第6話 召喚陣


「な、な、何事だ!」

「エンシェントドラゴン?!」

 背から降り立つ俺たちは怒りに打ち震えていた、特に目が血走っている勇者君はこれまでのことを思い出しているのであろう。


「まず謝れ」

「な、なんのことだ!」

 宰相が言う。

「エンシェントドラゴンを味方につけたなら魔王城ごと吹き飛ばせば良かろう!」

 女王が喚く。

「そんなことをしても無意味なことは知った。全てを知った」

「魔王を倒せば帰れるにぎゃあぁぁぁぁ」

 宰相の腕を斬り落とす。

「お、お前たち何が起きているんだ?」

 騎士団長も駆けつけた。

「魔王を倒しても僕らは帰れない!」

「そんなばかな!いままであんなに苦労したじゃないか!」

「あぁ。だから女王であるあなたに問う!魔王を倒しても帰れないんだろ?」


 女王は唇から血を流しながら喚く。

「妾の言うとおりにすれば丸く治る様に席を用意する予定だったのに!なぜ、魔王を倒してこなかったのじゃ!」

「じょ、女王様?うそですよね?そんなことがあっていいわけないじゃないですか!この子達は今まで苦しみながらも戦い傷ついてきたんですよ!」

 騎士団長が叫ぶと、皆が動き出す。

「な、何をしているのじゃ」

「この剣は悪を滅ぼす剣なり」

「や、やめるのじゃ。妾が悪かったのじゃ」

 俺は止める。

「辞めるんだ勇者君。君は誰も殺さずに帰るべきだ」

「君には助けられたよ。一番頑張ってた君を外に出せて良かった」


 女王の首が飛ぶ。

「じょ、女王さま!」

 騎士団長が駆け寄るが死んでしまったものは仕方ない。

『召喚陣は何処にあるのだ?』

「この城の地下にあるよ」

『この異様な魔力の塊がそうか、分かった消し飛ばしてくれよう』

「や、やめ」

 エンシェントドラゴンの口からブレスが放たれると宰相も一緒になって消し飛んでしまった。


「わたしはどうすれば」

「この国を作り直してください」

「騎士団長が、適任ですね」

「僕たちは帰りますから」

「ま、待ってくれ、俺にも責任がある。お前たちをこんなことに巻き込んでしまった」

「親みたいな人を恨むなんてできないわ!」

「そうです。ここでの僕達の親は騎士団長ですから」

「おまえら」

『そろそろ帰るか?』

「ちょっと待ってもらって良い?」

『ん?なんじゃ』


 僕達は今17歳で子供だ。

 だから二十歳までここにいたいと思う。

「みんな少し良いかな?」

「なんだ?」

「僕らは今から帰ることになるんだけど、残りたい人っているか?」

「…」

「いま、17歳だ。これで帰ったら高校に遅れて入ることになると思うが、どう思う?」

「それは」

「俺は二十歳までこっちで暮らしたいと思う」

「ええー!」

「二十歳なら大人だ。自分で進路を決めても良いんじゃないかな?」

「…それはありだな」

「だろ?たぶん僕達はこれから有名になってしまうだろうし、こっちで培ってきた体力なんかも、そのままみたいなんだよね」

「じゃあ、あっちでレベル上げは?」

「モンスターがいないならできないよね」

「…エンシェントドラゴンはどう思う」

『ワシはどうも?帰りたくなったら帰れば良いんじゃないか?』

「ってことだから少し考えてみてよ」

「わかった」

『ワシは帰るぞ?ここにいても落ち着かないからな』

「うん。用ができたら呼びに行くよ」

『ではまたな』

“バサァ”と羽を翻して飛び去るエンシェントドラゴンを見送ると、疲れ果てたのかみんな座り込む。

「はぁ、やっと帰れると思ってたから緊張しちゃった」

「俺もだよ」

 みんなガヤガヤと喋り出す。


「みんな、すまなかった」

 土下座して謝る騎士団長。

「良いって言ってるのに」

「騎士団長は知らなかったんでしょ」

「こっちでは親代わりでしたからね」

「俺が出て行く時もお金くれたし」

 みんなからそう言われて泣き出した騎士団張。


「みんなどうする?」

「私はもう少しレベルを上げたいわね」

「そうだね。千冬は何処でレベル上げをしてたんだ?」

 勇者君が聞いてくるので、

「竜の巣だよ」

「「「えぇー!!」」」

「あの地の果てにあるって言う?」

「山の裏側だったよ。結構遠かったけどね」

「凄い何処まで行ってたんだな」

「みんなに迷惑かけない様にって思ってね」

「俺も残るよ二十歳まで」

「わたしも」

「みんなそれでいいかな?」

「「「おう」」」

 みんな俺のお願いに賛成してくれた。


「まぁ。あっちの親には心配かけるけどな」

「そうね」

「服もこんなんじゃ捕まってしまうしね」

「あはは、そうだね」

 みんな和気藹々と話を進める中、騎士団長は動いて女王の亡骸を処分する様に部下に命じる。

 宰相はきえてなくなってしまったからな。


 これから忙しくなりそうだな。


「みんなお金はあるの?」

「一応毎月金貨5枚はもらってたけど」

「少なくない?」

「もしかしてそれより稼いでる?」

「毎日金貨3枚は稼いでたよ」

「えぇー!酷いなぁ」

「私もそれは言ったのですが女王が」

 騎士団長がすまなそうに言う。

「いいよ、別に使うところなかったからさ」

「そうそう。買い物もろくにできなかったし」

「じゃあそれなりにあるんだね、良かったよ」

 全員分の小遣いなんて渡したら無くなっちゃうからな。


「んじゃ、これから冒険者ギルドに登録しに行こう。生産職のほうは商人ギルドかな?」

「冒険者ギルドでいいよ。どーせレベル上げしたいからね」

「よし行こうか!」

 俺たちは冒険者ギルドに向けて出発した。

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