第36話 驕り


 リジーを鍛えて一ヶ月、俺よりもできるようになるのが早いな。

 初心者キラーキラーラビットを狩ったのでお祝いだ!初めてにしては上出来だと思う防具が完成した。もちろんリジーのだけどな!もっとカッコよくとかできないかなぁと試行錯誤したが今の俺じゃこれが精一杯だ。

 防具をつけて剣を待てばそれなりに見えるのが不思議だ。

「よし、そんじゃついてこれるか?」

「はい」

 流石獣人俺たちも遅くしてるが難なくついてくる。今日は亀竜が出たと噂の場所に来て気配察知を使うと擬態しているみたいだ。

「そこ!」

「えい!」

『コアァァァ』

 動きの遅い亀竜にスピードで対抗するリジー!リジーが勝利したと同時にぶっ倒れた。レベル酔いだ。

 まぁ、まだ早かったかもしれないが無事倒せたのだからいいだろう。

 リジーが起きたのは次の日の昼間だった。レベルを見ると30以上上がっているのできつかっただろう。

 飯をがっつくリジーはある程度体ができてきたようだ。

 獣人の成長は早いと聞いていたがこんなに早いとは思ってなかったな。

「この防具でいいですよ」

「だめだ、防具はちゃんとあったものにしないとな!」

 防具を選んで買うと喜んで着込んでいた。


 もうフォレストウルフやビッグボアなども一人で狩れるようになったので実質一ヶ月ちょいで一人前になった。

 リリーはいい売り子だとミイナが可愛がっている。

 二人で生活できるようになったのは良かった。


 別に別れるわけじゃないが二人とは分かれて生活をする。あまり依存してもしょうがないし危ないことはしないだろうと思ってのことだ。


 いきなりリジーが大怪我で帰ってきた。

フルリカバリーで怪我を癒すと同じ冒険者にやられたと言っていた。

 俺らは探し当てたがビビって漏らすわ泣き叫ぶはで相手にもならなかった。

 次からは逃げろよの一言は言えないなぁ。

 次は勝てよとしか。

それからもよく見かけるようになり。成長しているのがわかる。

 リリーも毎日手伝っていたらいきなり成長期が来てビックリしたらしい。リリーも綺麗になって、二人とも教会に連れていくとリジーは狩人。リリーは商人でよかった。

 ミイナがリリーにレシピを渡していた。

シャンプーとコンディショナーのレシピだろう。まぁ、俺らもリジーに結構してるから何も言えない。


 別れの日が来た。

「リジー!がんばれよ!」

「あにぎー!俺頑張るから!」

 リリーは泣き崩れていた。

 俺らはしんみりしてしまったが次の目的地は西の都だ。

「さぁーて!作るか」

「だね」

「御者は任せて!」

 俺たちは一生懸命に働いているぞ!リジー達も頑張れよ!


 西の都についたのは三日後だ。

 なんか廃れてると思ったら盗賊に荒らされた後らしい!どこの盗賊が聞いたら山の中に砦があってそこに娘なんかも連れ去られたようだ!


 山の中に入っていくと砦があったが。

“ザンッ”

 と切り崩し中に入っていく。

 できるだけ殺したくないが。こいつらはあの惨状を作り出した獣だと思って斬って回った!

「チフユ!」

「チフユ」

「俺は、俺は命を粗末にする奴は大嫌いだ!」

「チフユ…」

「大将出てこい!!」

「うぇー!なんじゃこいつは!こんなに子分を斬りやがって!覚悟すぶっ!ガハッ!ブヘッ!わ、悪かったから。勘弁グハッ!ガッ」

「チフユ!もうやめとけ」

「チフユ」

「あぁ!スッキリしねぇな!」

「そりゃそうだ!終わった後だからな!」

「やられてやり返してもつまらないだけよ」

「ああ、そうだな」

 そのあとは捕まってる人たちを解放して、王国兵に来てもらい後処理を任せた。

 久しぶりの王都は変わりなく、本当なら西の都も同じように平和だったことだろう。


 もうちょっと早ければと後悔するが、どうしようもない。


 終わったことだと言い聞かせ、この世界の命の軽さを実感した、リジー達や西の都の人達、盗賊どもと命をなんだと思ってるんだ!

 生きていくだけで精一杯だったはずの俺はいつのまにか俺一人の考え方をするようになって、俺の手の届く範囲の人は助けたいと思っていたのに、指の先でも引っ掛かれば助けてやれたかもしれない。

 でもそれが驕りだと気付いてしまった。

 俺は何か変われたのか?


 昔の小さな俺と今の俺は背中合わせで立っている。


 あと一年もない。


 これで変わらなければ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る