第51話 日本予選Fブロック実況その1
~実況者:
11月第2週の土曜日、9時。
東京渋谷のダンジョン管理財団本部において、ダンジョンRTA世界大会日本予選の開会式が行われ、日本各地のブロックでの予選開始が宣言された。
「──この日本最大のRTA公式大会、エントリー数はここ10年で最高の3031人。その中でも、厳正な審査を突破したトップ中のトップ160人のRTA走者たちによる戦いの火蓋が、今ここ幕張でも切られようとしていますっ!」
幕張ダンジョン管理施設。
その観戦席に設けられた実況席にて。
ダンジョンRTA実況歴20年、
「北は札幌市から南は那覇市までで分けられているA~Pブロックの内、ここ幕張ではFブロックとGブロックを午前と午後の回に分けてお送りいたします。1ブロックあたり10名。この1回きりのタイムで日本代表が決定しますから、幕張の応援席は今からすでに緊張に包まれています」
その生帆の解説に、
>え、そうなん?
>予選1回だけ?
>RTAなのに1人ずつではやらんの?
生帆の見る配信中動画のコメント欄に、ダンジョンRTAの大会自体が初見らしい視聴者の言葉が大量に届く。
「日本、そしてアジアの予選会においては複数人RTAなんですよね。理由としては……会場や人材を押さえるだけの予算がないんですっ! お金の問題、こればっかりは仕方がない!」
>うっそだろwww
>ぶっちゃけたwww
>マジで?そんな理由???
「いやね、ダンジョンRTAは同環境の用意が大変なんですよ。それに正直スポンサーも少なくてですね。全国で使わせていただいている会場が10個、それを1日貸し切るだけでも相当なマニーがかかるのに、実況手配に機材手配、その他もろもろ経費がね……なーんてこれ以上裏の事情を喋ったら実況を次から干されそうだなぁ!」
>www
>裏事情助かる
>スポンサーもっと頑張ってやれw
>RTA公式まさかの赤字経営?
>まあずっと下火界隈でしたから・・・
一部には衝撃の事実だったのだろう、
コメント欄はしばらくその話題で持ち切りになっている模様。
……よしよし、これで充分な繋ぎになったな?
生帆の無線に連絡が入る。
どうやらFブロック走者の準備が終わったらしい。
現在時刻は9時45分。
入場を終えて10時ジャストにRTAのゲームスタートの予定だ。
生帆は張り切って実況マイクを口元に寄せる。
「それではみなさんお待ちかね、Fブロック走者の入場です!」
生帆の実況に合わせて、
1人ずつ走者が配信カメラの前へと姿を現した。
>キター!
>待ってました!
>10人か・・・覚えられんな
>大事なのは1人だけっしょw
「予選審査通過順での入場です!
まず入ってきたのはPPP選手。2大会ぶり。
クイックネスに定評があります。
続けてナカナカ選手。前大会129位。
両手銃で敵を圧倒するスタイルです!」
>あの子はいつ頃かな?
>ヤツは当然1番最後でしょ
>まあそれは確実やねw
「
過去大会最高順位は82位!
左手にレイピア、右手にサーベル!
特徴的な攻略スタイルで観る者を魅了します。
第4出走はKANEDA選手。初参加。
赤いレザージャケットが特徴的!
身体強化が得意な選手ですね!」
>そういえばRTA走者って結構いるんだな
>審査3000人とか言ってたっけ
>RENGE効果で普段は応募しない走者もいそう
「第5出走はXyz選手。前大会60位。
現役MMA選手でもあります!
愛用のナックル装備で今日も敵を粉砕だ!
第6出走はLaika選手。前大会38位。
ガードテクの名手ということで有名ですね!
攻守自在の盾捌きは世界でもトップクラス!」
>ぜんぜん見たことないヤツばっかw
>いや、全員有名どころだからな?
>RENGEから入ったファンには分からん
>おっ、そろそろじゃね?
>そろそろ入場くるか・・・!?
「第7出走はFeiFei選手。初参戦!
武器は右手に中国刀剣!
そして左手から伸びる……手錠!
なんと次のShanShan選手とは双子です!
第8出走はShanShan選手。こちらも初参戦!
武器は左手に曲刀!
そしてやはり右手から伸びる手錠!
姉妹で互いを手錠で繋ぎ合っています!
なおShanShan選手の方がお姉さんとのこと」
>ふぁっ?!
>チャイナ服!!!
>女の子じゃん。フツーに可愛い?
>しかも双子とは・・・
>若っ!中学生?
>いろいろツッコミどころあるなwww
>中国人?
>手錠???なぜ???
「第9出走はWhisper選手。前大会7位!
身体強化のスペシャリスト。
各種エンハンスの扱いなら
日本一とも名高い走者です!」
>エンハンス?
>エンハンス=身体強化魔法
>なんかいろいろ種類あるらしいね
>この前のAKIHOコラボ配信で解説あったぞ
>いちいち覚えてねー
>おっ、次ようやくか!
>はよ!
>待ってました!
>こぉぉぉいッ!!!
「第10出走はRENGE選手。初参戦!
何が得意なのかは分からない!
とりあえず全てが超次元!
というか実況じゃ目で追えないので
誰か今すぐAKIHO選手を呼んでほしい!
実況者泣かせということで
みなさんご存じお目当ての──
世界大会のダークホースだぁぁぁッ!」
>キター!!!
>キター!!!
>Fooooooo!!!!
>RENGE!
>RE・N・GE!
>RE・N・GE!!!
>RE・N・GE!
>待ってたぁぁぁっ!!!
>これを見に来た!
>今日も無双じゃ!
>我らがRENGEちゃんじゃあああ!
>RE・N・GE!
>RE・N・GE!
>RE・N・GE!
ユラリ。
RENGEが姿を現した。
しかし……
>ん?
>あれ?
>なんか・・・元気ない?
配信コメント欄がざわつきはじめた。
──RENGEにいつもの元気さがない。
配信カメラ搭載のドローンを近くに飛ばす。
間近でその顔を映すと……
目をシバシバとさせており、目元には深いクマ。
口元が僅かに、絶え間なく動き続けている。
……なんだ? まさか、体調不良っ?
「ん~、どうしたのでしょうか? ちょっと早いですが、ダンジョン側の音声をONにしてみましょう」
生帆がスイッチを切り替える。
するとドローンのマイクが反応した。
拾ったその音声は、
『──"あいまままふぁんむさんぴゅー、あいむまふぁんちゅー、えいむふぁんくせんとぅー"……あれ? なにか、違うような……』
「な、何かよく分からない言葉をつぶやき続けているようですね……?」
>えっ・・・コワイw
>なにこれ?
>壊れてる???www
>RENGE、おまいどうしたんや
>呪文・・・?
結局RENGEの状態は分からなかったが、良い意味なのか悪い意味でなのか、観客席もコメント欄も大いに盛り上がっていた。
=============
お待たせしております。
本日より順次エピソード更新行っていきます。
内容変更に伴いエピソードについて新規で作成しているため、以前いただいていた感想は申し訳ございませんが表示できなくなっております。
ご承知おきください。
1日1話更新を行ってまいります。
よろしくお願いいたします。
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