第35話 西の兄弟


 要塞都市に来て半年くらい経つ、

 最初の方は物珍しくて楽しかったが、やはり要塞都市というだけあって、このゴーウェンでは兵士が一般的な職業で冒険者は一握りだ。

「かぁー。今日の依頼もしょっぱいなぁ」

「まぁしょうがないだろ?でかいのはみんな兵士がやってるんだから」

「それはそうとチフユは楽しそうだな?」

「俺?俺は錬金術も使えるからカズヤと上手くやってるよ」

「そうか!このごろ素振りしててもこないなぁと思ったらそんなとこで油売りやがって!」

「まぁ、そういうなよ、それにこれからまた旅だぞ?今度は西にある国境を越えて王国側に入る」

「なにかあるのか?」

「さぁ?一応西の要塞都市はあるみたいだけどな」

「こうみると小さな国だな」

「違うよ、下に広がってるからまだ言ってないところだらけだよ?竜の巣の南の方面」

「げっ!それ強くなっていくのか?」

「いまのところ竜の巣が一番レベル高いらしいから他はそんなことないんじゃないか?」

「そうか。あれ以上があったら死ぬな」

「あははは」

 俺らは金を下ろして宿に帰る前に市場を見て回る。

「あれ」

「おっかわいいじゃん!」

「レイナに似合いそうだな。買ってあげるよ」

「うん」

「よかったね」

 雫型のイヤリングだ。

「ありがとう」


「あれ?宿屋が混んでる?」

「錬金術師が住んでるのはここか?」

「さっさと出てこい!」

「なんなんだよ?なに?」

「ワシらにも錬金術を教えてくれませんか?」

「このとおりじゃ!」

「後生じゃ」

「な、なんなんですかいきなり来て!それに教えられるほどのことはできないですよ」

「それでもコツが掴めるまで!」

「おねがいじゃー」

 爺さんズに捕まっているカズヤを後にして買い物を続ける。

「いいの?」

「俺が出て行ったらもっと抉れそうだからな」

「そりゃそうだな」

 カフェで一休みしてミイナの店に行ってみると繁盛はしているが、流石に半年もいれば皆に行き渡るだろう。

「ミイナどうだ?そろそろ」

「そうね、店じまいしてそろそろ行きましょうかね」

 カズヤはどうなったのか見に行くとコツを教えてあとは練習あるのみと言って返したらしい。

 まぁ。手取り足取り教えるわけにも行かないからな。

「やるじゃないか!」

「ミイナより扱いやすいよ」

「だれより?」

「え?ミイナ!なんで!」

「店じまいしてきたのよ」

「えっ!てことはそろそろ?」

「そう旅をしようじゃないか!」

「よっしゃー」


 ゴーウェンを出て西に向かい国境付近まで来た。並んでる人がやけに多いな。

「俺たちをここからだせ!」

「王国に行って稼ぐんだ!」

「こんなとこにいても稼げないわよ!」

 聞こえてくるのは不満ばかりだ。

並んでいるとようやく俺らのは番が回ってきた。

「王国にはなんのようで?」

「冒険者兼商いよ」

「それでは拝見させて、はいわかりました」

 とちょうど門を通る時に獣人族の子供が二人入ってきた。

「おいおい勘弁してくれよ」

「済まないがこのままどうか国境を渡るまで」

「知らないからな」

 すんなり通してもらえた俺たちは獣人の子供二人と一緒にいる。流石に、はいさよならとはいかず、何があったのかを聞いた。


 ガルタナルダ帝国は表向きはいい国だそうだが貧富の差が激しい国だそうだ。で、王国か、魔王国に行くのが通常なのだが、国民が出ることが許されない国らしくて、冒険者になれば出られるそうだが、それまで待ってたら飢え死にしてしまうということで俺たちの馬車に潜り込んだらしい。

 今は堅パンを齧っている。

 狼の獣人らしくふわふわもふもふの妹とシュッとした兄の二人で出てきたそうだ。

 親はいないらしく二人で生活していたようで堅パンを美味しそうに食べている。

 まぁ、どちらの王様も知っているので助けてあげることはできるが二人ともそれは望んでないみたいで冒険者になりたいそうだ。

 ならなってみるかと俺の剣を貸してやる。重いはずなのに兄のリジーはなんとか構えることができた。妹はまだ何になるか決めかねているらしいのでミイナに見てもらうことにした。


 西の要塞都市ウェンダムでは交易が盛んらしくいろんなもので溢れていた。

 虎猫の招き亭に宿を取り、二人にこれから教えていくことにする。期限は三ヶ月。

 とりあえず木剣を買って与えると型を教えていく。

 必死についてくるが、あまりにも体力がない。食べてないのでよくわかる。

 たくさん食べてたくさん寝かせる。

 昔の俺もこんな感じだったのだろうな。

「もっとおしえてくれよ!」

「もう体力がないだろうが!今日はここまでだ」

「そりゃ似た者どうしだもんな」

 素振りをやめないリジーを止めてご飯に連れていく。妹のリリーはもう食べ始めていた。

「美味しいよ?お兄ちゃん」

「美味いか?よかったな!」

「さぁ。いっぱい食わないとついてけないからな!」

「はい!」

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