第159話 芽吹く新世代 その1
~受験生 "乙羅サヤ子" 視点~
頭が混乱している。
たぶん、生のRENGEちゃんに実際会って以来の、いいや、それ以上の衝撃だ。
だって受験生になればRENGEちゃんに会えるってことはわかっていたけど、その妹さんのNAZUNさんとは絶対に接点を持てないハズだったから。
「えっ、えっ、えっ……ほ、ホントに、なんでっ、どうしてっ!?」
ワタシが戸惑っていると、後ろから追いついてきた城法くんもまた目を丸く見開いていた。
「……そんな、嘘でしょう、Nさん……!?」
「アンタまで何よ」
NAZUNAさんは腰に手を当てて、不満げにワタシたちを見る。
「Nが
「いや、決してそんなことは……というか、」
城法くんは記憶の奥底から情報を引き出すかのように自分の頭に人差し指を当てながら、
「実際、RENGE先生の配信で聞いたNAZUNAさんの声と似てるなと思ったことはあったんだ。世界大会のアメリカでのリーク情報からも、背格好や年齢はネットに流れていたし……」
「じゃあ驚くことなんて何もないじゃない」
「いやっ、驚くよっ!? だって君、ネットの情報が確かならまだ中学1年生じゃないかっ!」
ワタシもまったくの同意見で激しく首を縦にした。
そうなのだ。
RENGEちゃんの妹君 (つまりみんな、もちろん私も大好きなRENGEちゃんをいつも陰で支えてくれる超々健気で賢いハイパープリティキュートな天使様)はまだ中学1年生、この日本ダンジョン高等専門学校への受験資格がそもそもまだ無く、この場にいるはずがない存在。
「……はぁ。細かいことは全部後回しよ。まずはアンタたち、アイツをなんとかなさい」
NAZUNAさんが指さしたのは、全身から炎を噴き出した姿の男だ。
姿は先ほどモニターで観た時から少し変わっていたけれど、でもその顔は同じ。
……殺人者の顔……!
ギュッと。
自然と、握る拳に力が入った。
「N……じゃなくて、NAZUNAさんっ! ワタシたち、これからどう動けばっ?」
これまでどおりに指示を仰ぐ。
大丈夫、きっといつもみたくNAZUNAさんの言う通りに動けば勝てる!
「いいえ。私は何も指示しないわ」
しかし、かえってきたのはそんな言葉だ。
「えっ?」
「私は負傷者たちの安全を優先する。だから……ソイツはアンタたち3人で倒すのよ」
「えっ……えぇっ!?」
ワタシと城法くんは思わず顔を見合わせてしまう。
緒切さんはぜんぜん動じてない様子……というかもう刀を抜いて臨戦態勢だ。
「……ナメやがって、悪魔の妹め……! 俺を誰だと思ってやがる、復讐の炎、RB@Fixerだぞ……!」
ゴウッ! という激しい音とともに熱気が押し寄せる。
RB@Fixerの体を内側から突き破るように、バーナーのような火が立ち上がっていた。
「余裕ぶっこいてるならそのままでいいぜ、NAZUNA……コイツらをサクッと皆殺しにしてから、おまえの丸焼きをRENGEの前に突き出してやるよ」
炎の腕が、ワタシたちに向けられる。
「ッ! もう一度、ワタシが弾き飛ばして……!」
「──いやっ、違う!」
叫んだのは城法くんだった。
「緒切さんっ、君の思念一刀なら、炎も斬れる! そうだったねっ!?」
「ん」コクリ
「なら乙羅さんのサポートを! 炎を逸らすんだ!」
「わかった」コクリ
「乙羅さん!」
城法くんはワタシの背中を押す。
「得てして火は、強風にあおられて消し飛ぶものだ。わかるね?」
「……! はっ、はいっ!」
「ナズ……いや、Nさんが託してくれたんだ。なら、きっと僕たちだけでもできるはずさ。やってやろうよっ!」
城法くんは声を震わせつつも、メガネをグイッと強く押し上げ、前を見た。
* * *
~ブラジル、サンパウロ~
「──オイ、来てやったぞ」
銀の竜の姿のリウが、私たちの待つダンジョンの入り口のある " さっかーすたじあむ " へとやってきた。
「おつかれさま、ありがとうね」
「フンッ……光滅竜たる我を飛行機代わりに使うなんて、言っておくがタダじゃないんだからなっ!」
リウはそうやってブツブツ言いつつも私、AKIHOさん、そして気絶したぶらじりあんRENGEをその背中に乗せてくれる
「あっ、ちょっと待って。メッセージがきた」
AKIHOさんの " すまほ " から着信音が鳴る。
その内容を確認するとAKIHOさんは微笑んで、
「よかった。FeiFeiちゃんとShanShanちゃん、1人で池袋ダンジョン管理施設へと襲撃にきた " 神の使徒 " を捕まえたって。『オネーチャンといっしょにボコボコにしたアル!』『神の使徒の相手よりも、マウンティングの体勢から使徒を殴り続けるフェイフェイを止めるのが一番疲れたよ~』だって」
「あははっ、さすがは最強双子姉妹ですねっ!」
「これで今日が受験本番の受験生がいる場所は、ナズナちゃんのいる渋谷ダンジョン管理施設だけだね」
「そうですね……これで捕らえた神の使徒たちに地蔵焼酎? みたいなのができるんですよね」
「事情聴取ね」
「それです! ……あっ、そうだ。リウも使徒の相手をしてくれてたよね? その人たちはどうしたの?」
私が聞くと、リウは無言でバサリと銀の翼を広げ、
「……わ、我はな、取るに足らぬ人間のことなどイチイチ覚えておらぬのだ……」
誤魔化すようにそう言って空へと舞い上がった。
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