第15話 その頃のみんな3


 カフェから出ると薬師のサトミは鞭士のヨシミ達と別れてハジメとタクトの3人でぶらつく。

「みんな元気そうで良かったよ」

「俺たちは肩身が狭かったよ」

 男嫌いのハルナを筆頭に男は寄りつかない様にしている。

「よっ!久しぶり!」

 魔剣士のシンジだった。

「おう久しぶりじゃん!元気だったか?」

「元気も元気!みんなー!」

 集まってくるのは格闘家のコウヘイ、シーフのテッタ、アサシンのケンスケ、吟遊詩人のミズキだ。

「あーサトミ」

「ミズキ!げんきしてたか!」

「してたよー!」

「よかったぁー、で、コウヘイはここら辺にいない方がいいわよ?」

「なんでだよ?」

「ハルナがさっきいたから」

「まだ根に持ってるのかよあいつ、あやまっただろ?」

 だがコウヘイはキョロキョロしている。

「女の執念は怖いわよ!」

「見つからない様にしとくぜ」

 とデカい体を縮こませている。

「ケンスケとテッタは相変わらずね」

「そだよー!」

「まあね」

 二人とも結構能天気だ。

「稼ぎはどうなのよ?」

「ボチボチ!レベルもボチボチ上がってるよ」

「そっか!ならよかった」

「おい。そろそろ行こうぜ」

 コウヘイはさっさとこの場所を離れたいみたいだ。

「あっちの方に行ったから反対に行きなよ」

「おう!助かるぜ!」

「あ。あっちにチヒロ達がいるよ」

「そなんだ!会ってくるよ」



「おーいチヒロー!」

「おー!サトミ!」

「よぉ、ライ!子守は大変か?」

「誰が子供よ!」

「悪い悪い」

 チヒロがハジメを叩くと止めるのはライだ。

「はいそこまでだ」

「ライはよくやってるなぁー」

「あんまりうちの姫さまを怒らせないでくれよ?」

 聖騎士のジュンがやってきて話す。鍛治士のケンタ、剣聖のショウもやってきた。

「ジュンにケンタにショウ!」

「ハジメとタクトじゃねーか!」

 みんなで握手や肩を叩き合っている。

「うちの姫さまは、おー、サトミが一緒か」

「おー!ジュン、ケンタ、ショウ!久しぶり!」

 こっちにやってきたサトミとチヒロ。

「相変わらず筋肉カッチカチやね!」

「そうだぞ!こっちきてからレベルも結構上がってるからな!」

「げ!追い抜かされてるかも」

「ふん!追い抜かしてるぜきっと」

「きぃー!すぐ追い抜かしてやるんだからね」

 ケンタとサトミは生産職で二人ともレベル上げが大変なのだ。

「でも今日はよく人と会う日ね」

「今日は休みだからじゃねーか?」

「あー、ギルドが休みだもんね」

 月一回ギルドは休みを取る。年中無休ではないのだ。

「人とよく会うんだったらミコト達があの店に入って行ったぜ?」

「そうなんだ!いってみよっ!」

「私達は宿に帰るよー!じゃーねー」

「またねチヒロー!」



“チリンチリン”

 と気分良くなる音を響かせ扉をくぐると、そこは小洒落たカフェレストラン。

「いた!」

「あ、サトミ」

「ハジメとタクトじゃん」

 相席を頼むとテーブルを動かしてくれた。

「久しぶりよね?どう?」

 ミコトが聞いてくる。

「どうって聞かれてもボチボチやってるよ?」

「あははは、そりゃそうこたえるしかないわな!稼いでるか?レベルも?」

 戦士のタカユキが笑いながら答える。

「まあまあってとこね、レベルは上がってるわよ?」

「私達と一緒ですね」

 僧侶のサクラが言う。

「まぁ、本気でレベル上げしてる3人には敵わないでしょ?」

 と狩人のカズミがいうと、魔術師のリサ、盾士のタクヤが頷く。

「3人とも元気でやってるといいけどなぁ」

 とミコトとサクラが心配してるが、

「チフユがいるから大丈夫だ」

 タカユキはパスタを食べながら言う。

「「「そうね」」」

 みんな頷く、レイナあたりに言ったら「自分の心配して」と言われそうだ。

 今日が休みとか関係ないだろうな。と全員が思っている。

「行かなくて良かったかも」

「「「わかるー」」」

 全員が一致していた。

「ねぇ。またみんなで集まらない?」

「いいねぇ!休みの日だけ」

「ハルナもそれくらいは許してくれるでしょ?」

 ミコトが言うと、

「じゃあ、会ったらここの店集合ってことでいいかな?」

「いいぞー!」

「みんなも誰かに会ったら言っといてね?」

「わかった」

 魔王国にのこった28名はそれぞれ自分の道を歩き始めている。それは少しゆっくりだが、確実に一歩一歩進んでいる感じだ。

 二十歳になるまで二年とちょっとある。

 まだまだ甘えたこと言ってられない。


 全員が日本に帰るまでは。

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