第19話 AKIHO生配信その2
~AKIHOの視点~
それはあまりにも突飛な推測……
だけど、徹底して研ぎ澄まされた謎の美少女Aの動きの一貫性は、絶対に何かの芯がなくてはできないことだと思う。
……その芯になっているものこそ【清掃作業】なんじゃないだろうか?
「(普通に考えたらおかしい。おかしいけど……おかしいからこそ、こんな異常なタイムが叩き出せる……そんな考えに納得いっている自分がいる……!)」
>AKIHOの様子おかしいな
>AKIHOどうした?
>固まってるぞ?
>おーい
>大丈夫か?
「……あっ、うん。ごめんごめん。大丈夫だよっ!」
いけない、視聴者を心配させてしまった。
「あのね、
>マジっ!?
>マジかよ!
>どんなだったっ?
「謎の美少女Aの攻撃はボディーブローなんかじゃない……貫手だった。それでモンスターの胸を突き刺していたわ」
>うわっ・・・
>ヒェッ
>ヤベぇ・・・
>そんなことできんのかよ
>恐ろしい子・・・!
コメント欄が騒然とする。
……これは、握り潰していただろうということは伏せておいた方がいいかもしれない。さらに恐がられそうだもんね。
「とにかく、すごい速度と精度だった……1年や2年でできるものじゃないわ。ましてやあの身体強化魔法……これまでの私たちのメソッドとはきっと別ベクトルの強化法に違いない」
>それ凄すぎる発見では?
>ノーベル賞ものだろ
>ノーベル関係なくね?
>とにかくヤバい発明ではあるな
>ダンジョン関係者が殺到しそうだ
「そうね……色んな人がそのメソッドを知りたがるでしょうね。私を含めて、だけど」
その後も謎の美少女Aの快進撃は続いた。
そして25階層、30階層もなんなく突破。
(25階からに至っては敵の武器を腕ごともぎ取って使用していた。コメント欄は阿鼻叫喚だった)
──パーカー女子の記録は15分00秒、ジャスト。
観戦室のモニター左上には【本日最短記録:00:15:00:パーカー少女】という文字が新しく載せられた。
* * *
「できれば所感とかを話したいところだけど……ごめんっ! 私どうしても彼女と話したくて!」
私がスマホに向かって拝むようにして謝ると、
「今日の配信はここまでにするね。そしてもし謎の美少女Aとお話することができたら、ご本人とも相談の上でまた報告するからっ!」
その言葉に、
>OK
>了解!
>今日はありがとう!
>マジで助かった
>実況解説よかったぞー!
>お疲れ!
コメント欄からは温かな言葉が送られてくる。
もう一度謝り、そして感謝を伝えて配信画面を閉じる。
……急げっ!
そして走り出した。
ダンジョンの大部屋に向けて。
しかし、
「──あぁっ! やっぱり出遅れたっ!」
やはり予想通りというか、
ダンジョン入り口のその部屋の前にはたくさんの人だかりができていた。
あちこちで興奮したような人たちが口々に『謎の美少女Aが来てるらしい』『あの部屋がさっきまでAKIHOに配信されていたみたいだ』なんて話している。
……うぅ、もっと上手い方法がなかったものか。
自業自得とはいえ、悔やまれる。
これじゃあ謎の美少女Aと会うなり人にもみくちゃにされちゃうよ……
と、思いかけたが、しかし。
「(あれ? そういえば……)」
さっきから昨日の秋津のダンジョン管理施設、謎の美少女Aの上司であるはずの施設長の姿が見えない。
……というか、そうか!
なんで今さら気づくのだろう、私は!
「(ずっと隣にいたじゃないっ! あの施設長の隣に、パーカーを来た女の子が!)」
あの子こそが今日のパーカー女子、
つまるところ謎の美少女Aだったのだ!
……私、本当にバカ過ぎる!
ダンジョン以外のことだと本当に頭が回らないのだ。
もっと、もっとちゃんと考えることができていたなら……!
「(いや、後悔してる場合じゃないっ)」
こんなビッグチャンスを逃したら本当に後悔しか残らない。
考えろ……
あの施設長がここにいないってことは、つまり謎の美少女Aの側に居るんじゃないだろうか?
昨日の施設長の報道陣への対応的に、謎の美少女Aはあまり表舞台には出たくない理由があるのかもしれない。
とすれば、2人はきっとこの場を何とかやり過ごしたいはずだ。
「(この施設に従業員通路はいくつもある……そこを抜けて外に出ることもできるんじゃ?)」
だとすると、ここで待っていてもきっと謎の美少女Aには会えないだろう。
だとすると、後は車か、それとも電車か。
2人は今日、どっちでここまで来たのだろう?
それについては賭けだ。
ここは東京の有明。
電車となれば【ばらかもめ線】一択だろう。
「ルートが絞り切れないのは……車!」
なら、まずはそちらに賭けよう!
私は急いで駐車場へと向かった。
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次から視点がレンゲに戻ります。
18時ごろ更新です。
よろしくお願いいたします。
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