第11話 ヨシキの思い
ただひたすらにレベルを上げる。これがどんなに難しいことかとヨシキは思う。
レイナは黙々とドラゴンを撃破している。
「なぜそんなに頑張れるのか?」
レイナは答えた。
「頑張ってる人がいたから」
間違いなくチフユの事だろう。レイナはチフユ中心で生きている気がする。
いつからだろうかチフユを見出したのは?
小学校の時はまた来てると笑っていた気がする。
だけど、こっちにきてから笑顔が多くなった気がする。さらに一番練習熱心だが型を覚えるのも一番遅く、深夜や早朝に一人で訓練してるのを見た時から?たぶんその時からだと思う。
自分より頑張っているのに成長しないあいつを見るたびにイラついていた気がする。
なぜできない?こんな簡単な事じゃないか!
でも違った、あいつの風呂に入った時を見たらわかった、傷だらけだったし肋が浮いていていかにも骸骨の様な体だった。
それでもあいつは頑張っている。
なぜそんなに頑張れるのかわからなかった。飯は人一倍食べる。ただそれだけでみんなから笑われていた。こんなまずいスープに硬いパンを、嬉しそうに食べている。
5年も経つと体も成長して。細身だががっしりした体格に顔つきも変わっていた。食事は毎日同じものだったがあいつだけおかわりをして食べていた。俺も同じ様におかわりする様になった。
型もようやく覚えた様で剣を振る音が違う。走り込みも同じ様に着いて来れる様になった。
だから追放の話を聞いた時はビックリした。なぜいつも頑張っているあいつを追放するのだと怒鳴ったが、もう出て行った後だった。あとからレイナに『死ぬな』と約束したと聞いた時はホッとした。
俺たち31人で帰るんだ。
一番頑張っていたあいつを残して帰れるわけないと思った。
魔王軍は強力であり怪我人が続出する。
何故勝てない?努力はしているのでレベルの差があるんだと思いレベル上げを頑張った。お陰で俺だけなら魔王軍を相手にできる様になったが魔王軍の幹部には負けてしまった。情けなく敗走する俺たちを魔王軍は追って来なかった。
もう一度レベルアップを繰り返す!みんなも必死に型を覚え直して次の戦いに備える。
もう負けないと思って向かった先には、エンシェントドラゴンの姿が!
これは勝てないと逃げようとしたところであいつの声がする。一人でいたやつがエンシェントドラゴンの背から降りて叫んだ。
「僕らは騙されている」と。
話を聞くと確信が持てた。
と言うかなぜ魔王を倒したら帰れるのかを俺たちは一人も知らなかった。
エンシェントドラゴンの背に乗って王城へ行くと女王が出てきて宰相までいる。好都合だ。俺は怒りに任せ問いただす。
が、帰ってくるのは言い訳ではなくなぜ魔王を倒さなかったかだ。
少しでも期待した俺がバカだった。
宰相の腕を刎ねた様に女王の首を斬ろうとした瞬間に止められた。
「君は誰も殺さずに帰るべきだ」
ありがたく思った。
罪悪感に晒されるだけの人殺しになる所だったが、心が固まった。
僕は女王を殺した。
罪悪感はそれほどなかった。僕らの八年間を償わせた結果だったからだ。
それからすぐに帰ると思っていたが僕らはもう17歳だ。子供と大人の境目になる。
なら千冬の言う通りに二十歳になった時に帰れば大人として正しく自分をだせる。
全て千冬の、あいつのおかげだった。
だから少しでも近づきたいと思ったんだと思う。あいつに負けない様に。
あいつの、千冬の友と呼べる様に。
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