Qは止められない

@ishikawa0330

第1話

 私の推しは動画投稿サイトで、質問コーナーの動画を上げる。週に2回程アップされるその動画を見る時間が狂ってしまうほど好き。

 今日公開された動画のメインテーマは恋愛。推しが、視聴者から寄せられた恋愛に関する質問に対して、思うままに回答していく。質問は事前にSNSで「#マサにまさかの質問」とタグをつけて、投稿されたものから抜粋される。

 ここで私の推し、マサ君の紹介。1度見たら、忘れることはない綺麗な顔立ち。鼻が高く、横顔がシャープできっと良い匂いがする。ガラスのような透明感を持っているのに、私服はストリート系。パーカーをダボっとゆるく着ているのもポイントが高い。休みの日もアクティブで、ドライブが趣味。姉が2人いるからか、女心をよくわかっていて、女性ファンの心を掴んでいる。行きつけの美容院で、髪の毛にパーマを当ててから、マサ君は少しワイルドになった。

 動画の冒頭は「おつかれマサー!」から始まる。画面越しからも伝わるマサ君のパッと光る笑顔。最近、ホワイトニングを始めてから大きな口で笑うようになった気がする。

 私はマサ君の質問コーナーに質問を送り続けているが、動画で採用されたことはない。でも、マサ君は「みんなの質問、ちゃんと全部見てるからねー!」って言ってくれる。

 今回は、私の声が推しに届いてると良いな。


「続いては最後の質問だよー!」


 今回も私の質問に、マサ君は答えなかった。そして、珍しいことにマサ君は動画の尺を残り10分も残して、質問コーナーを終わらせた。イベントの告知でもあるのかな?


「みんな!毎回質問たくさん送ってくれて本当にありがとう!だけど、みんなに伝えたいことがあるんだ。」


 さっきまで、ニコニコしていたマサ君とは違い、真剣な眼差しに一変した。


「俺はパーマをかけたんだ。今、この動画を撮っているときは、まだかけてないんだけどね。ファンの皆んなにはまだ伝えてない。だけど、『パーマかけたんですね!似合ってます!』って質問があった。他にも、姉がいることはマネージャーしか知らないのに『おねぇさん2人もいると、女心なんてちょろいですよね!!さやかさんと、みほさんも動画に出てほしいな!』って、丁寧に名前まで。他にも数えたらキリがない。ファンのみんなには申し訳ないけど、これはストーカー行為だと思う。今後は少し法的措置を視野に入れるから、俺のプライベートには入ってこないでほしい。」


 動画が終わり、私はパソコンをシャットダウンした。真っ暗なパソコンの液晶には、満面の笑みのわたしが映っている。

「私の声、ちゃんと届いた!!」

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