第5話 8年


 あれからまた一か月勇者のスキルは取り終わった。でもまだ強力な竜達がいるのでレベル上げをしている。

 この竜達を軽く倒せなければ魔王には勝てないのだろう。残り少なくなった堅パンを齧りながら考える。

 勇者、聖女、賢者がいれば大方のことができる様になるはずだからそれらをあげよう。聖女は無いが聖者ならあるしな。


 もう堅パンが無いので竜の肉を焼いて食べている。竜の肉なんて買えばいくらになるかわからないが今は腐るほどアイテムボックスに入っている。

 ようやく中層と言ったところかな?



  ♦︎



 僕達はまた訓練場て訓練をしている。本当なら魔物を倒してレベルを上げたいのだが女王と宰相が訓練をしろと言ってきたからだ。

「もう教えることは何も無いのだがな」

「大丈夫ですよ!これもレベル上げにつながりますし」

「そうか!それなら思う存分訓練して行ってくれ」

 騎士団長は親みたいなものだ。誰にでも分け隔てなく接してくれる。

 もちろんあいつのことも心配していて何回か見に行ったみたいだが。最近は顔を見ていないみたいだ。

「女王様も、またなんで訓練をさせようとお考えになったのやら」

「僕はまた騎士団長に教えてもらえて嬉しいです」

 この人だけは本当にやさしくしてくれる。

 だけど僕達はこの人を裏切らなきゃいけない!

「訓練が終わったら魔物狩りに行ってきます」

「大丈夫か?あんまり心配かけるなよ?」

「はい」



  ♦︎



 さて、レベル上げを始めようか!

「っと!それ!」

 ドラゴンの攻撃を交わして攻撃する。

「うわっと、うおぉ!」

 ドラゴンのブレスを避けて攻撃し、倒すことに成功した。体が熱くなるのを感じる。

「よし!レベルあがったな!」

 一旦帰るか?いや、食べ物はあるからレベルを上げるのを優先するか!

 それから約二か月かけて聖者と賢者のスキルツリーも解放した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

神谷 千冬カミヤ チフユ 17歳

レベル 357 職業 ノージョブ

ユニーク

スキルツリー開放

鑑定 剣術LvMAX 身体強化LvMAX 気配察知 アイテムボックス 隠密

ジョブMAX

(勇者)(聖者)(賢者)

(ステータスMAX)

経験値二分の一

スキルポイント54

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 これで準備は整ったのか?

 僕はまだ甘えてるんじゃないのか?

 そう思うならまだ、レベル上げをすれば良い!もう少し奥に行ってみよう!

 そうすればレベルだって上がるはずだから。

 ぼくは奥に行くことに決めて、ドラゴン達を屠って行った。

 奥は秘境となっており。出てくるドラゴンの強さは段違いに強くなって行く。

「うっ!くそ!」

「ウオリャァァァァァ!」

『ギャオォォ』

 体に傷も多くなってきた、ポーションはもうそこをつき、聖者のヒーリングキュアでなんとかしのいでいる。レベルが上がる熱を感じながら次のドラゴンと対決する。


 ようやくここでも楽ができる様になってきた。あとは最下層になる。

 レベルは500に達していて他のジョブも取ろうかと思ったがまだこれまだこれで良いと思っている。

 最下層を目指しながらレベル上げをしていると一際大きな洞穴があった。意を決して中に入ると。

 エンシェントドラゴンと鑑定で出ていた。



  ♦︎



 僕達はまた遠征に出てモンスターを倒しながら魔王城を、目指している。

 だがおかしいことに気付くと、気になって仕方ない。僕達が攻撃しない限り魔王城の方から攻撃してくることはないのだ。それに見逃されている。撤退した時も追っ手が来なかったのだ。もし魔王が戦争をする気なら全滅を覚悟して動かないといけないのにそんな覚悟はない。だからちまちまと攻撃してはレベル上げをしているんだ。


 おかしい、何か間違っている。



  ♦︎



『迷い子よ。何をしにきた』

「しゃべれるのか?やっぱりエンシェントドラゴンってだけあるんだな。俺はチフユ」

『ワシは名も無きドラゴンよ。お前はなぜここにいる?』

 エンシェントドラゴンはうつ伏せで寝ながら喋っている。

「俺たちは魔王を倒して自分達の世界に帰る為にレベルを上げにここまできた」

『魔王如き倒しても帰ることなぞできんぞ?』

「え?」

 エンシェントドラゴンは笑う。

『魔王は穏健派で自分から手を出すことは無い。そして転移の魔法は使えるが自分の身だけじゃ』

「ま、まさか」

『お主達は騙されておるのぉ。帰りたいなら帰してやるが?』

「俺だけじゃないんだ!30人も仲間がいる。しかも、魔王と戦っているんだ」

『お前を入れて31人か、出来ぬことはないが時間は戻せぬぞ?』

 俺は頭を下げる。

「お願いします。俺じゃ仲間を救えない。どうか力を貸してください」

『お主達は何を対価とする』

「なんでも!俺だけならなんでもする!あいつらは今も命懸けで戦っている。騙されているとも知らずに!」

『召喚されたのはいつどこでじゃ?』

「8年前になるかな?王国の城の中に召喚陣があるはずだ」

『ならば迷い子を出さぬ様に壊さなければいけないな!ワシは平穏が好きでな』

 ニヤリと笑うエンシェントドラゴン。

「対価は?」

『今もろうた情報で十分じゃ。背に乗るが良い』

「まずは魔王との戦いを止めないと!」

『あいわかった』


 洞穴から出ると、ドラゴンは翼をはためかせ空へ飛び立つ。


 高く高く飛んで魔王城の付近にあるテントの前に着地する。

「待って!俺だ!このエンシェントドラゴンは敵じゃない」

「お前は…何をしにきた!もう魔王との戦いが始まっているんだぞ!お前がきても死ぬだけだ!だから帰れ」

「魔王との戦いがおかしいんだよ!魔王に俺たちを、戻す力なんてない!エンシェントドラゴンが、元の世界に戻してくれる!」

「な、嘘だろ!」

「じゃあ俺たちは」

「騙されていたんだ!8年も」

「ゔぅ」

「泣くな!俺たちはまだ何も成し遂げていないじゃないか!騙されて8年も、ここで頑張ってきたが。魔王討伐前に分かったんだ、よかったじゃないか!」

 泣きながら勇者君は言っている。

『さぁ。背に乗るが良い迷い子達よ』

 エンシェントドラゴンの背に乗ると王国の王城に降り立つ、城よりドラゴンの方がデカいな。

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