154 祝いのハンバーグステーキ★
19時までマラソンを続けたが、結局
肝心のロランもレベルアップを達成し、彼らは多くのドロップ品と共に嬉々として船へと戻った。
* * * *
イグリースへと戻れば、風呂上がりのコスタンが出迎えた。
入れ替わりでロランとラクモがシャワーで汗を流す間、エリクシルとコスタンが夕食の支度をする。
一足先にシャワールームからでてきたロランが食卓を見て嬉しそうにする。
「おっ、今日はハンバーグステーキか!」
「はんばーぐ?」
{ひき肉を使って作る料理ですよ。ひき肉に、たまねぎ、パン粉、卵、スパイスを加えて混ぜ、成形し、フライパンやグリルで焼き上げられたものです。お好みでソースをかけて召し上がります}
「へぇ~……ひき肉ステーキかあ」
「ラクモさん、これはグリムステーキとは異なりますぞっ!」
訝しげに首をかしげるラクモに、コスタンは料理のパッケージを見せる。
「あれっ!? 全然違う! 緑色じゃない!」
「……グリムステーキ?」
「あぁ、うむ。我々の世界でのひき肉ステーキと言えば、
「死神……!?」
{ふふっ、私もこの話を聞いたときは驚きました!}
口元に手を当てて微笑むエリクシルの横で、コスタンは長物を振り回す素振りを見せた。
構えからおそらく大鎌か?ヴォイドの地でも死神のイメージが自分たちと同じなことに少し驚く。
「……腐りかけの肉や筋、軟骨など、あまり好んで食べない部分をミンチにして作る料理です。……運が悪ければ強烈な腹痛に襲われますから、冒険者の間では
コスタンは「本当にハズレを引くと、死神に腹が真っ二つにされるんですぞ!」と、やや大袈裟に話している。
笑ってるから、冗談だよな?本当に死神はいないよな?
「……はぁ~なるほど! 腹がねぇ」
「これは綺麗なグリムステーキ、いや、ハンバーグステーキと言ったね。食べるのが楽しみだよ」
* * * *
皆でハンバーグステーキを囲み、冷えたビールを一杯やる。
{……本日で、コスタンさんのリハビリも無事終了しました! 明日から一緒にダンジョンに潜りましょうね!}
「やりましたぞぉっ!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
コスタンの復帰と、ロランのレベル5を祝し、夕食は普段よりも豪勢に肉の量が2倍だ。
「「「いただきます!!」」」
熱々の料理にビールはよく合う、コスタンとラクモもハンバーグを偉く気に入ったようだ。
ラクモはすべてのグリムステーキがこうあるべきだ!と鼻息を荒くしていた。
「気に入ってもらえて良かった」
{食べ終わったら明日の計画をまとめましょうね}
* * * *
夕食後、一同はリビングでくつろいでいる。
部屋には温かみのある照明が灯され、落ち着いた雰囲気が流れている。
「このラウンドシールド、軽い素材で作り替えるんじゃなかったか?」
カウチに腰掛けたロランが、盾をコンコンと叩きながらエリクシルに話しかけた。
{あぁ、あの後コスタンさんと話をしたのですが、軽くしてしまうとシールドバッシュの威力が下がるのではないか、との指摘がありまして……}
「ええ、すべての装備は軽ければ軽いほど良いというわけではありません。重い方が手に馴染む物もあります。そして盾での殴打にはそれなりの重さも必要になります」
「バッシュが軽すぎたら痛くないもんね」
コスタンが盾の重要性を強調すると、ラクモはうんうん頷いた。
「なるほど、そういうもんか……」
{軽量な素材も用いましたが、比重の重く強度の高い金属も用いてバランスをとっています}
コスタンはロランから新しい盾を受け取ると、誇らしげに眺めた。
「新生、ラウンドシールドですな……!」
元々のラウンドシールドの外見に変わりはなく、持ち手の近くにエリクシル印が刻まれている。コスタンはその印をうっとりと眺め、異世界の装備コレクションが増えるのを喜んでいるようだった。
{さて、新しい装備のお披露目も終わったことですし、明日の行程を確認しましょうか}
「おう、明日はさっそく3層のボスにリベンジだ!」
「
コスタンが力強く言い放つと、ロランは不敵に笑う。
「へっへっへ、今回は俺に秘策があるんです……」
{秘策、ですか?}
「それは?」
コスタンが興味津々で尋ね、エリクシルも好奇心を隠せない様子だ。
「エリクシルの戦術、
{「「
一同が驚きの声をあげた。
「うん、コスタンさんに
「ショットガン! あれは強いよ!」
「例の戦術のことですな」
{超威力のスナイパーライフルを使うんですか……?}
「あぁ。どっちかっつーと
{……なるほど、考えましたね……。皆さんによる
「しかし……私でも扱えるものですかなぁ……?」
「大丈夫、僕が出来たから」
「ラクモは飲み込みが早すぎるんだよ。でも、コスタンさんも練習すれば使えますよ!」
ロランは心配ないと笑っているが、エリクシルはひどく神妙な面持ちをしている。
コスタンもバツが悪そうに縮こまっている。
{
「うむ……」
それを聞いたロランは思い出した。
(そういえば船の調理器を上手く扱えず、食品コンテナを爆発させたとか言ってたっけ……)
{……推測なのですが、調理器もスタン
「そう言えばそうだった。機械だけど武器でもあるスタン
「それは本当ですか!? ううむ……それではその銃でリベンジ、ですな……!」
「頑張らないとね」
「よーし、そんじゃぁ……
ロランはカウチから飛び起きると、ロッカーへと進む。その顔は満面の笑みだ。
ラクモとコスタンが顔を見合わせると、興味ありげに彼の後をついて行く。
ロランはガンロッカーを重々しく開き、
ずっしりとした重み、ギラリと光る銃口、波をイメージした塗装。
その長くスリムな銃身と調整可能なストックは、独特のマットブラックで仕上げられている。
GMレールシステムを搭載し、射手の体格や射撃スタイルに応じてカスタマイズが可能だ。
スコープは夜間での狙撃も可能なデジタル
つまりエリクシルとスコープで覗いた視界をリンクさせることが可能だ。
これによってターゲットの位置や距離の他、風速、天候、その他の環境データをリアルタイムで計算し、射手に最適な射撃ポイントを提示できる。
「使うのは試し撃ち以来だから、寝る前に手入れしないとな」
「おおっ、随分と大きな銃ですな!」
「威力も高そうだね」
(まさかヴォイドの地に来て初めて使うことになるとはなぁ……)
購入前の試射を最後にガンロッカーにしまわれていたスナイパーライフル。
本来であれば
夜間に活発になる原生生物を狙うためのカスタムだったが、こちらの世界では何かと役に立ちそうだ。
「うむうむ。これは期待せざるを得ませんな! ……どれ、私も
「僕も勉強したい」
3人は装備の操作から手入れの方法まで全てを学ぶ。
あとはダンジョンでの試射で完璧になるはずだ。
「あとは、実際の陣形とかはその都度エリクシルの意見を聞くのがいいと思います」
「うむ、わかりましたぞ。指導、ありがとうございます!」
コスタンはにっこりと笑い、低い声で答えた。
「ふはっ、はやくも弟子から教わるとはね」
「学びというのは、年齢や立場を問わないものです。人はいつでも、誰からでも新しいことを学ぶことができる。それが真の知恵というものだと思いますぞ。お互いに教え合うことで、より豊かになる……」
一瞬目を伏せ、しばらくの沈黙の後、彼は再び顔を上げた。
「……私の年になると学びの機会も減り、なにかあっても注意もされません。時々正しい道を歩めているのか悩むこともある……。しかし今はとても新鮮で、はっきりとした気持ちですぞ!」
「……師匠の言葉は胸を、打つんだよなぁ……」 「……わかる」
ロランとラクモの言葉にコスタンは笑い、周囲は暖かい雰囲気に包まれる。
その後、明日に備えていつもより早めに休むことにした。
明日はロランの秘策『
* * * *
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タイダルウェイブ。
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以下、復習。
コレ・ムヌ・ギュラ社のロゴ。
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コレ・ムヌ・ギュラ社について。
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