第30話 脱獄の必要性

俺たちはなぜ紫音が必要だったのかををまず話し始めた。そして俺は紫音に質問を投げかけてみた。

「紫音。お前さっき蓮になにか言われてたけど何かあったのか?」

「べ、別に何もないよ...」

「本当にか?」

「本当だって...」

紫音が明らかに動揺しているのを見て瑠樹が顔をしかめ、再度紫音に問う。

「お前何か隠しているだろ」

「る、瑠樹も蘭も違うって言ってるじゃん」

「にしては動揺してるなぁ?」

「違うってば」

「じゃあ何言われたか言ってみろ」

「なにもないって...」

「それにしては動揺してるし、声が小さいんだよ。いつもなら軽くキレながら否定するだろお前。今なら怒らないから言ってみろよ」

「瑠樹それはお母さんがよく言う信用できない言葉ナンバーワンのやつ」

「マジ?」

「うん」

瑠樹がマジかーと言っているところで紫音が話し始めた。

「ほんとに怒らない?」

「マジか乗る奴いたんだ」

「あぁ怒らないから言え」

「蓮にあとで蘭と瑠樹が話していた内容を簡潔にまとめて言えって言われた...」

「「いや断れよ」」

「断ったらしばらく医務室送りにするって言われた」

なるほど。紫音に取って医務室送りは怖い人(秋音)が常にいる場所だったから嫌だったのだろう。

「でも、ちゃんと嘘の内容を報告しようとしてた」

「それはいいことだな」

「ならよし」

「と言うかそれだったら紫音駆り出さないで俺らに聞けばよかったんじゃん?」

「ほんとそれ。何の話をするつもりだったの?俺お前らのせいで駆り出されたんだからな」

「まぁまぁ、君にとってもいい話だと思うよ」

「どんな話?」

「最近脱獄を計画する人が減ったんだよ」

「うんそれで?」

「だから今看守たちは気を抜いている」

「え、そうなんだ。ってことは脱獄がしやすい的な?」

「そーゆーこと。だから計画立てるぞ」

「え、じゃあ蒼とかは?呼ばないの?」

「もちろん呼ぶけど、基本的な土台は作らないと」

「そっか」

紫音に計画を練ると話をすると突然瑠樹が俺に問いかけてきた。

「そういえばなんでお前はここから出たいんだ?まぁ俺もそうだけど」

「え、えっとね。普通にここが嫌だからかな」

「...挙動不審だな。嘘ついてないか?」

「えっと...これって言ったほうがいいのかな」

「言えよ」

そう瑠樹に言われると俺は決心した。

「実は俺まだ見つかっていない余罪があるんだよね。だからばれる前に逃げようと思ってさ。あはは...」

「ふーん。なるほどな。何の罪だよ」

「薬物を売ってた」

「え、薬物ってあの別名ハッパとか?」

「そういうことになるね。てか普通に大麻でいいよ」

「よく捕まらなかったな」

「俺は薬物やっていないからな」

「それでもだよ。どうやって証拠隠滅したの?」

「普通に燃やした」

「それだけ?」

「それだけ。でも燃やした次の日に家宅捜索入って危なかった」

「なるほどな」

「え、今聞いたこと看守に話していい?」

「紫音、医務室送りにされたいのならいいぞ」

「う、嘘だって。冗談冗談」

「まぁなるほどな。だからここから逃げたいのか」

「うん。見つかったらめんどいしね」

なるほどなーと瑠樹と紫音が納得していた。

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