えちえちすごろくで脱衣鑑賞!

 えちえちすごろくは序盤を終えたといったところか。ここから先は、よりエッチな命令や過激な質問が目立ってくる。


「僕の番。……1だ。『どんな下着を着てほしい?』だって。これは女性に対する質問という意味なのかな?」

「ですね。どういう下着が好みですか?」


「そうだなぁ。一言で言えば清楚なやつというか、あんまり面積が小さかったり透けてたりするのはちょっと引くかも」

「へえ、意外ですね。男の人って結構セクシーなのが好きかなって思ってましたけど」

「もちろんそういうのもありだけどね。例えば初めてなのにいきなりそういうのはちょっと……」


 しまった。もしかしたら今の彼女が「そういうの」を身に着けているかも知れないじゃないか。


「あ、それなら私も同意見ですね。やっぱりTPOみたいなのってありますからね」


 よかった。意見は一致したようだ。


「ところで先輩、今私がどういうの着けてるか、気になります?」


 彼女は正座したまま上半身を傾けながら尋ねてきた。ブラウスの隙間から下着が見えそうだ。あるいは、手を伸ばせばスカートをめくることだってできる。


「……気になりますよね。でも、後のお楽しみってことで!」


 僕が答える前に気持ちを代弁されてしまった。そりゃそうか。


*


「私の番。……2ですね。『2枚服を脱ぐ!』。あー、さっそくかぁ……」


 僕は思わず息を呑んだ。ブラウスの下にキャミソール等を着ていたとしても、2枚脱げば下着は確実に見える。


「……そうだ、靴下でもいいですよね」


 彼女はそう言うと、脚を崩して右膝を立て、靴下を脱いだ。僕のほうを向いたままなので、スカートの中身が見えてしまう。慌てて目をそらす。


「もう、今さら気を使わなくてもいいですよ」


 次に彼女は左膝を立て、今度はゆっくりと時間をかけて靴下を脱いでいった。……下着は薄い水色、デザインはシンプルなようだ。


「はぁっ。さて、どんどん行きましょう!」


 僕があっけに取られている間に、彼女は色っぽいため息をついた。心なしか顔も紅潮している。このゲームですっかりその気になってしまったのかも知れない。


*


「僕の番。……5だ。『今までに忘れられない夜の思い出は?』」

「先輩、なんか色っぽい話あります?」

「うーん……。中3の夏祭りで、同級生の女の子とお祭りデートしたくらい、かな」


 高校で別になってしまったが、小学校時代からの同級生だった。浴衣姿の彼女の手をとって神社を歩いた記憶が蘇る。


「でも、キスくらいしなかったんですか?」

「してないよ!」

「ふーん♪」


 後輩は妙に嬉しそうだった。「初めて」がもらえることを期待してるのだろうか。



*


「私の番。……4ですね。また先輩と同じとこ! そうですねえ、今年の林間学園かな」

「林間? なにかあったの?」


 林間学園といえば僕も去年、肝試しで怖がる女子の手をつなぎながら歩いたのを思い出す。


「消灯時間の前にですね、私たちの部屋にこっそり男子を呼んだんですよね」

「意外と大胆だね」


 林間学園や修学旅行での密会、期待していたけど無かったイベントだ。


「いえ、ただトランプで遊んだりしただけなんですけど。そのときの私と友達、お風呂上がりでノーブラだったんですよ」

「の、ノーブラ?!」

「ええ。特に私なんて白いTシャツでしたから、もしかして透けて見えてたかも。男子の視線も感じましたし……どこ見てんですか?」

「ああ、ごめん」


 思わず、僕も彼女の胸元に視線をやっていた。


「ま、割と厚めのシャツだったから思ったより透けたりしてなかったんですけど、結構ドキドキしましたね」

「今より?」

「今のほうがドキドキしてるに決まってるじゃないですか。もう。次いきましょ」


 彼女に促されて、僕はまたサイコロを振る。


*


「僕の番。……4だ」

「分岐ですね、どっちに行きます?」


 左のルートでは「1マス進む」からの「好きな体型のタイプは?」。下のルートでは「相手の体のどこかに口づけ!」。どちらを選ぶか。


「ねえ先輩、どっちですかぁ?」


 彼女はにやにやしながらこちらを見つめてくる。無難に行くなら左だが、ここは下に進んで男を見せる!


「意外と大胆ですね……あっ」

僕は彼女の右手を引き寄せて、その甲にキスをした。


「ずいぶん紳士なキスですね。それじゃ私もっ!」

 そして、彼女は僕とそっくり同じことをした。手の甲に優しい湿り気を感じる。


「……別にやり返しちゃいけないなんて書いてませんでしたからね。……っ?!」

 その時、何を思ったのか僕は彼女を抱き寄せて、その唇を奪っていた。


「……ぷはぁっ! 先輩、いきなりすぎですよ」

「キスが1回だけだなんて書いてなかったからね」


 クールに返したつもりだったが、僕の心臓は高鳴っていた。自分でもなぜこんなに大胆な行動ができたのかわからない。


「先輩、キスしたことがないって本当なんですか?」

「お祭りの日にキスをしてないとは言ったけど、それ以外の時にキスをしたかどうかは言ってないよ」

「むぅー」


実際のところ、唇へのキスはこれが初めてだった。しかし密かに脳内でシミュレーションしたり練習はしていたのだ。眼鏡をかけていても大丈夫なように、横向きでキスをすることも。


*


「私の番。……1かぁ。『ひとりHをする頻度は?』……これ、答えなきゃ駄目ですか?」

「無理しなくてもいいと思うけど」


 そもそも、このゲームを持ちかけたのは彼女のほうなのだが、下手なことを言って雰囲気を壊しても面白くない。


「まあ、決まりだから答えますけど……週に三日、いや二日くらいですね。あー、恥ずかしっ」


 彼女は眼鏡の下から両手で顔を覆う。「本当は三日じゃないの?」とか「どういうふうにするの?」とか「1日に何回する?」とか、気になることを聞いてみたくなったのだが、さすがに自重することにした。


「もう、さっさと次やっちゃってください!」


さすがにこの質問はこたえたようだ。僕は気分を切り替えるためにサイコロを転がす。


*


「僕の番。……5だ。一回休みか」

「先輩とはけっこう差がついちゃいましたからちょうどいいですね。それじゃ私の番。……1ですね。『経験人数は何人ですか?』0ですよ、0! バージン! エクストラバージンですっ!」

「オリーブオイルかっ!」


 それにしても、なんで高級なオリーブオイルはエクストラバージンと呼ぶのだろうか。他の食品類では聞いたことがないのだが。イタリア人はそういうネタが好きなのだろうか。


「と、とにかく先輩が初めてになると思うので、よろしくお願いします!」

「あ、うん。よろしくね」


 眼の前で服を脱いだり、キスしたりと、今までになかった経験を立て続けにした僕たちだが、最後の一線を超える実感はまだない。


*


「私の番。……3ですね」


 ここで彼女はルートの分岐に入る。左を選ぶと「S?M?」の質問。下を選ぶと3枚脱がなければならない。さすがに左のほうを選ぶかと思ったら、彼女は躊躇なく下に進んだ。


「えっ、いいの?」


 思わず声に出してしまった。3枚も脱いだら、まず確実に下着は見せることになるだろう。


「どうせ、もう見られちゃいましたし」


 彼女はまっ先にスカートを脱ぐと、僕に背を向けてハンガーにかけた。なめらかそうな生地のショーツに包まれた丸いお尻が目の前に晒される。


「それに、せっかく上下揃えてきたんで見てもらいたかったし」


 続けざまに、ブラウスを脱いで椅子の上に畳む。その下に着ていたキャミソールも同様だ。下着は彼女の言う通り、水色の上下揃いだった。


「どうですか?……うー、やっぱり恥ずかしいな」

「きれいだよ。よく似合ってると思うし」


 僕は女性下着を褒めるための語彙をあまり持っていないが、シンプルなデザインに同色の刺繍が施された清楚な下着は美しく、また彼女に似合ってると思った。それにしても、制服の上からではわからなかったが、意外と胸が大きい。


「……ねえ先輩、いつまで見てるんですか?」

「あ、ごめん」

「いいですよ、時間はたっぷりあるんですから」


 僕はお言葉に甘えて、しばらく彼女の下着姿に見入っていた。

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