一章 顔のない女の写真

第2話

 家族が詐欺をしていたらどうする?

 

 今一番の、自分の人生史上最大の問題に彼女は直面していた。

 自分の家族が、いや、家族と言うにはギリギリの位置かもしれないと、関柴美幸(せきしばみゆき)はギリギリの位置にいる夫の弟の作った大根と人参のみそ汁を今日もどうしようもない気持ちで啜った。

 この義弟の名前は関柴真智(せきしばまち)。地元では有名な大きな寺の次男坊である。

 近所のお年を召した奥様方からは親しみを込めて、『はずれの次男坊』の愛称で愛されている。今年で三十三。結婚はしていない。彼女はいない。ついでに友達は一人しかいない。最終学歴、美容だか被服だか洒落た系の専門学校卒。職は点々、なに一つ長く続かない。特に東京からこちらに帰ってきてからは、職に着く様子はからっきしなかった。

 やっていることと言えば、寺の雑用と家事手伝い。母親の方は庇うようにとても助かっていると言うが、現住職の嫁、つまり彼にとっては兄嫁にあたる美幸さんからは冷ややかな目をいつも向けられていた。

 しかしなにも彼女だって無職で実家に身を寄せているこの夫の弟の存在を、純粋に疎んでいるわけではない。誰もやりたがらない寺の掃除や墓場の手入れなどの仕事を率先してこなしてくれるし、力仕事がなにかと多い寺の仕事において気軽に頼める立場にいる男手はとても重宝していた。無理に職につけとは思わない。何処かにひっかけて過去に負った傷がけまだ痛むこともあるだろう。なにか別に兄嫁には到底言えないような深い事情があるかもしれないし、寺の仕事ではなくても義母のように確かに助かっている面だって少なくない。このみそ汁だって、おいしいのだから。

 だが、それだけでは彼の株をカバー出来ない問題が一つ、存在する。

 それが先ほど悩んでいた『家族が詐欺をしていたらどうする』に繋がるだ。

 彼は今、実家に戻ってきてこの数か月、数件の詐欺を働いている。それも寺にかかわる人間にも関わらず、霊感商法詐欺を。

 彼の副業で動画配信をしているのだが、その謳い文句が、『心霊現象解決系お悩み相談動画配信』。

 なんと胡散臭い名称ばかりが並んでいることだろうか。

 そんな中でもなんとか信ぴょう性を出すために、自分が本物の僧侶であるかのようにこの寺を出している。寺の名前こそは出さないが、特定に至るものは少なくない。未だに波風が立っていないのは純粋に彼の動画の人気のなさのお陰だと言えるだろう。

 寺の名を語って配信した末に霊感商法詐欺だなんて、一体なにを考えているのか。普通なら、美幸の旦那である住職や前住職のご両親が叱り改めさせる案件なのだが、三人とも『動画』たるものかなにか知らないほどの機械音痴。

 はずれの次男坊が東京で居酒屋店長を辞めてなにもない田舎に帰って来て、彼の将来を口うるさく心配する親兄弟を気怠く捌き「定職なんて考えが古い。今は自分で仕事を作る時代だ」と、豪語し、始めた動画配信チャンネル。家族たちには困ってる人を救いたいだけ。やってることは寺と変わらないと嘯いていた。それで機械だとかよくわからない三人はめんどくさいのかそこで納得してしまったのだ。

 しかし、この寺の中で唯一時代に疎くない大人である美幸はこっそりと彼のチャンネルを見てしまった。

 携帯の画面の向こうには、なんとも目も当たられない現状が広がっているではないか。

 それは一言で言うと、詐欺に近いものだった。いや、彼女の中では最早詐欺だ。

 特に不思議でも何でもない相談に、根拠のない心霊認定を行い除霊と称して飛び飛びの経を唱えたり、破っ! と、叫んだり、先日どうも減りが早いと訝しんでいた食卓の塩を撒いたりして、一般人にとっては出せないわけでもない程度のやや高額な金を報酬として受け取っている。

 これにはご近所のマダムから『箱入りお嬢様の嫁』の愛称で親しまれている世間知らずな美幸さんだって、この行為が非常によくないものだと言うことがわかる。なにより、自分のPRとしてこの寺をモザイク入りとはいえ、映っているのが一番まずい。自身はこの寺に所属していて、日々こんなことをして霊気を養い、そんなことを言えば美幸や義母たちだって霊気が養われてしまうわけだが、この修行により悪霊を断ち切る能力を開花させたのだ、と。いやにリアルに密着したPR動画は全て嘘ではないだけに、この寺の関係者であることを色濃く主張してくる。そのお陰で、いつご近所のマダムたちにバレてしまうか彼女は常に冷や冷やしているのだ。

 ただでさえ、檀家が減っているといつも嘆いている義両親に小言を言われていると言うのに。

 この動画のせいで今いる檀家が更に減ってしまったら、どうするのか。

 本来なら、彼女は彼を止めるべきだ。彼を止めるために夫や義両親に話さなければいけない。しかし、彼女にはそれをやるためには随分と勇気がいる立場にいた。夫や義両親と不仲なわけではないが、どうしても気力が必要なのだ。

 残念ながらその気力というものは昨日今日とでるものではなく、今日もでないままである。こうして、また一日、また一日と彼女は一日を過ごして余計に話し出すのに気力がいる状態となっている。

 知っていて長い間放置していとしれば、彼女だって無罪じゃない。

 その悩みに美幸は頭痛を覚えるのだ。お陰で自分では絶対にしない鰹節から出汁を取ったみそ汁の味が、よくわからなかった。

 

 そんな美幸の心配を真智は知っているが、直接なにも言わない、誰に言いつけるわけでもない彼女を彼は気遣うつもりはなかった。

 

 人数分の茶碗を洗い、姪っ子を大通りの通学路まで送り届け墓場のゴミ捨て場を片づけて、漸く休憩だとばかりに馴染みの苦さを口に咥え火をつける。

 小学校に上がる前から、寺の手伝いは義務だった。十数年離れただけでは忘れようもないぐらい寺の仕事は真智のからだに染み付いている。若い頃はこの地元を、この実家を忌み嫌っていたものだったがこの歳になればそんな些細なプライドも顎の髭よりも生えてこないし長くならないことに気付いてしまった。ほとんどのことは苦ではない。体に染み付いた動きに意識を飛ばして動くのは楽以外になかった。ずっとここで働いてても構わないと思うぐらいには今の彼にとって彼にとって実家の仕事は天国だったのだ。

 けど、金が発生しないのだけは頂けない。

 真智は白い煙を吐き出しながら携帯でDМページを指先で弾く。

 仕事は楽な方がいい。人類全ての共通の夢だ。やりがい、挑戦、自立、社会貢献、人に求められるすばらしさっ! そんな綺麗事でどれだけコーティングしても、口の中に入れれば簡単に剥がれてしまう。

 楽な仕事なんてない。と、くだらない名言を聞いたことはあることだろうか。

 見ている分には簡単な仕事でも、いざやってみると大変である。実に真理だ。楽で簡単に稼げると勧められた一日中何も考えずに棒を振っている仕事でも、手が辛かったし途中雨に降られて顔を濡らす都会の汚い雨に心が折れた。もう二度とやるものかと心に誓うのに一日すらも必要なかったぐらいだ。

 ここで注目すべき点は、真智のメンタルが弱い強いではない。誰かの簡単は自分の簡単じゃないということ。つまり、自分にあってない仕事を人はいくら動かなくてなにも考える必要がなくても、決して楽だとは思わないのである。

 だが、自分に合った仕事につけてばなに一つ苦はない。と、いうことでもない。

 仕事には必ず、悩みというものがついてくる。それは仕事の責任だったり、仕事の発展だったり、自他の能力値だったり、人間関係だったり。どうしても百八では到底足りない悩みが出てくる。一定数、悩むのが好き、または悩むことは進化する兆しであるという悩み教なるくだらない宗教の信者たちもいるが、真智の入ってるそんなわけないだろ教は常にそんなわけがないだろうと思っているのだ。

 では、関柴真智にとって楽な仕事とはなにか。

 悩みだろうが、なんだろうがなにをやっても脳みそ一ミリも動かさなくてもいい仕事、である。

 それの一つがこの家事手伝い。過去の負の遺産だが何も考えずに体が勝手に動くのは実に楽だ。人間関係といっても家族だけ。気を揉む必要などどこにもない。

 そして、もう一つ。

「おっ。来てるじゃん」

 真智の指が新着メッセージありと書かれている『心霊現象解決系お悩み相談』のDМページを開く。

 心霊現象解決系お悩み相談。周りには副業と言っているが、真智にとってはこれこそが本業だ。

 実家の手伝いで金銭は一円も発生しない。こんな無体な話があるかと切れ散らかしていた日々が懐かしい。あの時は人生に疲れきっていて頭が働いていなかった。

 だが今は違う。その事実を受け止め、考えた方を変えた。こちへの支払いはないが、実家への支払いは出来ている。つまり、実家の手伝いは家賃、食費、光熱費代を金で払う代わりに肉体労働で支払っているのだ。そう考えを切り替えると、今の自分には悪くなかった。逆に現金で払えと言われた方が随分と困る。現に坊主の癖に地獄の閻魔も裸足で逃げ出しそうなぐらい厳しい兄が生活費は一度も真智には要求してこない。おそらく、向こうもその気なのだろう。ここにいる限りは自分の喰いぶちぐらいは自分で作れ。自分のケツは自分で完全に拭き取れと同等なぐらいに、兄の好きそうなな言葉だと反吐が出る。

 だが、文句がないわけでもない。人間生きるためには必要最低限の生活費では足りないものがある。自分が人間であるために、交遊費だって必要だ。

 となると、実家の手伝い以外で金を調達する必要がある。しかし、もう真智は働くのが飽きてしまったのだ。転々と変えた職業はどれもつまらなかった。つまらないし、真智の掲げる楽さはどれにもない。それが嫌で実家に帰って来たと言うのに、またあの地獄に身を落とせと? とてもじゃないが笑えない冗談だ。

 真智は考えた。考えた末、楽にお金を稼げる方法をみつけたのだ。

 それが、『心霊現象解決系お悩み相談』である。動画配信はただの広告のようなものなのでそこまで重視はしていない。半分、趣味であげているような部分もある。ただ、相談となれば本業の実家が煩そうなので自分の考えを述べるだけの動画配信者と言うことにしてあるだけだ。

 なに、兄嫁が考えているように詐欺ではない。依頼者の気を晴らし、それに見合った金を要求しているだけである。幽霊なんているわけがない。ただの自分の勘違いに自分が怯えているだけの人を、相手のプライドが傷つかないように相手の言い分に合わせて救ってあげているだけだ。様々な仕事を通して、様々な人間を見てきたが大概、こういう案件の原因は自分の不調であることが多い。多過ぎる。気を晴らしてやったあと、さりげなく霊に憑りつかれていたところに病を感じると病院に誘導すれば依頼者は病状に集中して霊なんて忘れるし、病なんてなくて騒いでるやつは普通によく寝れるようにしてやるだけで勝手に問題は解決していく。

 現に解決してないと言う苦情は一件もないのだから安心して欲しい。データは少ないけども。

 数か月前に始めたばかりでまだ数えるほどしか依頼が来ていないが、金額のことを考えると数件だけでも十分に彼の通帳は潤ってくれている。

 なに。なにも悪いことはしてない。

 悪いのは依頼者の頭だろ? と、真智は笑って口を開くついでにメッセージを開いた。

「おカモ様、一名ご来て~ん」

 彼はいつも依頼者を親しみを込めて、『おカモ様』と愛称で呼ぶことにしている。

 はてさて、今回はどんなバカげた内容なのか。

 そう笑っていた彼の眉間に皴寄る。

 それはおカモ様からのメッセージの画面に貼られた奇妙な写真が一番に目に入って生きたからだ。固く礼儀正しい文章は目も入らず、真智はその写真に目が釘付けになってしまった。その写真には、荒いカラーで色付けされた学生服を着た少女が一人、若々しく二つのお下げを垂らしてこちらを見ている。

 でも、どんな表情かはわからない。

 どんな顔かすらわからない。ただただ、彼女は顔をこちらを向いていることしかわからない。

 だって、その写真には顔がないのだから。

「……なにこれ」

 それも文字通り。綺麗さっぱり彼女の顔の部分だけがくり抜かれているのだ。

 真智の声が口から心の声が漏れ出した。

 今までに来た心霊現象のどの事案よりも物理的かつ、現実的。ふわっとしていない。具体的を通り越して立体的。いや、紙だから平面的?

 思わず自分の考えたくだらないことを鼻で笑いながら、漸く真智は本文に目を向けた。

 

 

 マッチ坊さま

 

 いつも楽しく動画をみさせていただいています。〇〇県□□市に住んでいる箱壷和樹(はこつぼかずき)と申します。

 一昨日部屋の掃除をしていたら、自分の部屋から五枚の写真を見つけてしまいました。

 ボクはこの家に約一年半住んでいますが、一度もこんなものを見たことがないです。

 前の住人の私物かと思ったのですが、張られていた場所がボクの持ち込んだベッドの下だったのでその可能性も低いと思います。

 一年ぐらい前から、不思議なことに悩まされています。

 突然誰かに背中を押されて線路に倒れてしまいそうになったり、とても高い階段から落ちそうになっしまったり。

 近くにいてくれた友人がどれも助けて事なきを得ていますが、彼が近くにいなかったらと思うと不安になってしまいます。

 これって、この写真と関係ありますか?

 どうしても気になるのでご相談お願いします。

 見つけた写真の画像も全て送ります。

 

 

 本文を読み終わった真智は、また白い煙を今度は長く長く吐き出した。

 偶然とはいえ□□市とは、真智の住む街の隣の市じゃないか。

「で、それがこの写真ってわけね」

 なんもまあ、手の込んだ嫌がらせである。

 くり抜かれた女子生徒の顔はなにも綺麗に切り抜かれているわけじゃない。歪に広がる虚空の淵はどれも自然の造形美ならぬ人の指の造形美。鋏などの文明がない時代に作られてたものかもしれない。きっと古代から依頼者のベッドに貼られていたんだろうに。

 他の写真もみたが、それほど一枚目の写真とどれも代わり映えしているものはなかった。

 画像が悪いがどれも絵ではなさそうだし、どれも正面を向いているところを取られた長方形の写真の顔だけが切り取られている。

 それに加え、依頼人だと思われるその写真を持っている親指の爪と比較すると、この写真が顔写真としては随分と大き目であることがわかる。

 これは証明写真だろうか? いや、それならわざわざ全員が制服を着ないだろうし、見切れている下の名前はどうなる。写真の下に名前がのっている状態。となると、この写真の出所なんて一つしかない。

 卒業写真だ。

 おそらく、誰かがこの五人の卒業写真を拡大コピーしたのちに顔の部分だけを千切ったのだろう。

「……くだんねー」

 マッチ坊こと、関柴真智はメモから文章をコピーするとすぐさまDМに張り付けた。

 

 

 おカモ様


 ご相談ありがとうこざいます。

 心霊現象解決系お悩み相談動画配信者のマっチ坊です。


 メッセージを拝見させていただきました。

 あなたを媒体にした電気を通して、強い呪いの波動を感じます。

 私には見えます。生霊があなたを呪っているのです。

 直ぐに除霊しなければ命の危険があなたに及ぶことでしょう。


 しかし、ご安心ください。

 

 年間三百件以上の除霊実績がある私にかかれば必ずやあなたの命をお救い致します。

 まずは下記のサイトから、

 ネット除霊、直接除霊、物理除霊などとのコースをお選びください。

 その後、各コースの予約日が表示されますのでお日にちがよろしい日を第三候補まで選んでください。


 あなたのお命を救える日をお待ちしております。

 


 ※サイトに記載されている金額にオプションは含まれておりませんので、ご注意ください。

  あくまでも、目安としてご理解いただければ幸いです。

 

 

 張り付けた文を見て、真智は突然噴き出した。

「はは、強い呪いの波動ってなんだよ」

 自分で書いたテンプレートなのに、何度読んでも笑ってつっこんでしまう。

 丁寧におカモ様という文字を消して、依頼人の名前である箱壷和樹をはめ込み送信。

 どのコースを選んでもまとまった金が手に入るのは正直おいしい。

 なにが呪いだ。なにが霊だ。

 そんなもの、この世の中に存在するわけがないだろう。馬鹿馬鹿しい。目に見えないものを信じて怯えてなにが楽しい? なにか特になることでもあるのか? そして、その呪いや幽霊が自分を確実に殺してくれるのか? そんなわけないだろ。

 万物全ての現象ってもんは生きてる人間の循環から産み落とされているに過ぎない。

 真智は寺の生まれで仏教にも理解がないわけではないが、霊も魂もなんなら神だって釈迦だってなんだって一切信じてない。目に見えないものの存在なんてあるわけがないのだ。

 いい例が目の前にある。どう見てもこの写真だって人間の仕業じゃないか。霊がコンビニか職場で拡大ピーして、コピーした紙を周りが破けないように気を遣いながら顔だけをえぐって、依頼人のベッドの下に貼りに行ったか? そんなわけないだろ。どう考えても人間が資源と時間を無駄にしてやってることに他ならない。

 この場合、依頼人の部屋に、しかもベッドの下に貼ってあったということはまったかく知らない人間の犯行じゃないことが伺える。

 写真の全ては恐らく女子高校生。五枚の中に一枚も男がないことを考えると、どう考えても女絡みの私怨だろう。

 その彼女が今付き合ってるか別れたかわからないが、依頼人のメッセージの中に彼女の姿が思い浮かばないところを見ると、彼には直接怒りや恨みをぶつけていないのだろう。つまり、彼女は彼に対してコレ以外の行動を起こすことも発言することもない実質無害な人物であると言える。

 なら仕事は簡単。

 どうせなにも起きないんだから、いつもみたいに適当に破っ破っ言ってればいいだけだろ? と、真智はまた舌を出す。

 最初は写真の存在で驚いたが、中を開けて見ればなにも驚くことはなかった。くだらない痴情のもつれである。

 しかし、犯人は鋏やカッターを用しないだけではなく、随分と雑な性格をしているようだ。

 五枚の別々の紙に印刷された卒業写真の下には名前が写っている。勿論、綺麗に写っていないのもあるが二、三枚は名前が特定できそうだった。

 特に酷いのが『西木野 蛍』。

 彼女だけが惜しげもなく、名前が全て印刷されているのだから笑えない。もしかしたら一番恨み事が深い相手なのか。いや、それはないな。半端に乗っている名前の彼女たちに名前が乗っている分恨みが深いかと言われたらそんなことはない。ただ、性格が雑なだけだ。

 そんな性格が雑な人間が呪いをしようと思うなんて余程辛いことがあったのだろう。依頼者が浮気した女たちなのかそれとも依頼人が狙っていた女たちなのかは知らないが、五人とは中々に数が多いし、良い数字とは言えない。五人も揃ったら古来から呪いでもなんでも出来てしまう数だと言われているからだ。五芒星が古来より魔術に用意られてきたのはみんなもよく知るところだろう。この日本でも陰陽道で広く魔除けとして使われ来たものだ。

 しかし西洋では悪魔召喚などに用意られる儀式のマークでもある。これはただの勘なのだが、ベッド下に彼女たちが配置されていた場所も五芒星を模した形だったのだろう。

 しかし、悪魔召喚の五芒星の代わりに使われる使われるぐらい、この顔のくり抜かれた女性たちは魅力的な顔なのだろうか。

 真智は興味本位で西木野蛍を検索サイトで調べるがヒットはゼロ。

 呪いなんて古風なことに使われている割には、どうやにネットテリラジーは中々のものらしい。素晴らしい。生きるために呪い返しよりもいる現代のスキルを持ってるようだ。

 真智は携帯の画面を消し、最後の白い煙を深く吐き出した。火を消した殻は、携帯灰皿に。

 はてさて、今日はどんな昼飯を作ろうか。

 中途半端に余った素麺の束の本数を頭で数えながら、真智は寺の厨房に向かったのだった。

 

 

 

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