第2話 運行2 10月5日


ご乗車ありがとうございます。

安全第一で今夜もバスを運転してまいります。


さて、今夜も私がであった不思議なお客様のお話しをいたしましょう。


それは雨が降っていた日のことでした。

1人の女性のお客様が乗車されました。女性のお客様は、比較的荷物が多くなる傾向があるのですが、雨の日はさらに荷物が増し、その方も同様でございました。


基本的に、キャーリーケースなど大きな荷物は、バスの下部に作られたトランクにてお預かりします。

しかし、件のお客様は頑なに手荷物としての持ち込みを希望されたのです。


もちろん、安全を考慮するとお預かりしたいのですが、手荷物を希望される乗客のために、座席には荷物をつなぐベルトが装備されております。


ですので、無理なお預かりはせず、ベルトの装着をアナウンスし、手荷物として持ち込みいただきました。


女性のお客様が、アナウンスに従いきちんと荷物にベルトを装着しているのを確認した私は、バスを出発させたのです。


高速に乗ってしばらくした頃でした、多くない乗客のほとんどが就寝されているなか、ぶつぶつと話し声が聞こえてきました。


声の主は件の女性のお客様でした。

あいにく運転席からは声の内容までは聞き取れず、あのお客様の妨げになるほどではなかったので、そのままバスを走らせ、休憩のためにサービスエリアに立ち寄りました。


すると、女性のお客様は荷物を持って降車されたのです。

まぁ、お客様個人の自由ですから、私から特段注意するものはなく、出発時刻までお戻りになったので、そのまま目的地に向かってバスを走らせたのです。


その間も、女性のお客様はぶつぶつと話しておりました。


そして、朝早い時間に到着したバスを降りて行かれたのです。


バスを降り際に、私ははっきりと聞いてしまいました。手荷物として持ち込まれた荷物の中から、「ワン」となく声を……。


原則、ペットの持ち込みは禁止しているのてすが、もっと早く気がつけばと思いましたね。





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