戦、大将戦。

 一勝一敗で迎えたこの最終戦は、勝った方がチームの勝利となる。


 そんな中、満を持して審判が開幕を宣言した。


『これより、大将戦グラン対エルガ・ミリウムを始めます!』


「「「うおおおおおおおおッ!!」」」


 その瞬間、闘技場内は再び熱気を帯びる。

 副将戦と同等、もしくはそれ以上の歓声の大きさだ。


『大将戦、開始!』


 そして、戦いの火蓋が切られる。


「……」

「……」


 グランは剣、エルガは炎を構えるが、両者、まずは一歩も動かず。


 この展開はおおよそ予想できた。

 エルガが不穏である以上、誰もが様子見から始まるかと思っていたからだ。


 だが、そこであえてグランは前に出た。


「──!」

「ぐあっ……!?」


 誰も目に追うことができない一閃。

 剣聖から直々に教わりし剣技を、グランは開幕から浴びせた。


「「「……ッ!?」」」


 そのあまりの速さに、両者の位置が入れ替わって初めて、会場はグランが攻撃をしたことに気づいた。

 

「ごめんエルガ君。俺も託されたんだ」


 手を抜く気はない。

 グランがそう言うほど恐ろしいものはない。


 しかし──


「クックック……ハッハッハッハ!」

「!」


 斬りつけられたはずのエルガが笑い声を上げた。

 これにはグランも驚いた表情で振り返る。


やっぱ・・・見た事ある剣技だなあ」

「え……?」


 エルガは余裕の表情でそう語る。

 対して、グランは思わず言葉をらした。


「エルガ君……?」


 違和感は最初からあった。

 一度戦えば魔力を忘れないグランが、仮面の下のエルガを気づかなかったことだ。

 そこから導かれるのは、エルガが違う人物に乗っ取られている可能性。


「いや、君は誰なの……?」

「フッ」


 その問いに、エルガ(?)はニヤリとしながら答えた。


「お前の“あに弟子でし”だよ」





─────────────────────

『七傑』同士の決戦は、最終奥義によりアウラ・シャロン側へと軍配が上がりました!

初めての敗北を感じたアリアの様子も気になりますが、団体序列戦はいよいよ大将戦へ!

そこで明かされる事実とは……?

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