第33話 弟子


「すまんかった!焚き付けたのはワシじゃ」

「あぁ、だからか」

 ギルド長からの謝罪を受け取りしょうがないのでポケットマネーからいくらかもらった。

「チフユの旦那!私を強くしてください!」

 エルルが土下座をしてくる。

「チフユでいいし、塩漬けいいをこなせば自然と強くなるだろう」

「はい!んじゃ今から」

「今からじゃ遅くなるんだから明日からでいいって」

「はい!」

 ほんとめんどくさいの押し付けたな。ギルド長を睨むと苦笑いだ。

「それではまた明日!」

「じゃーな」

「おい、あれついてくる気かよ?」

「じゃないですかねー?」

「浮気?」

「どー考えても違うだろ?」

 はぁ、カズヤのレベル酔いでも大変なのにまた変なのがついてきちゃったよ。


 次の日は朝から、

「おざまーっす」

「おはよ、今日は何をしようかな?」

「これなんか如何でしょ?」

「猿帝の討伐か。これでいい?」

「了解」

「いいよー」

 森の中だから馬車は通れないな。

「走っていくからついてこれない時は無理せずに言うことな」

「「はい」」

 かずやとエルルだ。


 森の中を疾走していると、一番に声を上げたのはエルルだった。

「ま、待ってください」

 スピードを落としてついてこれるくらいで、

「すいません!」

「別に急ぎじゃないからいいよ」

「はい!」

 なんだかんだ言ってカズヤもレベル上がってるしな。


 猿帝を見つけたが大きすぎるだろ?大亀龍と同じくらい育ってるぞ?

「私が一当てしてきます」

「無理すんなよー」

「はい!」

 大斧を持って走っていき斧を振り下ろすが傷一つつかない。

「か、硬い!」

『ウホオオオォォオォォォ』

「あ、バレたな」

「カズヤは逃げてろよ?」

「分かってるよ」

 俺は肩に乗り首を斬ると猿帝はすぐにドロップ品になった。皮と睾丸と肉と宝珠だ。

「あ、あ…」

 エルルはレイナにおぶられて森を抜ける。カズヤは平気そうだな。

 気絶してるエルルをギルドに置いて猿帝の査定待ちだ。

「あ、ああ!うっ!」

「レベル酔いだ、しばらく休んどけよ」

「はい、すいません」

「すぐ慣れますよ」

 カズヤが言う。

「カズヤも酷かったもんな!」

「あははは」

 笑って過ごせるうちはいいもんだな。

 査定が出たので確認すると一千万ゴールドだった。宝珠は俺が持っておくが、それ以外でこの値段だ。カードに入れといてもらった。

 冒険者カードは普通にどこのギルドでも下ろせるそうなので最近はカードに入れている。現金をあんまり持たない方がいいきがしてな。


「んじゃ、二発目いくか?それとも」

「い、いきます!」

 まだレベル酔いしているエルルが行きたがってるのでいくことにした。

 次の塩漬け依頼を受け取ると、レイナにおぶられて馬車に詰め込まれるエルル。

「すいません」

「別に」

 いつものレイナだ。

 次は馬車で行ける沼地に大毒沼蛙がいるらしいのでそっちに向かう。

「こ、こんどこそ」

「静かにしといた方がいいですよ」

 馬車から降りて大量発生している大毒沼蛙の処理をしていく。するとまたでかいのが現れた王毒沼蛙らしい。これはヨシキがやるってことで待っていたがなんとか倒せた感じかな。泥だらけだ。

『クリーン』

「すまない!ヌメヌメしていて斬り辛かっただけなんだけどさ」

「まぁ、倒せたからいいじゃないか」

「また失神」

「あぁ、どんだけレベル低かったんだ?」

「いや。チフユ達が高いだけだから!僕も結構きてるからね」

 カズヤはエルルを擁護している。まぁ、しょうがないか。ドロップは皮に肉に毒袋に宝珠だった。


 また、ギルドで査定待ちの間にエルルが起きたみたいで謝ってきたが、別に気にしなくていいと言っておいた。

 査定額は千五百万ゴールド。五百万ゴールドだけ下ろしておいた。もちろん魔王金貨だ。

 晩飯を一緒に食べようとエルルを誘う。ミイナと合流して今日の出来事を話しながら飯を食う。堅パンが美味い。

「まじすげーっす!首なんか一撃で落としてるんすから!」

「あぁ、チフユはそうね、規格外だからね」

「そうっすね!どうやったらあんなに強くなれるんすか!」

「努力してきたからな」

「やっぱりそれしかないっすか!」

 エルルは燃えている。

「エルルはなんでそんなに強くなりたいんだ?」

「だってあこがれじゃないですか!Sランク冒険って!」

「それだけかよ」

「「「「あははは」」」」

「笑うなよー!」

 エルルは顔を真っ赤にしている。

「あっ!そうだ、ドライヤーが」

「「ゲッ」」

「売れてるんだからいいでしょ?あとはまたなんか目玉が欲しいわね」

「ドライヤー!私も買ったっすよ!」

「わぁ。ありがとう」

「いやぁ。髪は女の命ですからね」

「ほら!」

「「はい」」

 作ることは決定らしい。

「他にも何か作って欲しいんだけど」

「何を?アイデアがないと作れないよ」

「そうよねー…あ」

 嫌な予感がする。

「口紅はどうかしら?」

「口紅?ありますよね?」

「色が悪いし塗りにくいのよ」

「どんなのかまた試行錯誤だな」

「どうさならぷるんとした唇にしたいわね」

 注文が多いな。

「まあ。それはミイナにも手伝ってもらうぞ?」

「任せといて!」

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