EX② 彼も会社には敵わない 


 配信が始まった。

 レイナのチャンネルである「サクラトリップ」のサブチャンネル「三日月ルーム」で。

 配信タイトルは【悲報】伊達D、会社に晒されるってよ!【パワハラ案件】である。


 ちなみに三日月ルームは、ダンジョンとは関係ない告知動画や日常系コラボ動画などを投稿する目的で作られた。

 が、現在では伊達Dの遊び場みたいなもので、多方面の知識に造詣が深い彼による、娯楽系動画が多い。

 名前の三日月に関してはレイナが「伊達って言えばマサムネっしょ!」という安直な連想で決まった。

 なお伊達の出身は北海道の十勝地方にある帯広市なので縁もゆかりもない。


:ほのぼのやねえ

:井の頭公園草

:癒されるねえ・・・・

:殺伐とした時代にこの癒しは貴重

:お、富士山スカっと見えますな

:何台カメラ設置してんだよwww


 そう、配信は開始されたが特に伊達が喋る事もなく、彼が住むマンションのベランダから、真横にある井の頭公園を映していたと思えば、小まめにカメラをスイッチングし、相模湾に浮かぶ富士山や、東京都心部の摩天楼を映している。

 とは言えマイクは繋いでいる様で、声だけはする。


『いや僕ぁ裏方なんでね。オッサンの顔に需要なんて無いですよ』


:この前のレイナのオッサン発言効いてて草

:気にしてたのかwwwwww

:むしろ需要しかないんだが?

:伊達Dの単推し勢結構多いんだけど

:かくいう私も伊達推しでね オッサンだけど


『はぁ社長からのお達しもございますので仕方無いですね……では移動しますので もうしばらく富士山の映像をお楽しみください』


 そして数分後、藍色で光沢のある豪奢なスーツ姿の伊達が映った。

 背広が好きな彼が銀座にある老舗の仕立て屋のフルオーダースーツだ。

 彼は常連で、店には彼の型紙や肉体そのものをスキャンして作ったトルソーが置いてある。


 そんな彼が坐る目の前のテーブルには数台のPC。

 上からは複数のモニターがぶら下がり、背後の壁は全て本棚になっていて、空きがない程に書籍やレコードなどが埋め尽くしている。

 その反対側には所狭しと機材の山。

 そして傍らにはギタースタンドがあり、ギターやベースが数本見える。


:ファッ!?

:え、ちょ、かっこよ

:これどこ? うわテレビ局とかにありそうな編集機材だらけや

:これ自宅か? 

:自宅ならエグすぎんだが


「はい、では生配信では初めて顔を出します。株式会社ドリームファクトリー所属の伊達正嗣と申します。サクラトリップやこちらのチャンネルでは声の出演はしておりますが、良かったら今後も弊社、並びに弊社所属タレントのお引き立て等よろしくお願いします」


:ザ・会社員!

:そう言えばそうだったわ

:普段フリーダム過ぎて忘れてたわ


「酷いですねぇ。さて部屋ですが、私は社員なんて申しておりますが、正確には会社の共同経営者と言う立場でございます。便宜上社員の体ですけど、役員ですので給料はなく役員報酬と言うスタイルですね。とは言え、会社の業績はよくとも、零細企業ではありますので、役員と言えど抱えている仕事は多いです。その為、弊社では役員に与えられる住居はかなりキャパが大きいですね。それは自宅で編集などを行えるようにという意味で。特に告知等はしてませんが、チャンネル内で流れるSEや楽曲は全て僕が自分で作ったものです。著作権関連での許可取りがほんとーーーに面倒臭いので、作った方がストレスが軽いという事です」


:ファーwwwwww

:情報量が多いwwwww

:え、曲全部作ってんの!?

:エンディングで流れる二分の一の夢旅人めっちゃ好きなんだが!?

:サブスク化してよ!


「お褒め頂き嬉しいですね。あの曲はですね、作詞作曲は僕で間違いないんですが、歌ってるの誰か分かります? ではクイズです。正解が一人でもいれば著作権フリーでDL配布します」


:マ!?

:あの鼻にかかった様な声すこなんだ

:DFのほかの配信者とも違う声なんだよな

:最初はレイナかと思ったけど違うしな

:うーん、新人・・・じゃあねえよな

:わかんないよぉ・・・・


「はい、では締め切りますね。残念でした。という訳で答え合わせをしましょうか。では画面に注目ください。切り替えますよ?」


 そう言って伊達は配信画面をマックのデスクトップに切り替える。

 そこには見慣れないグレー背景のインターフェイスがあり、白いボックスの中には、近未来的なコスチュームを着た、桃色の髪の少女が色々なポーズをしているのが見える。

 恐らく3DCGなのだろうが、髪の毛のディティールが恐ろしく高い。


「これは僕が自作したソフトですが、ボーカロイドあるいはボイスロイドの春風はるかぜ桜花おうかと言います。これはマイクによる入力で声圧、音程、抑揚などを正確に読み取り、設定したマシンボイスに変換します。勿論従来のテキスト入力も可能ですが、基本的には音声を読み込むのがメインの使い方になります。ですので例えば……『私、春風桜花ですっ、みんなよろしくね! 春に生まれた私は、梅の花が大好きなの。どうして桜じゃないのかって? しーらない♡』……よし、じゃあこれで出力っと」


『私、春風桜花ですっ、みんなよろしくね! 春に生まれた私は、梅の花が大好きなの。どうして桜じゃないのかって? しーらない♡』


 桜花の3Dモデルが可愛らしいポーズを取りながら喋った。


:やば

:マシン感一切ないんだが

:えぐ

:伊達Dの低温ボイスが一瞬でロリ声に!?

:え、ワイいっつも声の調教で泣きそうになってのに・・・


「そんな訳で答え合わせをすれば、僕の楽曲のシンガーは全て桜花がやってます。そして声はうちの社員やタレントさん、全員の声をサンプリングしてますので、延べ、50人分くらいかな? 僕のも入ってますしレイナのもあります。これをね、全部混ぜてます。その上でカラーコードのグラデーションの様に、ポイントを指定した場所の声が造られるという感じです。なので公にしないのは、AIでの作画の様に、著作権法にどこまで引っかかるか、その判断が出来ないからですねえ。恐らく桜花の声紋や声質と類似性のある人はいないとは思いますが、グレーならやらないがモットーなので」


:おお・・・

:そう言えばこの人東大工学部で量子コンピューターの研究者やってたんだっけ

:いつもの畜生ムーブで忘れてたわ

:草


 そんな風に流れるコメントを眺めていた伊達だが、今度は画面を左右に二分割した。

 左には桜花の全体像。右には伊達が直立不動で立っている姿。

 彼はスーツのジャケットとベストを脱ぎ、シャツも脱いだ。

 するとインナーだけになるのだが、光沢のある黒いノースリーブで、彼の上半身の筋肉の状態が綺麗に浮いている。

 すると一瞬コメント欄が大騒ぎになったが、リスナー達は伊達の次の行動に唖然としてしまう。 


 ユーロビート風な4つ打ちのBGMが流れると、伊達が無表情のままパラパラを踊り始めた。

 それは中々に堂の入ったダンスだ。

 

「桜花が踊っているのしょ? 僕の動きをリアルタイムでスキャンした上で出力している訳ですが、要はコレ、Vtuberをやる際に、このアプリだけで全て自己完結するために開発したんです。ボイチェン機能は見ての通りですし、モーションキャプチャーに関しては、特にセンサーを装着することなく、特殊なカメラを連動する事で、ほぼ誤差なく動きが再現されます。で、皆さん注目。上半身を捻る動きを連続しますので、桜花のバストやウエストの動きを見てください!」


:やばばばば

:えぐ・・・筋肉と骨の動きがヌルヌル過ぎて笑えない

:え、これ既存のVの環境全否定するんちゃう?

:よく見りゃ桜花ちゃんの髪も1本1本存在してるんちゃう?くらいのディティールやんけ

:どんなエグいスペックのPCで動かしてるんだよwwww

:それな


「ところがコレ、この前ぶらっと秋葉原に行って、例のショップで組んだPCなんですよ。総額は確か15万円程です。一番リソースを割いているのはGPUとSSDくらいなもんで、CPUはクアッドコアの安いやつ。3万くらいかな? この手のソフトウェアって汎用性が無いと意味ないんですよ。僕がメインで使っている開発機は1年前に組んだんですけど、200万円弱くらいです。ちなみに横に映っているパワーマックは500くらい。ガチの奴はその位普通にしますよね。だから開発こそこっちでしてますが、動かすのはその程度のスペックで問題ないです。まあ熱の兼ね合いでスペックは満たしていてもノートはオススメしませんが、概要欄に……はい、今このPCのパーツ一覧をアップしましたんで、これと同程度のデスクトップなら動きますね、はい」


 そう言って伊達はBGMを止めると、最後はレイナが戦闘中にやる決めポーズをいくつかマネをした。

 桜花がそれをトレースし、それをループさせると配信画面の右下に、小さな桜花をオーバーレイさせた。


 そして伊達はまた脱いだスーツを着込み、椅子に座った。

 

「という訳で、プリセットされているボイス関連のデータは抜いて、市販のボイスロイドなんかに紐づけすると同じように使えるくらいに機能を絞ってからなら、そのうちコレ、配布してもいいかもなあ。でも流石に同業他社に使われるのは利敵行為とか言って社長にシバかれるので、今作ってるDFの総合アプリのサブスクで公開しようか。あ、やば、これまだ言っちゃダメな奴でした。月額300円と安価ですよ! とかもまだお漏らししちゃダメだったぁ」


:wwwwwwwwww

:棒読みで草ァ!

:なるほどサブスクやるのねwww

:300円なら全然やるけどwwww

:え、それでこのソフト使えんの? やば

:雑な匂わせやめろwwww


「まあそうした方がライセンスキー関連で悪用をされ辛いですから。流石に今の世の中、性善説を前提に動くのは難しいですからねえ。けど個人的には大昔のネットみたいに、アマチュアのクリエイターがアクティブに動いて欲しいんですよね。その為のおもちゃをバラまきたいってのはあるんですよ。例えばそう、旧時代のMMDの様にね。あのクリエイターは素晴らしいですよ。SNSがまだ主流じゃない時代だからこそバズったってのはあるかもしれません。でもね、イージー過ぎるのはつまんないんですよね。ユーザーがあれこれ頭捻って遊んで欲しいというか。その結果生まれる制作者の想定外の動きが面白い」


 そう言って伊達は画面にMMDを立ち上げレイナだろう自作モデルを呼び出した。

 そして何となくボーンを動かして遊ぶ。


「例えば毎日の自慰のオカズなんてさ、君ら違法割れサイトとかでサクっと見てるでしょ。あーいいんです、返事はいりませんから。でもね、ドキドキしながら他人の目を掻い潜り、AV専門店でインディーズAVの掘り出し物をスコップしたら最高じゃないですか? その煩わしさを経て、何かを生み出す悦びを復興したいんですよ僕ァね。だからそのうちこれ公開するんで、それを使用して作った作品のコンペでもしますか。優勝者にはそうですね、レイナさんに好きなセリフをASMR録音してもらってプレゼントとかどうです?」


:わ、割れとか知らんし(すっとぼけ)

:知らなくてもいい真実を暴くのはやめるのです

:うおおおおおおおおおおっ

:すげーーーーー

:なんそれヤりたい♂

:えレイナより伊達Dのがいい

:伊達Dに乙女ゲー的なセリフ入れて欲しい

:うおおおおおおお伊達Dちょっとお尻触らせなさいよ!

:やべーのワラワラで草

:この世の地獄やめろ


「とまあ歌の件で随分と話が脱線しましたが、そもそも今日の趣旨を言ってませんでした。傾聴くださいな。えーっと大変不本意なのですが、弊社CEOより”私の個人情報をバラしやがって。絶対に許さない。ミクに会いたければ、罰として三日月ルームで月一で生配信しろ”だそうで。はぁ、僕ァ裏方なんですがね……」


:wwwwwwww

:社長根に持ってたwwww

:レイナはメス顔出して始末書&減給で伊達Dは顔だし命令wwwww

:信賞必罰は優れた経営者の資格云々

:月一でも伊達D見れるのうれしいんだが

:それな


「という訳で事前にツブヤキの方でマシマロを募集しておりますので、初回はまあ、ベタに質問に答えます。という事で最初のマロ。伊達Dさんは相当戦えるように見えますが、実際どの程度なんでしょうか? 出来れば戦闘スタイルや装備、ジョブについて言える範囲で教えてください、だそうです。うーん、これなー、うーん……」


:めっちゃ悩んでいるw

:顔のいい男のアンニュイな表情たまらん

:何か会社的にダメとかあるのかね?


「あー会社的な守秘義務はないんですけどね、まあワーカーのランクについてはノーコメントでお願いします。ジョブに関してはご存じの通り、マスターソーサリーですね。熟練度はそれなりに高いです。後は察して欲しいですね。うーん、魔法系ジョブなのは単純に、社長に食わされたジョブ魔石のせいなんで、僕が選んだわけじゃないです」


:社長鬼畜で草

:大学時代からの力関係が見え隠れしてますね・・・

:お前器用そうだから魔法職な!石グイー

:暴君やんwwww


「まあ暴君ってよりあの人はリアルのギフテッドなんで、IQも計測不能とかでしたね。なので常人とは思考のアルゴリズムが違います。いい事を教えますね。天才児って別の生物なんですよ。なのであなたの常識に合わないのは当然で、その人を自分の常識に合わせようとすると確実に失敗します。オルフェーブルに対してのIKZE騎手のアプローチが正しいでしょうね。最低限アレです。つまりはそう言う生き物だと理解した上で、自分達なりの距離感を構築しないと駄目です」


:IKZEはホンマ草なんよ

:けどスーンって理解できたわwwww

:なるほどオルフェに新人騎手が無理やりいう事を聞かせようとする噛まれる振り落とされるって事か

:IKZEは頑張っても落とされてましたが・・・

:大丈夫、怖くないわ→黙れ(ガブー)

:あーもうめちゃくちゃだよ


「ただまあ魔法と言われましても、これでも僕、研究者でしたから、合理性とかロジカルって言葉の信奉者でして、フワっとした魔法が気に入らないんですよ。だからイライラして、あの疑似無詠唱が生まれた訳です。なので装備に関しても、ショットガンとマチェットがメインウエポンですが、とりあえずこれ以上重ねると爆発四散するギリギリのラインまで付与魔法を刻んでます。ちなみに悪用されると困るので、詳細は伏せますが、あのショットガンのバレル内には、雷魔法に指向性を持たせて何重にも刻んでまして、あの短さでレールガンの様に超加速をさせてます。今度、コインでも撃ち出して、どこかの第三位の再現でもしてますかね」


:旧式の武器で超威力とかロマンがすぎる

:だがそれがいい

:中二詠唱するよかクールだわ

:レールガンとかwwwえ、マジ?

:だからあんなエグい音してたのか・・・

:これが私の全力だー!(野太い声)

:wwww


「まあそうです。昔はノリと勢いでワンオフ装備を作るのにハマってまして、結果、日本ダンジョン協会、ひいてはダンジョン省の方々にお叱りをうけまして、私の開発した武器の殆どはライセンス制が適用されてます。つまりはお上に所持装備が全て把握されてます」


:うせやろwwwww

:ただのマッドやんけ!

:公安にマークされてそうで草

:誰だこいつを野放しにしたのはww


「レイナさんにもね、最初は銃を使いましょうよとオススメしたんですがね。これ見てくださいよ」


 そう言って伊達は何もない虚空に突然手を突っ込むと、二丁の大型拳銃を取り出しテーブルに置いた。

 ゴトン……と重量感のある音が響く。

 白と黒の全長40センチはあろうかという大型拳銃。


「これをレイナさんに装備してもらい、ダンスの様に動き回るガンカタ的なムーブを配信で……カッコよくないですか? やはり美少女と銃の組み合わせは最高です。まあこれ、持てなかったんですけどね、重くて。重量が15kg前後なんですが、中に仕込んだギミックの関係で、これ以上軽く出来ないんですよ。いやー残念」


:それは間違いなくかっこいい

:ガンカタいいよなぁ

:でもその銃はアウトだと思うすごい既視感あるからwww

:パーフェクトだ伊達……

:感謝の極みってばかやろうwwww

:という事はその銃は伊達Dが使ってんの?


「昔は使ってましたよ。ワーカーデビューした頃に遅れて来た例の病を発症したようで。とは言えこう見えて僕もモヤシ系男子なので、今は使ってないです。え? 腹筋すごいですか? 魅せ筋なんで見掛け倒しですよ。陰キャの理系人間にそっち方面を求めないでください。使わない理由は重たい銃を振り回す為に、魔力のリソースを身体強化に多く割り振らなきゃなのでコスパが悪いんですよぉ」


:ええ・・・

:コスパてwwww

:このイケメンがよぉ・・・・

:そのガチガチ筋肉で謙遜がすぎるwww

:カッコよさ全振りは理解できる

:遅れて来た中二病は草


「イケメンを自称した事はないですが、もし僕がイケメンだとしたら文句は父親にお願いします。DNAの問題なので。誤解をしないで欲しいのですが、元々の僕は怠惰な人間ですよ? 恐らく貴方方と同類です。あのね、桜花さんを作ったの大学3年の時ですよ。それで僕、AIの研究してましたので、自立型AIを仕込んだ桜花さんを動かして、まるで中の人が居る様にVタレントとして稼働させようってのがあのソフトを作った動機です。それで無事バズったらどんどんキャラを増やして、箱っぽいのに実は個人でしたみたいな感じで、濡れ手に粟で稼ぎつつ、その上前ハネて悠々自適の人生を企んでたんですよ。それがあの悪魔め……くそァ……」


:呪詛漏れてて草

:正体現したね

:動機が不純すぎるwwww

:濡れ手に粟は草

:有能さを与えてはいけないタイプに人間に備わった有能さ


 そこで伊達は興が乗って来たのか、無意識か、バッグから電子タバコを取り出しプカリとやり始めた。

 どうやらイライラしてきたらしい。

 この男、仮面はいくつも持っているが、素の彼は割と情緒不安定な所があるようだ。


「まあね、僕ぁこれでもね、会社に尽くして来た人間ですよぉ。わかりますか? ダンジョン配信なんてねぇ、Vタレントよりも飽和した業界なんです。レイナが女性D配信者としての草分け的存在になりましたが、だとしても男性D配信者は星の数ほどいましたし。女性だってそこまで上位ランクではなくても、複数人のユニットでドル売りは多かったでしょう?」


:伊達Dイライラで草

:いらん事いいそうでワクワクしてきたwww

:当時の人気配信者だと六車とかルイルイとかか

:レイナくらいの勢いはあったな確かに

:Dワーカーの上澄み=男性Dタレって構図は確かにあった

:ドル売りユニットだと可愛さ全一で上層階でわちゃわちゃが当たり前だったよな

:それはそれで需要はあるんだけどな


「問題はですねぇ、僕をこの業界に引きずり込んだ女がねぇ、さっさと現場から逃げ出してねぇ、結婚するわ子供作るわ。これは酷い裏切りですよぉ? あームカつく。ミクちゃんいなかったらレイナ連れて同業他社に移籍してやったのにねぇ!」


 伊達がキッとカメラを睨み、バンッ! とテーブルを叩く。


:ワロタ

:【悲報】敏腕ディレクター下克上を企んでいた

:マジギレ草

:そなたもこちら側の人間だったようだな・・・

:突き抜けたイケメンから漏れる中間管理職の悲哀

:社員への待遇がいいだけにタチが悪いDF社wwww

:し、CEOはガチの財閥の当主だから責任が・・・

:伊達「そんなもん関係ないんですよぉ!」バン


 と思えば急ににへらと薄ら笑いを浮かべる伊達。


「そう、ミクちゃんです。あれは天使です。時折教授の家にお邪魔してね、ミクちゃんの好きなシュークリームを手土産に家にお邪魔すると「お兄ちゃまっ!」って言いながら駆け寄ってくるんですよぉ……ああ^~これであと100年戦える、そう思ってます。なのにあの女と来たらっ!」


 途中で怒りの表情になり机を叩く伊達。

 情緒が不安定すぎる。


:鬼の形相wwww

:【悲報】敏腕ディレクターの有能さの理由が幼女

:幼女でしか得られない栄養素があるのです

:幼女の笑顔が難病に効くと聞いた

:伊達Dわかるぞ

:お前がナンバーワンだ

:ロリコンわらわらで草

:犯行の自供はやめてもろて


「そらねDF社の立ち上げメンバーですから、会社の為にやりますよぉ。仕事は好きですから。けどねえ、忙しいんですよぉ。わかります? 配信と編集だけじゃないんですよぉ。経営会議に営業に交渉。経営陣の仕事はね、多いんですよぉ! あの女はねぇ、本体の仕事ガーとか言って普段オフィスにいないですからねぇ! 僕ァねぇ実質社長って社員から言われるんですよぉ……僕ァね、不労所得でぬくぬくしながら面白武器を作ってミミズの様に生きていきたいだけなんですよォ……」


:悲しいなぁ・・・

:ホンマに俺らと思考一緒で笑う

:実質社長は草

:本音がニートのソレで草

:wwww

:有能だから使い倒されるの草枯れるwwww

:有能に生まれた不幸を恨むがいい!

:人間何事も適度でいいんやなって


 こうしてCEOリョーコから命じられた伊達の生配信は、途中から伊達がビールを呑み始め、半ば彼の愚痴を垂れ流すだけのカオス配信へと変化。

 最終的にリョーコの娘のミクちゃんの可愛さを説明する講義となり、愛らしいミクちゃんを推す為に一生結婚しない宣言をしたが、こっそり配信を見ていたらしいレイナが本垢で病んだコメントを連打。

 様子を窺っていたDF社員の判断により、配信は強制的に終了と相成ったのであった。


 とは言え普段のクールな伊達の化けの皮が完全に剥がれた事は、サクラトリップのフォロワー達には大歓迎だったらしく、醜態をさらした伊達の切り抜き動画が拡散され、後日彼の胃にダメージを与えたという。




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