第29話 猫をどけたい

最近脱獄を企てる人が減ってきた。心が折れた人が多いということなのだろうか。

だが、減ってきたということは看守も気が抜けているということだろう。

なので俺は瑠樹に久しぶりに脱獄したいということを話してみた。

すると瑠樹は目をキラキラさせながらいいなそれとつぶやいていた。

なのでまずは、細かく計画を立てないといけないのだが、瑠樹に付きまとっている

三毛猫(蓮)が正直言って離れてくれないと話にならない。

なので瑠樹が走って蓮をまこうとした。

確かにまけたのだが、今度は俺についてきて俺が瑠樹に会ったら瑠樹のところへ戻るという行動を見せた。

なんという執念なんだと思いながらもどうしたら蓮をまけるのか話していると蓮が猫の状態で話しかけてくる。

「お前らいつもは俺の事おいていかないくせになんで今は置いていこうとするんだよ?」

「たまには一人にさせてくれよ...飯食う時は膝の上、寝てるときは背中か、腹の上

なの何とかしてくれ」

「蓮、お前普通に猫だな」

「しょうがないだろ。尾崎にできるだけ一人にするな。蘭と二人きりにするのはもっとだめだって言われたんだよ」

「「なんでだよ?」」

「お前ら二人にすると何か悪いこと企んで実行する可能性が高いかららしい」

「しないから。でもちょっと話したい事があるんだよ」

「じゃあせめてだれかと一緒に話せ」

「うーん...紫音とか...?」

「うんそいつでいいぞ。だが話す前に少しだけそいつに会わせてくれ」

「別にいいぞ」

「んじゃ紫音探しに行くぞ」

「「わかった」」

そう言って紫音を三人で探していると瑠樹が白井に襟首掴まれて引きずられている紫音を見つけた。

「これ話しかけないほうがいいんじゃね?」

「お前らが紫音と話すと言ったんだろうが。それに紫音のほうが俺にとっては都合がいいし」

「よくわからないがそうなんだな」

「わからなくていいぞ。あと紫音回収するぞ」

「えー」

白井がこちらに気が付いたのか紫音を引きずりながらこちらへ来る。

「お前ら集まってどうしたんだ?」

「そこにいる紫音は何があったの?」

「ん、こいつか?」

「それ以外いねーだろ」

「こいつはどこからか鍵出して深夜に自由時間でもないのに外へ出てそのまま逃げようとしているところを捕らえた」

「だから夜うるさかったの?瑠樹は普通に寝てたけど」

「俺だって起きたわ」

「深夜に逃げたのに捕らえたのは今か結構時間かかってんな」

「は?今猫がしゃべったのか?」

白井は蓮がいきなり喋りだしたことに少し驚いている。

「いや普通にこれ俺の能力。動物になれるんだよ。俺の事聞いたことない?」

「あったようななかったような。特に覚えてないな」

「ひどいな」

「もういいだろう。そんなことよりお前らは紫音に用があるんじゃないのか?」

「うんそーそー。よくわかったな」

「さっきから話が聞こえてるのだよ」

「そうだったの⁉」

「嗚呼、聞こえてたぞ。それで紫音がどうしたんだ?」

「そうだった。あのな俺が瑠樹の担当看守にさせられて瑠樹のことみてるんだが、なんか嫌がられてな、俺に聞かれたくない話を蘭としたいらしいからせめて

第三者をはさんで話せって言ったらこいつらがじゃあ紫音にするって言った」

「そんなに聞かれたくない話なのか。それでこいつを連れて行くと?」

「うん。あれだったらこいつ俺がきっちり絞るから」

「「怖」」

「まぁそれならいいだろう。俺もこんなの持ってても面倒なだけだしやるよ」

「ありがとなー」

『お前ら俺抜きで話を進めるな!』

いきなり紫音が叫んだ。

「うるせえな。お前とりあえずこっち来い」

「は?なんで?」

「お前俺の代理になれ」

「意味不明だから嫌だ。代理ってなにするんだよ?」

「なんか俺が瑠樹と蘭の会話聞こうとしたら瑠樹に嫌がられたから第三者として

介入してくれ」

「めんどくさいな」

「...しょうがないな秋音さんを呼ぶか」

「わかった。わかったからそれはやめてくれ。お願いだから」

紫音が焦ったように連の言ったことを渋々承諾する。

「よし、俺の代理は決まったし代理に一つ注意点を話しときたいからこっち来て」

「話すだけな」

「話すだけだから安心して」

そういうと蓮が紫音になんか小声で言った。

「なるほどな。まぁそれぐらいならいいぜ」

「よかった。じゃあばいばい~」

そう言って蓮が去っていった。

俺たちはまずは場所を変え事の顛末を話し始めた。

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