第14話 その頃のみんな2


 カズヤは錬金術師として弟子入りしているゴロ爺のところにやってきていた。

「ゴロ爺!今日は何を作るんだい?」

「空間魔法の練習じゃ」

「了解」

 空間魔法の理論はわかったが理解するのとやるのとでは大きな差が生まれる。

「こ、こいつぅ!」

「そこじゃ!そう!」

「こうやってあ!」

「出来たか?」

「出来たよゴロ爺!」

 いろんな袋が散らばっていて全て失敗作だ。バックは一個が嵩張るから小さな袋を使って試している。

「どれ!…本当じゃ!腕まで入るぞ!」

「やった!一歩前進したぞ!」


「なにやってんのよ?」

「なんだミイナか」

「なんだはないでしょ!せっかくご飯持ってきてやったのに」

「「ミイナさま」」

「やめてよ、ゴロ爺まで」

 飯を食いながら話をする。

「で?何が出来たの?」

「空間魔法を付与することができたんだ!」

「へぇ。すごいじゃん、マジックバックまでは?」

「まだ、認識魔法もいれないとね」

「そうなんだ?ただ広い入れ物ってこと?」

「そう、空間魔法で空間を広げて認識魔法で袋の中のものをわかるようにするんだ」

「じゃあ、あと一歩じゃない!」

「そうもいかんのじゃ」

「えぇ!」

「そうなんだ。空間魔法と認識魔法両方とも同時に付与できないとマジックバックは完成しないんだ」

「そうなんだー」

「で?ミイナが来たってことはまたなんか作って欲しいの?」

「ドライヤーってできるかな?」

「うーん。火魔法と風魔法を同時付与か、やってみてもいいかもね」

「同時付与なら練習にもってこいじゃの」

 お人好しのカズヤらしい。

「ミイナが使うの?」

「私も使うけど、売り物にするのよ」

「あ、そうか!ならまたお金が入るよゴロ爺!」

「ならがんばらにゃいかんのぉ」

 前のシャンプーとコンディショナーは大金が舞い込んだのだ。

「そうよ!だからまたお願いね」

「よし!ならまずは付与の練習からだな」

「そうじゃのぉ!やるぞカズヤ」

「おう!ゴロ爺」

 二人はミイナをほっといて話し始めた。

「ほんとに二人は仲良いんだから」

 ミイナは夜ご飯用の弁当も置いていく。

「ちゃんと食べるのよ?」

「「わかってる」」

「ほんとにもー」

 ミイナが外に出ると薬師のサトミ、剣士のハジメ、騎士のタクトがいた。

「やっほー!」

「おっ!金持ちのミイナじゃん」

「誰が金持ちよ!こっちも薄利多売でセコセコしてるのよ?」

「そうなんだ?あ、ミイナから貰ったシャンプーとコンディショナー使ってるよ!いいよねあれ!」

「「は?」」

「あ、やべ」

 ハジメとタクトはシャンプー後のゴワゴワが気になっていたのだ。

「ミイナ俺たちは?」

「あれは女の子にはあげたけど男の子は買ってください!」

「いくら?」

「魔王金貨1枚づつかな?」

 本当は2枚で売っている。友達価格だ。

「たけぇよ!グレートバッファロー一体で金貨10枚なんだぜ?」

「あら、友達価格だから本当は倍の値段よ?」

「「まじかよ」」

 ハジメとタクトは1枚づつ出して買うのであった。

「あ、傷薬あげるね!効くわよ!」

「ありがとう!どうしても手が荒れちゃうのよね」

「じゃあハンドクリームなんて売ったら?」

「いいわね!こんどはそれにしましょう!」

 ミイナと別れるとサトミは薬草屋に入ると大量に薬草を買っていく。

「おいおい。そんな買ってはいるのかよ?」

「ハジメとタクトのにも入れるから大丈夫」

「「げっ」」

 マジックバックにも容量があるのでいくらでも入るわけではない。

「あ、収まったわ」

「「ふぅー」」

 サトミは薬師だから傷薬やポーションを作るための材料だ。商人ギルドにも登録しているサトミはこれでも稼ぐのだった。

「あれ?ヨシミ達じゃん」

「あ、サトミ!」

「久しぶりー!元気でやってる?」

「やってるやってる!」

 カフェに着いたみんなはハジメとタクトは別の席だ。

 鞭士のヨシミは、魔具士のカンナ、魔動銃士のレイミ、拳士のハルナ、侍のイチゴ、賢者のカオルの6名でパーティーを組んでいる。

「傷薬助かってるわよ!」

「そりゃ良かった!まだあるの?」

「実はもうほとんどないわ」

 イチゴが言う。

「はい!大容量タイプだから大丈夫でしょ!」

「ありがとー!で、サトミは襲われたりしてない?」

「大丈夫!撃退スプレーもあるからね」

「なら安心ね。男は野蛮だから」

「あははは、まだ根に持ってるのね」

「笑い事じゃないっての!」

 拳士のハルナは一度大喧嘩して男に殴られたことがある。ボコボコに仕返したけど。

「あの時は吹っ飛んだからね」

「その後、ボロボロにしてたじゃない」

 それは恐怖の裏返しだったようで男性恐怖症まではいかないが怖いのだ。

「サトミも気をつけなさいよ」

「わかってるって!カンナとレイミは仲良くやってるの?」

「やってるわよそれなりに」

「そう、それなりにね」

 魔具士のカンナがいないと魔動銃士は成り立たない。整備しないといけない魔動銃はカンナ頼りなのだ。

「言い合いも絶えないけどね」

「それはしょうがないじゃない」

「そうそう!魔動銃なんて繊細すぎるのよ」

 みんなそれぞれレベルが上がっているので出来る仕事なのだ。

「カオルは大丈夫?」

「大丈夫よ、私は私だから」

 賢者のカオルは魔王軍戦で大怪我してから少し変わった。やはり心の傷になってしまったのだろう。

「みんな強いから結構稼いでるんだよ」

「そうね。稼ぎは順調ね」

 カオルの顔がニヤリとする。

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