第21話 レンゲとAKIHO
ど……どうしようっ!!!
AKIHOさんに、完全に私のことがバレてしまってるっ!
「AKIHOさん、どうなさいましたか」
「あなたは……施設長さん」
運転席へと乗り込みかけていた施設長が再び顔を出した。
「すみません、お帰りのときにお連れの方……謎の美少女Aさんを呼び止めてしまって」
「……やはりバレてしまっていましたか。彼女だけではなく、私も変装してくるべきだったかな」
「気が付いたのはつい先ほどのことでした……。それでその、私に謎の美少女Aさんとお話するチャンスをいただけないでしょうかっ?」
AKIHOさんは懇願するようなまなざしを施設長へと向けた。
お話……
いったい、何を話せば……
「そうですね、私の方からは何とも。彼女が良いと言うのであれば」
「謎の美少女Aさんっ」
ぐるんっと。
AKIHOさんが首を痛めるんじゃないかという勢いでコチラを向いた。
「どうか、少しだけでも私とお話していただけませんかっ」
「え、えっと……」
「もちろん嫌だと思う話題は避けていただいて結構です。私はまず、あなたという人となりが知りたいんですっ」
圧が……というより熱意がすごい。
これから告白でもされるんじゃないか、
それくらいの熱量が伝わってくる。
「お、お話は構わないのですが、でも今はここを早く離れないといけなくて、」
「あっ、そうですよね……ならスマホで連絡先だけでも、」
「私、スマホ持っていなくて……」
「えっ、そうなんですね。じゃあどうしよう……」
私とAKIHOさん、2人でアワアワとしていると、
「AKIHOさん、よかったら乗っていかれますか?」
施設長が助け舟を出してくれる。
「お話なら移動しながらでもできるでしょう」
「よっ、よろしいのですかっ? ご迷惑じゃ……」
「いいえ。もう帰るところでしたから」
「ではその、すみません。ご厚意に甘えさせていただきます」
そういうわけで、私はAKIHOさんと共に後部座席へと乗り込むことになった。
……話がいろいろと急展開で、正直ついていけてない気がするよ……。
* * *
施設長の運転で施設の駐車場を出ると、ちょうど同じような車種の車がたくさん入ってくるところだった。
「報道陣ね。ちょうど行き違いになれたみたい」
AKIHOさんが呟いた。
「私もデビュー時はよく追いかけ回されたんです。注目株だとか現役女子中学生ダンジョンRAT走者だとかいって……さすがに今はもうそこまでだけど」
「そうだったんですか……」
「だからあなたもこれから少し大変だと思いますよ……えっと、謎の美少女Aさん」
「あの、その呼ばれ方はちょっと気恥ずかしいんですが……」
「えっ、謎の美少女Aって自分で付けた走者名じゃないんですか?」
「そんなわけないですっ!」
あり得ないでしょう、普通。
どれだけ自分に自信を持てていれば自分のことを美少女だなんて呼べるというのだろうっ?
「てっきり、そういうキャラ付けかと……」
「ちっ、違いますっ! いつの間にかそういう風に呼ばれていただけで……私の本名は花丘レンゲといいます。なのでそう呼んでくださると……」
「分かりました。じゃあ、花丘さん? でいいでしょうか」
「はい、構いません」
AKIHOさんは居ずまいを正すと、
「では花丘さん、私はあなたのことが知りたいと思っています。ダンジョンに関することをご質問してもいいでしょうか……もちろん、ここでお聞きしたことは許可なく誰かに話したりしませんから」
「はっ、はいっ、大丈夫ですっ」
「ありがとうございます。それではまず1番にお聞きしたいのは……花丘さんは、なぜダンジョンへと潜るのでしょうか?」
AKIHOさんは真剣なまなざしを向けてくる。
「知りたいのです。あれほどの実力者であれば、ダンジョンに潜り始めてもう長いはず。それなのにこれまでいっさい表舞台には出なかった……誰かと競うことも、目立つこともせず、花丘さんはいったい何を目的としてダンジョンへ?」
「そ、それは……清掃作業員として雇われていたので、清掃作業のために……」
「そう……なのでしょうね。花丘さんの言葉にウソは感じません。ですが、長い年月ダンジョンの清掃作業をやっていれば嫌でも気付くはずです、自分の才能に。それをこれまで活かそうとするわけでもなく、ずっと秘匿してきた理由は何なのですか?」
「え、えっと……長い年月?」
「ええ。やはり目立ちたくなかったから、なのでしょうか……?」
長い年月も何も……
私は今年入社したばかり。
中学校を卒業してまだ6カ月ほどなのだけど。
「その、信じてもらえないかもしれないんですけど……」
私はAKIHOさんに対して、これまでの経緯を全て話すことにした。
============
次のお話は明日の朝7時予定です。
よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます