第3話 運行3 10月6日

今日は、私が乗車補助をしていた時の、不思議な体験をお話ししましょうか。


乗車補助とは、夜行バス利用のお客様が、行き先を間違えないよう案内する者でございます。

普通は、バスの運転手が並行して行う業務なのですが、お盆や年末年始、長期休暇期間など、利用客が多い時期に特別に配置されるのです。


その日も、夜遅いというのに次から次へと夜行バスを利用するお客様が現れ、休む暇もないぐらいに働いておりました。


そんな中でした、ふと視線を向けられている気配がしたのです。

お客様のなかには、ときおり私共にようがあっても無言で佇む方もいますので、どなたか用があるのではと辺りを見回しました。


しかし、ちょうどバスの途切れた間であった問こともあり、周囲にはそのような方は見当たりませんでした。


そうこうしているうちに、次のバスの搭乗時刻となり、また慌ただしくお客様をご案内いたしました。

そして、バスが出発するのを見送り、つかの間の平穏が訪れて時に、また視線を感じたのです。


周囲には次のバスの出発時刻を待つお客様が、数名ほどいましたが、いずれの方から視線ではありませんでした。


不気味に思いつつも、搭乗時刻がくるたびにお客様を案内し、バスが出発すると視線を感じるを繰り返していました。


そして、その日の最後のバスの出発を見送った時、黒い服装をした男性が1人こちらを見ているのに気がついたのです。


私はバスに乗り遅れたお客様だと思い、本日のバスは最終が出てしまったことを、その方にお声掛けしました。


しかし、なんど呼びかけても、男性はじっとこちらを見ているだけで、なんの反応もありませんでした。

そのまま、事務所へと戻っても良かったのですが、何かあっては会社の責任にもなりますので、仕方がなく私は男性の下へと近づいたのです。

もちろん、声をかけながらでしたが、黒い服装の男性はまったく反応せず、じっと私を見ていました。


そして、私が男性の眼の前まで近づいた時、誰かが呼ぶ大きな声と、車が急ブレーキをかける音が鳴り響きました。


理由もわからずにいた私の目の前には、かろうじてブレーキをかけた車が止まっており、運転手が怖い表情をしてこちらを見ていました。


駆けつけた同僚の声で、我に返った私は車の運転手に誤り、同僚とともに事務所へと戻りました。

道すがら怒った口調で同僚に「1人でフラフラ道路に飛びました」と言われ、私は反論するために「黒い服を着た男性がいたことを伝えました。」


しかし、そんな人物などいなかったと同僚からは言われたのです。


あの男性はいったい何だったのでしょうかね?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る