第63話 魔法と竜
「そもそも魔法って何アルか? どうやったら魔力が炎に変わるネ?」
FeiFeiがもっともな質問をした。
正直私もそれが不思議でしょうがない。
魔力は魔力なのに……
どうなってるんだろう?
「魔力にはそもそも決まった形がなくて、それに自分の強いイメージを混ぜ込むことで具体化することができるようになるの」
「強いイメージ? って、どれくらいカ?」
「本当にソコにあると思い込むくらい。これが難しいからね、普通は"詠唱"や"魔法陣"という五感に作用する形で思い込みを強化するの」
「何だかおっかないネ。催眠みたいだヨ」
「あ、それは近いかも。自分自身に催眠をかけて言い聞かせる感じだね」
……zzz
……zzz
……zzz
「レンゲちゃん? それは睡眠だよ?」
「……ハッ!」
「ああ、横文字使っちゃったからか……。じゃあなんて言えばいいかな、幻想かな?」
「幻想、ですか……」
「でも確か、レンゲちゃんは前にも火とか氷とかを配信で出してたよね? あれはどうやっていたの?」
「あれは魔力を使って物とか空気の熱を上げ下げしているだけなので……」
「なるほど。やっぱり私の知らない方法で実現してるんだね。きっとレンゲちゃん独自の手法なんだと思う」
あ、やっぱりそうなんだ。
配信の時の視聴者さんたちの反応を見てて薄々は気づいてはいた。
「だからこそ、レンゲちゃんが普通の属性魔法を覚えたらもっとすごいことになるんじゃないかな、って思うんだよね」
「……がんばって覚えます!」
「よし。じゃあ人もいないし、小さな火を起こす魔法の練習をここで少ししてみようか」
そうしてAKIHOによる魔法授業が始まった。
幻想、幻想か……。
魔力を集め、小さな火を思い浮かべる。
「むむむ……」
「……レンゲちゃんでもさすがに一発では上手くいかないみたいね。補助のための詠唱や魔法陣も試してみよっか」
よくある詠唱方法、魔法陣の書き方などを習う。
けど……あまり成果は芳しくない。
「お~、ムツカシイヨ~」
「私もちょっと大変かも……」
FeiFei・ShanShanコンビは詠唱、魔法陣を試してみるも、なかなかに苦戦しているみたいだった。
一方の私はもちろん……
──詠唱が覚えられない。
──魔法陣もキレイに書けない。
「ダメだぁ……」
覚えようとすると睡魔が襲ってきてしまう。
ゴリゴリゴリ。
ゴッ……
……zzz
「レンゲちゃんっ? 魔法陣書きながら寝てるっ!?」
「……ハッ!」
しまった……
また寝落ちしそうになってしまった。
「あぁっ!? 地面に書いてた魔法陣が……四角くなっちゃってるっ!」
「あははっ、RENGE、それまるで地獄の門みたいヨ!」
「RENGEちゃん、画伯だね。カッコイイ!」
FeiFeiとShanShanが私の失敗魔法陣を覗き込んできてケラケラ笑う。
まあ確かに、笑われちゃうデキだ……
丸を書いてたつもりが四角いんだもんなぁ。
「FeiFeiちゃんとShanShanちゃんはできそうなの?」
「「ぜんぜんっ!」」
私たち3人とも、進捗ダメみたいだね。
「まあ、そんなに焦らなくてもいいと思うよ」
「AKIHOさん……」
「きっと、3人とも感覚派だから最初が長いだけだよ」
「感覚派、ですか?」
「うん。こう、自分なりのコツを掴んで覚える天才肌ってヤツだと思うよ」
天才肌……
肌?
肌か……
「……」
そういえば"へるモード"の80階層で、
フロアボスの全身が炎に包まれたドラゴンの攻撃を最初の1回は受けちゃったんだよなぁ。
全身炎に包まれちゃって、
アッチッチ、って。
ちょっと前髪焦げちゃったんだっけ。
「あのとき、少し熱かったなぁ」
私にとっての炎って、それだな。
チリチリと、脳裏にその時の炎がチラついた。
全身の魔力が陽炎のようにうねるのを感じる。
……あ、もしかして……この感じ。
「……えいっ」
立てた人差し指に、その感覚を集中させる。
すると、
ボウッ!
「わあ、ホントだ! できました!」
「はやっ!?」
AKIHOは目をまん丸にする。
「なっ、何がキッカケっ?」
「AKIHOさんに言われた通り、前に肌で感じた炎の熱さをそのまま思い浮かべてたらできました」
「肌で……? 私そんなこと言ったっけ……?」
ジリジリジリ。
「というかレンゲちゃん……その炎、出力高くない? 空気が灼ける音がすごいするんだけど……」
「そ、そうですね……思い浮かべた炎がマズかったかな……?」
なんていったってこの炎、ドラゴンの熱線を受けた時に感じた炎だもんね……。
って、あ。
マズい。
あの時の熱線を
「え──えぇぇぇいっ!!!」
火の灯った指を天高く突き上げた、次の瞬間。
その指から細く赤白く輝く熱線(※)が照射された。
(※【
その熱線は空の白い雲へと消える。
その直後。
上空に広がった魔力の影響か、
あるいは急激な上空の温度上昇が原因か、
白雲は暗雲となって天を覆い、雷が響いた。
ゴゴゴゴゴ。
「レンゲちゃんっ!?!?!?」
「RENGE、何したネっ!?!?」
「RENGEちゃん、今の何っ!?」
3人に総ツッコミを受けてしまう。
何と言われても……
「ごめんなさい……何かは分からないですけど、私また何かやっちゃいました……」
「もう変なことしちゃったっていう確信はあるんだねっ!?」
ゴゴゴゴゴ。
空に、尋常じゃない量の暗雲が広がった。
そしてその中に細長い影。
黒い雲の中を泳ぐように移動するソレが、
顔を出した。
風になびく白い2本の髭、
青と黄色のウロコ、
堅牢そうな黒い角、
ワニのようなアゴ、
そして蛇のように長い胴体を持つソレの正体は──
「「「竜だぁぁぁッ!?!?!?」」」
私以外の3人の絶叫が響く。
確かにそれは絵巻物などでよく見る竜……ドラゴンだった。
ただ、
「あっ、あの子……」
私が昔、ウッカリ山の中で逃がしちゃった子だ?
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
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