第1話-④ 魔法少女は修学旅行へ行きました。

「いや〜、えっと……」


 なんと言葉を返していいのかが分からない。生まれたときから知っている幼馴染に対し、いきなり「私は、魔法少女です」と自己紹介をするのは変だし、数年言葉を交わしていないせいで、どう会話をすればいいのか言い淀んでしまう。

 それに、目の前にいる幼馴染のいさみ 陽輝はるきの今までに目にしたことのない姿を目にしたことへの驚きと、私のこの姿を見られたことへの焦りで頭が混乱していた。

 そんな混乱した状態の頭の中に、おばあちゃまの言葉が思い浮かんでくる。そういえば、おばあちゃまは「応援を頼んでいる」と言っていた。もしかしてその応援とやらは、目の前にいる幼馴染のことなのだろうか。

 私は意を決して、問いかけてみる。


「あの……、もしかしてなんだけど……。なんて言うのかしら。ん〜、敵を倒したり? そういうことをしているのかな〜? って」


「あぁ、そうだが」


「あ、そうなのね! そしたら、今日誰かと一緒に戦うよ〜って聞いてたみたいなことって、あるかしら?」


 意を決したというのに、まるでコミュニケーションをとることが苦手かのような喋り方をしてしまった。


「……聞いていたが。まさか、それが───」


『パルン、パルン』


「あ、ちょっとごめんなさいね」


 答えがわかったところで、出題者───おばあちゃまから連絡が入った。

 私は胸につけていたコンパクトを手に取り、開く。


「サぁプrrrぁ〜イズ!」


 コンパクトを開いたと同時に、おばあちゃまの声が広大な大地へと響き渡った。

 おばあちゃまの声量も、だいぶサプライズである。


「もう、おばあちゃま! サプライズじゃないですよ。何なんですか、この状況は?」


 私は呆れた顔をしつつ、おばあちゃまに尋ねる。


「ぐふふふっ〜。どうじゃ、驚いたじゃろ。サプライズは、大成功じゃな?」


 私の知りたいことには一切触れず、おばあちゃまはずっとニヤニヤしている。


「大成功って……。そりゃ、誰でも驚きますよ。こんな状況になったら。この状況が何なのか、ちゃんと説明して下さい!」


 もう一度尋ねると、おばあちゃまはニヤニヤを抑えることなく続ける。


「まあまあ、そう焦るでない。夜も更けているころじゃし、お前さんらは明日で帰ってくるのじゃろ? 明日2人が帰ってきてからゆっくりと説明するからの。それまでのお楽しみじゃ」


 おばあちゃまはそう言って、最後までニヤニヤしながら、手を振って連絡が切られた。

 なんなのよ、この焦らしスタイルは。

 私は連絡がきて背を向けたが、向こうも私に配慮してくれたのか少し背を向けていた。連絡が終わって振り返ると、おばあちゃまから言われたことを伝え、混乱が何一つとして解けることがない中、ホテルへと戻ることとなった。

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