第28話 話す猫らしきもの
後日俺は三毛猫を探すことにした。探すと意外と早く見つかった。今は一人でいるようだ。俺が近づくと真顔で見てくる。
そして隣に俺が座り、本題を出す。
「お前って看守なんだろ?」
「......」
「秋音って人から聞いたんだけど...」
「......」
そこまで聞くと猫は立った。もちろん四足歩行で。俺もたつと、しっぽを俺の足に絡ませてそのまま引っ張ってきた。ついて来いということなのだろうか。
そのままついていくとそいつは人気のないところで止まった。
そして喋った。めっちゃ男の声でしゃべっていた。
「お前ほんとにそれ秋音先輩から聞いたんだな?嘘だったらお前のその顔に一生
消えない傷を作ってやるからな」
「そんなにばれたら嫌なんだ」
「だから今も猫の姿なんだろ?」
「まさかお触り厳禁で中身もこんな成人男性だったとは...」
「なんだよ悪いか?大体猫だって年は取るのに、それでもかわいがってるだろうお前らは」
「確かに言われてみればそれはそうだね。そういえばお前他の動物になったりもできるの?」
「できるぞ。猫が一番動きやすいから猫にしてるだけでな」
「そーなんだ」
「前瑠樹が持っているのに似た蛇になってみたんだが普通にあいつ自分の蛇じゃないなって見破ってたから蛇はもうしばらくはならないけど」
「名前なんていうんだ?」
「蓮って名前だ。お前は?」
「俺は蘭」
「そうか」
「そういえばよく瑠樹の近くにいるよね」
「なんかあいつがいろいろ問題起こしてるからそいつの担当看守になった」
「担当看守になったって言ってるけど瑠樹の蛇は猫の時大変なんじゃない?」
「いや全然。普通に狩れた」
「瑠樹の悲鳴が聞こえた気がした」
「あいつめっちゃ叫んでた」
「やっぱりか。あいつあの蛇大事にしてるからな」
「そういえば人間にはならないの?」
「なって見せようか?」
「どんな風になるか見たい」
「いいぞ。ほれ」
そう言って白い霧が集まり、霧がなくなった時には普通の人間がいた。
ちゃんと看守服も着ている。
「お前意外と小さいな。久しぶりにこの視点になったなー」
「全然見えないじゃん。ディスってくるし」
「そういうもんだ」
「納得いかないな」
「諦めろ」
「瑠樹に言うぞ」
「俺さっきお前にほかの人にばらしたらお前の顔に一生消えない傷を作ると言ったはずだぞ」
「秋音に何とかしてもらう」
「しばかれるぞ」
「よくよく考えたら人の手当てするのになぜ暴言吐かれたり、しばかれるんだろう?」
「本人曰く馬鹿は学ばないかららしい。ちなみに俺もめっちゃ傷の件で怒られた」
「それは自業自得」
「あいつらが嫌がってもニヤニヤしてやってくるのが悪い」
「もうずっと人で生活してろよ。そしたらそんなことされねーから」
「そしたら警戒されてめんどくさいじゃん」
「そうか?」
「だって猫なら人の腹の上で寝てもなんも言われないが、人ならだめだろう?」
「それはそう」
「それと一緒だ」
「今思い出したけど瑠樹最初は確かに警戒されたな」
「だろ?あいつ最初俺が会って話した時あからさまに嫌そうな顔してた」
「瑠樹は最初そんな感じだよ。尾崎は今もそんな感じだけど」
「あの人はそういう人だ」
「そういえばみんなから尾崎への態度を見ると尊敬されてない気がするけどそうなのか?」
「当たり前だろ」
「マジか。気持ちはわからなくもないけど」
「だってあの人無茶苦茶なことしようとしていたし、秋音さんが最初にあいつの言ってることが世間一般的に炎上するようなものだったら反論したりしてもいいし、
そもそも尊敬なんかされる器じゃないって言ってたし」
「尾崎ぼろくそ言われてるじゃん」
「こっちだって大変なんだよ。それなのにお前らは物を壊したり蹴りかかってきたり、逃げたり。賃金が高いのもうなずけるわ。まぁ逃げるのはこっちが許可していて、逃げても無駄だと相手の心を折るためにやってるんだがな」
「そうだったの?」
「あぁそうだよ。まぁそれで逃げた前例が一個あるけどな」
「鈴か?」
「そうだな。よく知ってるな知り合いか?」
「うん。同じ部屋にいる」
「そうか」
「まぁしばらくは俺があいつを見張ってるから」
「なんかあった時どうするんだよ」
「そん時はしょうがないからこの姿になって捕まえるわ」
「そうか。そういえば瑠樹はお前のこと気に入ってたぞ」
「そうなのか?それはうれしいな」
「猫の姿だけどな」
「まぁ普通の姿であんまりあってないからね。そりゃそうか」
「でもお前性格に難はなさそうだから仲良くできるよ」
「それはどうかな」
「だって尾崎を見ておかしいと思えるなら多分話はできると思うよ」
「それなら行けそうだわ」
「だろ?」
そうやって話していると瑠樹があっちにいるのが見えた。なので呼んでみた。
「瑠樹ー」
「ん?どうしたんだ?」
そういって近くに来てくれる。
「お前担当看守できたでしょ?」
「なぜそれを...ってその張本人がそこにいるからか」
「お前俺のこと覚えてたんだ」
「まともそうだし、担当なら顔覚えてないと面倒だし」
「優しいんだな」
「瑠樹は優しいほうだよ」
「そうだ俺は優しい」
「自分でやさしいっていう人初めて見た」
瑠樹がどや顔で自分は優しいというのに対して蓮は笑っている。
和解はしているのか。
「なんだ仲いいじゃん」
「だって一緒に寝てたし」
「え?ばれてたの?俺の事?」
そう言い、蓮は慌てている。
「お前猫の姿になってよく俺のこと見張ってたろ。紫音から聞いたぞ」
「あとでその紫音って人のとこ連れてってくれる?しばき倒すから」
「わかった。紫音ご愁傷様だな」
「そうだね」
「そういえばばらしたらダメって秋音が言ってたと思う」
「言ってたんだ?」
「うん」
「じゃああいつ秋音のしばきも受けるな」
「自分で傷つけて治療するのか」
「紫音どんな感じになるんだろう」
「連についてってみるか」
そうして俺と瑠樹でついて行ってみると蓮が紫音を見つけ近づき話しかけた。
紫音がよくわからず流され蓮についていき部屋に入って行った。
扉が閉まったのでよくわからなかったが、物音が聞こえた。何をしてるんだろう。
そしてしばらくして蓮がずるずると紫音を引っ張って医務室に連れて行っていた。
あとからいくと紫音が秋音に怒られている真っ最中だった。
「なぜばらした?」
「瑠樹にならいいかなって思って...」
「ダメなんだわ。私が前言ったこと覚えてるか?」
「えっと...」
「くれぐれもほかの人にばらすなよと言った。そしてばらしたら八つ裂きと言ったはずだ」
「ごめんなさい」
「世の中ごめんなさいで済んだら警察いらねーんだよ。これでもしもっと大変なことになったらお前はどうする気だった?」
「...」
「なにもできないだろ?」
「はい」
「わかったら次はやるな。わかったか?この質問で答えられるのはyesかはいだ」
「はい」
「よろしい。次やったらマジで怒るからな。言いつけはしっかり守れよ」
「わかりました」
可愛そうなことに紫音がとても絞られていた。
そしてこっちへ戻ってきたときに俺と瑠樹を見て裏切ったなっと言った。
「裏切ってねーよ」
「俺めっちゃ怒られたんだけど!?しかも二回も」
「あれ怒られてたんだ」
「怖かった」
「俺ら影から見てたけど怖いわあれは」
「見てねぇで助けろよ」
「自業自得だからしょうがない」
そう喧嘩していると秋音が「じゃまだお前らさっさとどこかに行け」
と言われ俺らは喧嘩をやめて自分の部屋へ帰った。
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