第4話
こんにちは、今回も宇治十帖の続きを書きたいと思います。
浮舟は異母姉の中の君が住まう二条院にしばらくの間、厄介の身になりました。母の常陸殿は浮舟を預けると慌ただしく、二、三日すると帰ってしまいます。不安の中で浮舟は過ごしました。
浮舟が二条院に預けられてから、しばらく時が経ちます。
ある日に中の君の夫である匂宮は、いつものように彼女の元を訪れました。が、生憎中の君は洗髪をしていたので会えませんでした。手持ち無沙汰な匂宮は自室に帰ろうとします。
不意に見慣れない
匂宮の目の前には、見慣れぬ後ろ姿の女性が現れます。匂宮は女性をなかなかの美女だと見抜きました。そのまま、いつものように足音を忍ばせて女性に近づきます。匂宮は新しい身分の高い女房だとばかり、思っていましたが。この女性こそが実は浮舟だったのです。
浮舟はいきなり、近づいて来た男性に驚きました。ですが、二条院の主人である匂宮だとは気付けないでいます。匂宮は、彼女が衵扇で顔を隠していたので見せるように言いました。仕方なく、浮舟は顔を見せます。彼女の美しさに匂宮は見惚れてしまいました。
無理矢理、抱きついて添い寝までしてしまいます。弱り、困惑しきった浮舟は成す術を得ません。万事休すとなった時に、慌てて乳母の君が駆けつけます。
「な、姫様に何をなさっているんですか?!」
「別にここは、我が邸だ。何をどうしようと私の勝手だろう」
彼のこの一言で浮舟も乳母の君も主人である匂宮だと気付きました。乳母の君は薫の君と縁談がある浮舟に手を出されたら、厄介だと考えます。そこで彼女はある行動を取りました。匂宮が手を出さないようにと見張る事にしたのです。睨み合う二人でしたが。
匂宮は乳母の君の手の甲を抓る真似までしましたけど、彼女も引きません。より、睨みを利かせます。そうこうする内に、中の君付きの女房が浮舟の部屋にもやってきました。乳母の君はこれ幸いとばかりに、女房に呼びかけます。
「こちらに不届きな方がいらっしゃいます、ちょっとよろしいでしょうか!」
「あら、どうかしましたか?」
女房は気づいて、乳母の君に問いかけます。彼女は説明をしました。それを聞いた女房は成程と頷きます。
「確かに、それは困った事態になりましたね。分かりました、中の君様にお知らせしてきます」
「お願いします!」
女房はすぐに中の君に知らせに行ってくれました。こんな事態になっては手出しができません。仕方なく、匂宮は退散しました。やっと、ひとまずは事なきを得ましたが。乳母の君はどうしたものやらと思いました。
この事はすぐに、母の常陸殿にも伝わります。中の君により、慰められた浮舟でしたが。常陸殿は匂宮に目をつけられてはたまらない、中の君にも申し訳ないと言って浮舟や乳母の君と一緒に二条院を後にしてしまいました。三条にある建築途中の邸に浮舟は居を移します。
しばらくは寂しく暮らしていた浮舟でしたが。彼女が仮屋に居を移したと聞いた薫の君がある日に訪ねてきます。
慌てた周りでしたが、薫の君は浮舟と再会したその日の夜にこの仮屋に泊まりました。浮舟は薫の君と一夜を共に過ごします。
翌朝、薫の君は浮舟を横抱きにしてそのまま、牛車に乗り込みました。周りはやはり、慌てふためきますが。機転を利かせて侍従の君という一人の女房と弁の尼君が付き添います。薫の君は浮舟を自身の膝の上に乗せ、一路、宇治へと向かいました。
二人が並ぶ様子に弁の尼君は涙ぐみます。まるで、大君が薫の君と寄り添っているようだと思っての事だったのですが。事情を知らない侍従の君は「涙ぐむなんて。こんな時に縁起でもない」と言いました。
浮舟の着ていた衣装の裾や薫の君の衣装の裾が朝霧で湿り、色鮮やかだと本文にはあります。
こうして、浮舟は宇治に移り住むのでした。
夜になり、薫の君は浮舟に
「あなたは元々、東国育ちだと聞きました。この
「……その東琴に似合わぬ育ちでございますので」
浮舟はそう言って、やんわりと断ります。薫の君はこんな返答もできるのだなと歓心しました。が、こんな場面でも大君ならとつい、彼女と浮舟を比べてしまいます。やはり、顔がいくら似ていても浮舟は別人なんだと薫の君は悲嘆に暮れました。弁の尼君から、文が届きます。
浮舟の君とはその後、どうしているかとありましたが。薫の君は返事に「いくら、顔が似ていても。やはり、違う人なのだな」と言う意味の和歌を送ります。
それではこれくらいにしますね。ありがとうございました。
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