第29話 小さな勇者
図書館に行った次の日から約一週間は俺とカズヤは地獄を見た。
材料になる鉄なんかをヨシキが運んできて俺はひたすらドライヤーの側を作る。そしてカズヤが錬金術で火魔法と風魔法を同時に付与してミイナとレイナが検品をして合格が出ればミイナのアイテムボックスへ。
千個作るのがこんなに大変だとは思わなかった。
「よし!みんなお疲れ様!今日は私の奢りでご飯食べに行きましょう」
「ゔー。それより寝たいかも」
「出来たんだからお祝いしなきゃ!ちゃんといくわよ!」
「おおぅ」
流石ミイナの選んだ店というか飯もうまいし雰囲気も素敵だ。
「あとはシャンプーとコンディショナーね!」
「まだ、働かせるの?」
「当たり前でしょ!私が大商人になるためなんだから」
二人ともガクッとしてしまう。がちゃんと報酬ももらってるので何も言えない。
「まぁ。一番の大傑作ができたんだから後は金になるだけよ」
「まぁ、価値はあるからな」
「魔道具として登録は」
「ちゃんとしてあるわよ」
「しっかりしたことで」
「当たり前でしょ?ちゃんとした労働にはちゃんとした対価が必要なの、だからこんな雑事は私がやるのよ」
「へぇ、ちゃんとしてるな」
「私をなんだと思ってるの?」
「「守銭奴」」
「きぃー!チフユもカズヤも覚えてらっしゃい!」
「「怖っ」」
「あははは」
「笑い事じゃねーよ」
次の日にはもう露天で売り出しているミイナを見ると頑張ってるなと思う。
俺たちはギルドに向かっていた。
次の街を選ぶためだ。一ヶ月くらいはここでのんびりすると言う話しを昨日してたからちょっと早いけど候補を決めておこう。
ここが東の最南端だから海からの攻撃に耐えるためあんな立派な城壁のようなものができているんだろう。とすると北に登っていくか南の魔王国をすっ飛ばして先に行くかだが、北に行こう。となると国境を超えて先の帝国に行かなければならないな。次の目標は帝都に決まりだ。
何かいい依頼はないかと探していると、
「あ、あの!僕達とパーティーを組んでくれませんか?」
急に言われてビックリしてしまったが、ハーフリングの子供かな?周りが笑っている。
「ガハハやめとけ兄ちゃん!そいつは使えない勇者だ」
「そうそう。勇者なんて職業についたばっかりに可哀想にあははは」
ヨシキの手に力が入るのがわかるが止めておく。
「よし、一ヶ月ならいいぞ?」
「ガハハ!ほんとに入れちまったぞ」
「わたしゃ、三日で断念するに金貨二枚賭けるよ」
そいつらを睨んでいるヨシキを連れて外に出ると、
「すいません僕達のせいで」
「いいや、あいつらが悪い」
「現にここに勇者がいるからな」
「へっ?」
「僕が勇者のヨシキだ」
「本当ですか?僕も強くなれますか?」
「当たり前だ!」
「なんでもやります!よろしくお願いします」
「魔法使いのテーナといいます」
「勇者のキースです」
「よし。二人ともレベルは?」
「まだ無いです」
「んじゃ外に行くか」
「だな」
黙っているカズヤもレイナも頷く。
二人はその日、レベル酔いでぶっ倒れた。
次の日にはキラーラビットを倒せるようになっていた。魔法は俺が教えている。自分で試行錯誤しながらだがな。
「ファイヤーボール」
「ファイヤーボール」
サッカーボールとビー玉くらいの差はあるがちゃんと撃てている。
その日も二人はレベル酔いでぶっ倒れた。
三日目にはフォレストファングと呼ばれる狼を倒すことができ、調子良くレベルも上がってきている。スキルも覚えた。
「スラッシュ」
「よしよくやったぞ!」
「ふぅふぅ」
後は地道にやっていくしか無いけどな。
「今日はもう終わ…なんだお前たちは?」
「あんたに賭けたのは私だよ?そりゃ三日で諦めてもらうさ」
「僕はあんたみたいな奴が大嫌いなんだ」
「あら奇遇ね、私もよ!坊や!やっちまいな!」
「クリスタルソード!!」
「があっ!」
「グエッ!」
「グハッ」
「死んではいないそいつらを連れて逃げて行けよ」
「こ、この!クリスタルソードは勇者の技だね!なんであんたなんかが」
「勇者は勇気ある者だ!お前みたいな性根の腐ったやつにやられるわけがない」
「くそ!グエッ!」
「はぁ、女を殴っちまったか」
「まぁしょうがないよな」
カズヤが慰める。
「あ、あの。ありがとうございます!」
「うん!僕は僕の思うようにしただけだからね」
「「はい!」」
それから一ヶ月毎日同じ様にギルドで依頼を受けて倒しにいく。
もうあいつらのレベルは超えたんじゃ無いかな?
魔法使いのテーナも、思いっきり魔法をぶちかましているし、キースも剣の振りがよくなっているのがわかる。
「じゃあ。今日で終わりだなキース、テーナ。元気でな!」
「「ばい!ありがどゔございまじだ」」
その日小さな勇者と魔法使いは独り立ちした。
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