運行記録

遊bot

第1話 運行1 10月4日曜

今夜は、男性が3名、女性が2名、の計5名の乗客を乗せ夜道を走っている。


今どきの夜行バスは、防音カーテンを使った簡易の個室になるよう座席を区切り、心地の良いリクライニングソファーを倒して横になりながら移動ができます。


今夜のお客様も多くの方が、カーテンを締め切り、明日に備えて就寝しておりました。


そのなか、奇妙なお客様が一人いました。


そのお客様は男性の方で、乗客名簿には50代と記載されていました。

ああ、乗客名簿には年齢の他にお客様の名前や住所が記載されています。

といっても、乗車間違いの防止や有事の際に使用するものですが……。


とにかく、その名簿では特別変わったものなどありませんでした。


しかし、当のお客様を見てみると、失礼ながらとても50代の方とは思えなかったのです。

もちろん、お客様をまじまじと見るわけにもいかず、昨今の名残でマスクをされており、帽子を被っていましたので正確にはわかりませんでしてが、おおよそ20代、もしくは30代のように感じる方でした。


そのように感じたのは、見た目だけでなく、なんといいますか、立ち居振る舞いがどうもお若くいらっしゃったのです。


こればかりは、言葉では表しにくく、うまくお伝えができないのですがね。


ただ、乗車切符との照合もできましたので、不思議に思いつつもその方を乗せて、バスを走らせたのてす。


九州から大阪までの夜の旅です。途中、高速道路のサービスエリアでの休憩を1時間とりますので、実質7時間の所要時間となります。


ことが起きたのは、その休憩のために立ち寄ったサービスエリアでした。


サービスエリアに到着してのは、深夜1時頃でした。次の出発は、深夜2時になるのてすが、1時から2時までの案内をきちんとアナウンスしなければなりません。

1時から1時20までは、バスのドアを開放し、お客様に自由に乗り降りしていただきます。

そして、1時21分から1時50分までは、ドアを締め防犯のため施錠をいたします。

なぜなら、この間に私ども運転手がバスを降り、トイレ休憩や喫煙などを行うのです。

そして、1時51分から2時までに再びドアを開け、お客様に乗車いただくのが規定となっております。


件の男性のお客様も、サービスエリア到着後すぐにバスを降りられました。それだけでは、おかしな事はありません。なにせ、他にも2人ほどお客様がお降りになりましたので。

ただ、2人のお客様は21分までにお戻りになりましたが、件のお客様は戻られず、規定通りドアを締め施錠をし、私も休憩のためにバスを降りたのです。


そして、51分には再びドアを開け、お客様のお戻りを待っておりました。

しかし、2時を過ぎても男性のお客様は戻らず、そのまま30分を過ぎてしまいました。


まれに、あるのですよね。お客様が戻られないことが、時にはバスを間違えて乗車され、そのままサービスエリアを出られるケースがあるのですが、多くはその……警察の方が見つけられる事になるのです。


そのため、今回もそのパターンだろうと思い、バス会社に報告してから、大阪に向け出発したのです。


バスは到着予定時間を30分ほど過ぎて無事に到着しました。

行きは5人てしたが、到着時には4人になっしまいましたが。


長旅の疲れもそこそこに、大阪のバス会社へとバスを運び、帰りの運行までを仮眠を取ろうと、会社の寮に入りました。


寝る前にテレビをつけ、流し見をしていたときでした。

ニュースに、件の男性の名前があがったのです。

その内容は殺人でした。先日の昼間に男性は殺されており、被害のあった地域や年齢、そして名前が一致していたのでした。


そして、犯人とされる人物像を聞いて、私はゾッとしまして。

犯人の、年の頃は20代から30代でだったのです。


はたして、昨夜に乗車された男性は、いったいどなただったのでしょうか。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る