第3話
今回は、宇治十帖の続きを書いてみます。
以前は、薫の君や大君との出会いや別れまでを書きました。この回では浮舟との出会いからを書いてみたいと思います。
薫の君は大君を亡くした後、喪中であった女二の宮のいる藤壺に今上帝から招かれました。囲碁の相手をしてほしいと言われたのですが。
これは口実で、実際は「女二の宮と結婚せよ」という今上帝からの依頼の意味がありました。薫の君は代わりに菊の花を賜り、承諾しますが。
結局、女二の宮との結婚に浮かない気分の彼ではありました。
こうして、二の宮の喪が明けて二人は結婚します。薫の君もなかなかに美しい人だと思いました。二の宮はどう思っているか、分かりませんが。二人はしばし、新婚生活を過ごすのでした。
薫の君はしばらくして、中の君のいる二条院を訪れます。中の君は二人きりにならないように気を使い、常に女房を近くに控えさせていました。それには気が付かぬ振りをする彼ですが。そんな薫の君に中の君がある日、信じられないことを告げます。
何と、亡くなった姉の大君に驚く程にそっくりな姫と会ったと言うのでした。中の君は薫の君に、「恐らくは腹違いの姉妹だ」と匂わせます。俄然に興味が湧いた薫の君は宇治にいる弁の尼君の元を訪ねました。
弁の尼君は薫の君から、事の次第を聞きます。そうして、八の宮の過去について語り出しました。
八の宮は北の方――正妻を亡くした後、秘かに情を交わした女性がいたとか。彼女が後に生んだのが、異母妹の姫であったと尼君は言います。その話を聞いた後に、薫の君はこの姫を垣間見ました。要はこっそりと覗き見たのですが。
この時に、姫の名も聞きました。彼女は浮舟と言いましたが。薫の君は浮舟を覗き見た瞬間、驚きます。
あまりにも大君にそっくりだったからでした。生き写しと言っても良いくらいにです。大君が生き返って、戻って来たと勘違いするくらいには。
薫の君は弁の尼君の元へ戻りました。
尼君に、薫の君は「あまりにそっくりだから、驚いたよ」と言います。尼君は笑いながら、相づちを打ちました。
その後、浮舟の視点になります。浮舟は実は八の宮に認知されていません。だから、実父が亡くなった現在は母の中将の君の再婚相手である
母の中将の君もとい、常陸殿は浮舟が年頃だからと気を使ってこっそりと縁談を探しています。再婚相手で夫の常陸の守にも内緒にしていました。
最初は縁談の相手である少将も乗り気でしたが。ちなみに、この少将は元は父が参議の職をしていたと言う家の出身でした。常陸殿も彼なら、浮舟に見合う身分だからと思い、話を勧めていたのです。
けど、ある時に少将に良からぬ事を吹き込む人物がいました。
「常陸の守の娘だって?君が結婚しようとしているのは、義理の娘だと聞いたぞ。確か、実の娘はまだほんの少女だとか。まあ、義理の娘の方はさる高貴な方の血筋だとは聞いたが」
それを耳にした少将は騙されたと思いました。実は彼は、常陸の守の財産が目当てでこの縁談を受けたのです。けど、浮舟が常陸の守と血の繋がりがないなら、財産は受け継げません。さて、どうしたもんかなと少将は考えます。浮舟が常陸の守の実の娘でないと言った人物は「だったら、実の娘に乗り換えたらいいじゃないか」とまで言ったのですね。少将は浮舟との縁談を断り、実の娘の方に本当に乗り換えてしまいました。
愕然とする常陸殿や浮舟達。乳母の君も憤慨します。仕方なく、常陸殿は「本当は頼む筋ではないけど」と言いつつ、異母姉の中の君に文を出したのでした。
こうして、中の君が住まう二条院に浮舟は常陸殿や乳母の君を伴って赴きます。けど、浮舟がこれから辿る波乱万丈な運命をまだ、誰も知る由もありませんでした。
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