第27話 猫
なんか最近刑務所に猫がいる。
看守たちは何も言わないし、何なら頭なでたりしている。めっちゃ噛まれたり、引っ掻かれているけど。
見た感じだと三毛猫だ。しかもオス。三毛猫のオスってすごく珍しくなかったけ?
最近鈴がよく三毛猫の近くにいる。
それになぜか寝ている瑠樹の腹の上に乗って三毛猫が寝ていたりする。
なぜ猫がいるんだろうと思いながら猫を見る。こちらに気付き、睨んでくる。
性格は多分クールなのかな。触られるのを極端に嫌がる。
すると突然出てきた蒼がいいもの見つけたという目をしながらそーっと猫に近づいていた。
そして「とったぞー」と猫を捕まえていた。
しかし、びっくりした猫が大暴れし、蒼が引掻き傷がいくつかできた。
蒼がこちらに気が付くと何とも言えぬ表情でこちらに近づいてくる。
「ちょい触っただけやのにめっちゃ引掻かれた...」
「そりゃいきなり触られたらびっくりするんじゃない?」
「そうやけど...ちょい触らしてくれたってええやん...珍しい猫やし」
「とりあえず、医務室行こ。膿んじゃうかもしれないし」
「怖いこと言わんといてや...まぁ医務室行くけど。紫音から聞いてんけど医務室におる人が怖いらしいからついてきてや。お願い」
「紫音マジであれトラウマなんだな」
「そうんやて」
「しょうがない。ついてってやるよ」
「やった!おおきに」
そうしてしかたなく医務室に蒼と行くと秋音がげんなりした様子で俺らを見てきた。
「お前らももしかして猫に引っ掻かれた来たのか?」
「俺は違うけど蒼がそうだよ」
「はぁ...何回目だよ」
「何回目って?」
「最近ここんところここに来る奴は大体猫に引っ掻かれた奴なんだよ。一回引っ掻かれたのにまた懲りずに触ってやられる奴もいるし。これだから学習しねー馬鹿は嫌いなんだよ」
「な、なんか大変そうだな」
「なんかかんにんな。なんしか手当てしてほしい」
「まぁお前は初めてだし良いぞ。次は気をつけろよ」
「わかった」
蒼が少し丸くなってる気がする。
「そういえばあの猫ってどこから来たの?」
「そうだな。あの猫への腹いせに教えてやるよ。あいつは中身は猫じゃないんだよ」
「え?」と蒼がフリーズしている。
「え?どうゆうことなの?」
「あいつはあんな感じだが看守だ。囚人たちがいなところだと人になってたりするぞ」
「...は?俺そいつにいろいろ聞かれてるんだが...」
「...僕そんなんにデレとったん?ほんでそんな奴に引っ掻かれたのかよ...」
「あ、これ他の奴に言うなよ。言ったら八つ裂きにしてやるからな」
「怖い...紫音が怖がる理由がようわかる」
「これから猫を信じられない」
「それ世の中の猫に失礼だぞ。でもあいつ触り心地はふわふわだったな」
「あれ触れるんだ?尾崎前引っ掻かれたり噛まれてたけど」
「私は仮にもあの猫野郎の先輩だし、尾崎は周りから尊敬されてるかっていうとそうではないからな」
「猫野郎...」
「だって猫だろ。お前らだってあれの人間の時とか見てないんだろ?」
「そうだな」
「あ、あとあいつ猫の状態でも喋れるぞ。私普通にしゃべったことあるし」
「今度話しかけてみるか」
「あとずっと思ってたんだがそこの入り口にいて私の話を盗み聞きしてる奴は誰だ?」
「え?」
「お前ら共犯じゃないのか?」
「初耳だけど...」
そう言って後ろを見ると紫音がいた。
「紫音お前どうしたの?」
「いや蒼が医務室行くの見かけたから大丈夫かなーって。にしてもあの猫、人だったんだな」
「ちゃんと聞いてるし」
「私の話をちゃんと盗み聞きしてたならわかるかもしれないが、他の奴に言ったら八つ裂きだからな」
「わ、わかりました」
「よろしい」
そして、蒼が引掻き傷の手当てをしてもらうと俺らは医務室を出た。
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